盆栽園ツアー!

さて、つづきの話をしましょう。

(諸事情により、更新するのが2週間ぶりになってしまいました。すみません。ようやく仕事がひと段落したので、ブログ再開です。よろしくお付き合いください。)

 【盆友ができました】

 さいたま国際盆栽アカデミーの開校中、インストラクターの先生がいつも「盆友(ぼんゆう)をつくりましょう」とお声がけくださっていましたが、クラスメートは互いに見知らぬ者同士、単にアカデミーで週一度同じ講義を受講するというだけの関係です。授業中は講義内容や実習に専念しているので世間話をする余裕もなく、さらに、個人情報に過敏な昨今、いきなり連絡先を伺うのも憚られます。というわけで、「盆友作りたいなぁ」とずっと思っていましたが、なかなかきっかけは作れないものです。

 とはいえ、私は長期間自宅を離れることがあるため、盆友を作っておくことが自分にとってもこれからお世話する盆栽ちゃんにとっても必須でした(保育園を探す親のようです)。そこで、勇気を出してグループでたまたまお隣の席に座られた方にご相談したところ、留守中預かってくださるとのこと。救いの神の出現に感謝感激です!では、連絡先を交換してくださいという流れになり、たまたま近くにいたアカデミーの仲間も加わり、SNSで繋がりました。今どきのコミュニティですね。

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【愉快な盆栽園ツアー】

 たまたま、SNSグループの中に既に盆栽をいくつもお持ちで詳しい受講生の方もいらっしゃいました。彼女のお声がけで、最終日の講義終了後に「盆栽園ツアーをやりましょう!」ということになりました。午前中で講義が終了するため、ランチをとった後で盆栽美術館から徒歩で回れる盆栽町にある盆栽園をいくつか周ることにしました。

 当日、ランチ場所(盆栽美術館の目の前の盆栽レストラン)で、偶然同じクラスの受講生と遭遇!席もいっぱいだったので、相席させていただきました。そして、ランチをご一緒させていただきながら盆栽園ツアーに勧誘(笑)し、総勢7名でプラプラと散策することになりました。

 盆栽町ができた当初からの風習で、盆栽園の入口は誰でも入れるように解放しておく決まりになっているので、いつでもふらっと立ち寄れるのが魅力です。予約も入場料も要りません。なんてすてきな風習でしょう。

盆栽園は中が撮影禁止なので、写真は外観だけとなりますが、それぞれ個性があるので盆栽園ごとに違うのが面白いのです。

では、今回のツアーで回ったところをご紹介いたします。

 

【蔓青園(まんせいえん)】

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まずは盆栽美術館に一番近い蔓青園から。いきなり道端に巨大な盆栽が!「なんじゃこりゃ!」です。驚いていたらそこが蔓青園さんでした。入るなり所せましと大きくて見事な盆栽たちがお出迎え。右も左も足元も盆栽だらけ!ちょうど盆栽師見習いの方が水やりをされているところでした。

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突然、どこからか「傘は窄(つぼ)めてください!リュックは手前にかけてください!」と注意の声がありました。私たちは、暑い日差しの中の街歩きのため、日傘やリュックを背負っていたので、慌てて従いました。そりゃそうですよね。傘やリュックが当たって盆栽が倒れて落ちてしまったら大変です。ひとつひとつが年数をかけた芸術作品ですから。

野趣あふれる作品を堪能し、数の多さと見事な仕立てに圧倒され、「買えないけど、すごいですねー」とため息をもらしながら次へ向かいました。

 

【盆栽四季の家】f:id:katsuo_24:20170731115805j:plain

7月の暑い日差しの中、ほっとする休憩場所です。緑の中に古民家風の建物があり、誰でも自由に入れます。ここで各自ペットボトルや水筒で持参した水分補給。盆栽園ツアーにちょうどよい休憩所です。

 

【清香園(せいこうえん)】

ここは、若手女性盆栽家として著名な山田香織さんが5代目園主の盆栽園です。入口がまるで京都のお茶屋さんみたいです。このままCM撮影できそうです。

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先に学んだので、皆リュックは手前に抱き、傘はたたんで園内を鑑賞します。可愛らしい小品盆栽がたくさんあり、その種類も松柏盆栽や雑木盆栽、草ものなど、多くの盆栽が並んでいます。ちゃんと季節を考えて並べていらっしゃるのでしょう、満開の花や青々した葉が目を引きました。

ここで欲しかった盆栽用具を購入し、ちょっと満足度アップ。盆栽園の方から「盆栽アカデミーに通ったの?羨ましい!」と言われて私たちはくすぐったくも嬉しい気持ちになりました。

ちょうど室内で盆栽教室の最中だったのですが、こちらの教室も生徒さんがいっぱいでした。

  

【九霞園(きゅうかえん)】

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こちらはうっかりしていると通り過ぎてしまうくらいひっそりと周囲に溶け込んでいる盆栽園です。主張せず、あるがままに、という空気が園全体に漂っています。実際、九霞園という看板より個人の表札の方が目立ちます。本当に普通の民家のお庭に入り込んだようでこちらも「勝手に入っていいの?誰もいないの?」という感じで私たちも遠慮がちに静かに鑑賞させていただきました。

他の園では見なかった蓮や変わった実物盆栽がとても個性を出していました。商売っけ全くありません。きっと、芸術家肌の園主さんなんでしょうね。

 

【芙蓉園(ふようえん)】

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そろそろ、盆栽園も見慣れてきました。さて、次は竹の生垣が涼しげで自然にふらりと引き込まれる芙蓉園さんです。こちらはとても鑑賞しやすく整えられた盆栽園です。私はいきなり入口に並べてある盆栽鉢に食いつきました(笑)。園内はすっきりと盆栽棚にある程度大きめの盆栽がずらりと並べられています。ひとつひとつ丁寧に管理されているのが分かります。盆栽ばかり見すぎてもうどれがどうなのかお腹いっぱい気味でしたが、私はお手頃価格の盆栽鉢(800円)をこちらで購入し、大満足でした。

 

【藤樹園(とうじゅえん)】

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さて、本日の盆栽園ツアーのしめくくりは、こちら。アカデミーのインストラクターの先生方が時々こちらでも教えていらっしゃるという藤樹園。入口はこれまでの盆栽園に比べて飾っていないというかユルイ感じです。私たちもアカデミーでお世話になり馴染んでいたせいか、「あ、これあの先生の盆栽かも?」などと、気軽に話かけさせていただきました。

なんと長野や東北からわざわざ盆栽の手入れを学ぶためにこちらまで通う愛好家の方もいらっしゃり、頭が下がる思いでした。

  

【授業後の盆友たち】

さて、アカデミー最終日に盆友がクラスに声をかけてくださったので、興味ある方々が次々とSNSで繋がりました。SNSのグループで、自分が持ち帰った盆栽の写真をアップする方や管理方法を紹介する方、手入れの悩みの相談や朝顔の話題など、楽しく交流を続けています。また盆友たちと中級講座で会えるのがベストですが、こればかりは分かりません。現代の盆友はネット上で繋がれるので場所を選ばないのが気軽ですね。

 

※今回の盆栽園ツアーで回った盆栽園や大宮盆栽村のマップはさいたま市が紹介しているさいたま市/大宮盆栽村をご参照ください。

ああ、初級コースも最終日。

2017年7月8日 第8回目の授業                  初回はこちら

【講義】盆栽飾りの基礎知識

講師:日本盆栽協会インストラクター 原先生、風見先生、昼間先生

 

5月に始まった盆栽アカデミー初級コースも今日で最終日です。皆、口には出しませんが、とても名残惜しく感じています。それだけ毎回充実した講義と実技のカリキュラムだったということです。

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さて、今回は皆の席にこれまでの講義で各自が手入れをした盆栽が並べられており、グループワークのようです。原先生の解説に続き、昼間先生がご自身の作品を使って飾り方をデモしてくださいました。

【ARTの世界】

盆栽というと、その樹形ばかりに目が行きそうですが、「盆栽を飾る」というのは、鉢や苔、盆栽を乗せる台(=卓)、空間と、全体の調和をとりつつ、まさに盆栽をART(芸術)という世界に高める作業です。

まず、卓(しょく)と呼ばれる脚付きの文机のような台に主役となる盆栽を乗せます。

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この時、どんな卓でも良いわけではなく、どっしりとした大地から生えているような姿の盆栽か、崖から垂れ下がるように作ったものかという盆栽の樹形や繊細さなど、主役の盆栽に釣り合う卓を選びます。卓が盆栽より主張しないように気を付けます。

上の写真の奥にある、高卓(こうしょく)と呼ばれる高さがあるものは、高い山をイメージしています。これは、懸崖(けんがい)と呼ばれる、幹や枝が垂れ下がったものに合います。 f:id:katsuo_24:20170718101936j:plain

上の写真の根卓(ねじょく)と呼ばれる卓は、一見して独特な有機的な曲線でできていますが、これは、一本の木から透かし彫りで作ったものだそうです。これは素人がぱっと見ただけでもとても高そうです!

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地板(じいた)と呼ばれる平らで薄い艶のある板は、主役の盆栽に脇にちょこんと置かれる「添え」の盆栽を置くために用いられることが多いそうです。

飾るためのわき役にもこんなに種類があるんですねー。舞台ならさながら大道具さんでしょうか。

 【飾り方の手順】

まず、主役の盆栽(主木:しゅぼく)に合う卓を選び、盆栽の流れ(盆栽を正面から見たときの風を受けたような枝ぶりの方向)や席(せき)全体の幅や奥行を考えながら配置します。

席というのは、盆栽を飾るスペースのことで、この空間全体を「調和」を重視して飾っていくのです。(下の写真は、「空間」を見た目で分かりやすくするために、原先生が輪を用いて解説してくれているところ)

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次に「下草(したくさ)」を盆栽の脇に置きますが、これは主役の盆栽の流れを受けるように配置します。

面白いのは、盆栽も短歌と同様、季節感を出すために、その季節にあった下草を選ぶようにします。松には季節がないので、この下草や地板で季節感を出すのがポイントのようです。下の写真は下草の一例です。

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あくまで主木が目立つように飾るようにするため、主木の鉢の形や色も気を付けながら、わき役は主張を押さえた控えめな感じで選びます。草にも正面や左右があるようなので、それぞれ見極めて配置します。

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こちらは文人木(ぶんじんぎ)の飾り方。先の懸崖(けんがい)のものとは違った飾り方になります。

全体の調和をみながら、「空間の美しさを表現する」というのは、いかにも日本的な美に対する考え方ですね。

 【舞台に上がる前のお化粧】

さあ、主役の盆栽を舞台に上げる前に、お化粧を施します。まずは鉢の汚れを菜種油(なたねあぶら)を布につけて拭き取ります。菜種油は高価だそうで、身近で代用できるものとしてはベビーオイルで可能だとのこと。これならすぐ入手できますね。また、苔は、自然に盆栽鉢に生えるのかと思っていましたが、実はあとからお化粧のように張り付けるのだそうです。自然に見えるように苔をはるというのも、腕なのでしょうね。美人さんのお化粧のように、これまですっかり騙されていました。

【グループで集大成の席飾り】

グループに分かれて、それぞれ誰のどの盆栽を主木にするか決め、席飾りを皆で考えて発表するということになりました。

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限られた時間の中で、卓や地板、下草など自由に選び、2点飾り(主木と下草の2点)なのか3点飾りにするかなど、それぞれ話し合いながら決めていきます。

そうして、順に発表していきました。皆それぞれインストラクターの先生から寸評をいただきながら、他のグループの席飾りを「なるほどねぇ」と感心しながら楽しみました。

 【修了式】

毎回楽しみだった全8回の初級コースも今日で終了です。受講生一人ずつ、さいたま市大宮盆栽美術館の館長から、さいたま市長が発行した終了証が手渡しされました。公的講座ということを実感し、受講生一同背筋もピンとなりました。

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さて、初級のあとはやっぱり中級に進みたくなるのが自然な成り行きです。ほとんどの受講生が中級コースを希望しています。しかし、講師や会場のご都合もあるのでしょう、抽選で初級コースの半分の人数の20人しか枠がありません。希望者全員受講できるようにビデオやチャットのアプリを使ってサテライト講義やってほしいところですが、運営に負担がかかるようなわがままも言えません。くじ運が良いことを祈るばかりです。

 【さて、ブログの行方は?】

授業も無くなっちゃうしブログどうしようかなぁ、と思っていましたが、講師の勧めもあり、有難いことにこの講座を通じて盆友(ぼんゆう)ができました。せっかくなので、盆友たちとの交流や疑問、挑戦の話や、アカデミーから自宅に持ち帰った盆栽たちの成長も見守るため、素人の奮闘記を不定期で継続しようかと思います。引き続きお付き合いいただけますと幸いです。

 

【授業後のお庭】

初級コースの最終日なので、美術館のお庭全体の写真を選びました。ちょっとジオラマみたいにトイモードで撮ってみました。

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東京都内の中心部ではないものの、さいたま市大宮盆栽美術館には実に多くの海外からの観光客がいつも訪れています。受付の方も多国語対応サラッとこなされていてカッコいいです。

また、観光客だけでなく、盆栽園で何人も外国籍の方々が盆栽師の見習いとして働かれています。私たちよりずっと先輩です!本当に世界に広がるBONSAI文化ですね。

アカデミー卒業生(まだ初級ですが)として、気軽に盆栽を楽しむことを引き続き伝えていきたいと思います。

 

江戸時代に渡来植物?

2017年7月1日 第7回目の授業                   初回はこちら

【講義】江戸園芸文化史       

講師:園芸文化協会 理事 椎名和美 先生

 

夏です。暑いです。でも、そんな暑さにも負けず、受講生たちは盆栽アカデミーが楽しみで毎回通っています。今日は先週の盆栽の歴史の中でも、日本で様々な園芸文化が一気に花開いた江戸時代のお話しです。

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先生は、重鎮の椎名先生。もう立ち姿が粋な江戸っ子みたいです。(ご出身は存じておりませんので、勝手なイメージですみません)

テキストやスライドには貴重な資料がふんだんに盛り込まれているのですが、もったいつけているわけではなく、著作権の問題もあるので、ここでは掲載いたしません。

 

 【日本の園芸ってやっぱり特殊?】

世界と日本の園芸文化の中世から近代までの比較のお話しは、とても珍しく、初めて聞くお話しでした。大きく分けると、日本の園芸文化は中国の流れから、欧米の園芸文化はギリシャや地中海沿岸部など西アジアの流れからの2つに分けれられます。

そして、江戸時代は、奈良時代安土桃山時代に渡来した植物の数の約2.5倍の240種類の渡来植物があるそうです。すごいです!どこが鎖国だったんでしょう!

日本人は品種改良が得意だったようで、江戸時代の方々が改良を熱心にされたことが、現代の様々な日本の園芸文化に繋がってくるのです。

 

【江戸時代の賑わいが聞こえてきそう】

もともと、いけ花や盆栽は高貴な方々の間で人気があったようですが、徳川三代将軍の花や盆栽好き「花癖(かへき)」という嗜好が大名や旗本に伝播(でんぱ)し、当時の参勤交代という制度が相まって、植木屋も誕生、徐々に庭園都市を醸成したという、なんとも自然な流れがそこにはありました。

さらに、京で形成された文化サロンで、池坊専好(いけのぼうせんこう)が立ち上げた「立花の会(りっかのかい)」によって全国にいけ花が広まっていくことになりました。

 

【そして世界に日本の植物が】

また、シーボルトやフォーチュンなどが日本の植物をヨーロッパに持ち帰ったことも世界に日本の植物が広まったきっかけだったようです。

地域や年代、性別に関係なく、植物に興味があって園芸が好きな人は多かったんですね。

 

【どこまで品種改良。。】

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さて、教室に入った時から気になっていた、講師の脇に並んだ朝顔の苗。(盆栽についてはまだ知識は浅いけれども、さすがに朝顔の苗だってことは、分かります)

これは、江戸時代に盛んに品種改良が行われた流れで、現代でも残っている変わった品種だそうです。現代の変化あさがおには二系統あり、一つは生木系統、もう一つは出物系統だそうです。

先生は、講義中にクイズを出して、正解者にこの珍しいあさがおの種をプレゼントしてくれるという、皆がやる気になる粋なブレイクタイムを設けてくれましたが、結局全員にプレゼントしてくださいました。とても優しいダンディーな先生です。

この翌週末に入谷のあさがお市が開催されたので、行かれた方も多かったことでしょう。

 

【授業後の美術館】

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これぞ、ザ、真柏(しんぱく)!推定樹齢100年、文人木(ぶんじんぎ)という作り方です。

盆栽について全く無知のときは、花が咲く小さな盆栽や、庭木としても大好きなモミジが好きでしたが、色々見ているうちに、この真柏という種類の盆栽に強く惹かれるようになってきました。

いつかは真柏。。と、野望を燃やすのでありました。

 

 

浮世絵の盆栽探しは、いとをかし

 2017年6月24日 第6回目の授業                  初回はこちら

【講義】盆栽の歴史

講師:学芸員 田口 文哉 先生

 

今日は盆栽の歴史の講義です。実習の講義とがらり雰囲気は変わりますが、盆栽の歴史を研究者から教えていただくという講座は巷の盆栽教室では聞かないので、大変貴重な機会です。

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教室に入ると、前にはずらりと盆栽に関する図書が並べてありました。美術館所蔵の貴重な資料で、絶版となっているものも多いようです。研究者の方々にはたまらなく魅力的な本ばかりなのでしょう。さて、初心者の私も講義からそのエッセンスを少しでも吸収できるでしょうか。

 【イケメン先生、前振りなしで切り込みです!】

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「みなさんは『盆栽』を人にどのように説明しますか?」と、いきなり質問からスタート。当てられました(汗)。「では『鉢植』との違いは?」と次の受講生を指していきます。さすが講義慣れしていらっしゃる先生、私たちの答えをきちんと拾ってスムーズに話を続けてくださいます。ホッ。漢字の成り立ちを丁寧に教えていただきました。

詳しくは省略しますが、一つ一つに意味があります。漢字を分解して意味を統合すると、盆栽は「浅い皿に木を体裁よく切って整えてうえたもの」となり、鉢植は「深い皿にまっすぐに木をうえたもの」となるそうです。正に名は体を表すです。

 【盆栽のルーツは中国?!】

「では、盆栽のルーツを辿っていきましょう」と、多くの貴重な資料のスライドを使って、歴史を紐解き、流れるように説明してくださいます。

 本日のテキスト「盆栽の物語」(さいたま市大宮盆栽美術館発行、カラー32ページ、300円)は、図録をカラーでふんだんに載せてあり、コンパクトに古代から現代までのを解説してある薄くて読みやすい冊子で、初学者の入門図書として最適です。初回講義のときにいただいてすぐ読んであったので、少し予習できた感じです。興味ある分野だと予習も自然にするものです(苦笑)

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歴史を遡ると、一番古くは中国で1300年前の8世紀、壁画に上記写真(テキスト表紙)の絵が描かれており、これが盆栽のルーツなのではないかといわれているそうです。盆栽アカデミーの講座を受講するまで日本が盆栽の発祥地だと思っていたのでそれだけでも驚きでした。

また、中国での最古の文献は15~16世紀の中国で「盆景(ぼんけい)」という記述がみられるだけで、他の資料は残念ながら現存していないようです。

一方、日本では、14世紀(700年前)の鎌倉時代以降の絵巻物に盆栽の絵が登場しています。また、呼称としての紹介は、「Bonsan」としてポルトガルの宣教師が16世紀(500年前)の室町時代に日本語辞典で紹介したとのこと。「盆仮山(ぼんかざん)」→「盆山(ぼんさん)」「鉢木(はちのき)」→「盆栽(ぼんさい)」と呼称の変遷を歴史や絵画、文献資料で説明してくださいました。学芸員の先生は、古文書の漢字や、のたくったような文字をさらりと読んでしまうところがかっこいいです。真似したくても全く読めません。

 【浮世絵や能にも「盆栽」が登場】

今日の講義の私が一番好きだった部分は、浮世絵の中の盆栽探しです。これまで浮世絵は、ただ「いいなあ、洒落てるなあ」と鑑賞していたくらいでしたが、よく見ると盆栽があちこちに。さらに描かれた人物の目線や歌にも意味が。もっと色んな浮世絵で盆栽探しをしたくなりました。とても面白いです!

 【江戸から現代へ】

江戸時代末期に、現代のように床の間に盆栽が飾られるようになったようですが、西の文化「茶の湯」「いけばな」に影響を受けて江戸で「煎茶」「盆栽」が流行ったという流れも面白いです。煎茶会という京都や大阪で当時流行ったサロンも盆栽が普及するきっかけとなったようです。

明治時代は「文人木(ぶんじんぎ)」というひょろっとした形の盆栽が風流だとされました。それが時代と共に自然の樹形を好むように変わってきたとのこと。

奥が深い盆栽の歴史をタイムマシンに乗ったように教えていただき、実技で盆栽の手入れを学ぶだけでなく、盆栽の知識が急に厚みを増したように感じました。

講義の翌日に古本屋の前を通る機会があったので、つい盆栽に関係ありそうな古い本を探して、室町時代の絵に盆栽が描かれているのを発見し、一人でニヤリと喜んでおりました。

 

【授業後のお庭】 

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盆栽たちは夏仕様に日よけを作ってもらっています。遮光率は70%くらいだとか。メモメモ。自宅に盆栽を持ち帰って管理するために色々参考にさせていただきます。私の目指すところは「素人が簡単に世話をする」です。

 

鉢映りが良い。なんと美しい響き。

2017年6月17日 第5回目の授業                  初回はこちら

【講義】盆栽の管理・育成の基礎知識

講師:盆栽インストラクター  原先生、風見先生、昼間先生

 

初級講座も今日から後半スケジュールに入りました。盆栽アカデミーの受講生は皆さんとても熱心で全員が毎回ほぼ無欠席で参加されています。皆さん熱心ですねー。きちんとカリキュラムを組まれて、毎回新しい内容をどんどん教えてくださるアカデミーに感謝です。盆栽のような長い歴史のある職人技の世界では「技は見て盗むもの」という文化だったことでしょう。確かに、奥が深い世界なので、一朝一夕に習得するのは無理ですが、学びのきっかけになる場を与えていただけるというのは非常に有難いです。 

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本日も講師の先生が育てていらっしゃる貴重な素材をご用意くださっているので、実習を交えた講義で贅沢です。鉢の置き場所、水やりのタイミングと方法、土の配合や肥料の与え方、病害虫の予防と対処方法を駆け足で教えていただきました。

 前回までの講義で剪定を行った五葉松と植え替えを行った石榴(ざくろ)では、それぞれ剪定方法や肥料を与えるのに適した時期があります。こうした樹種(じゅしゅ)による剪定方法や植え替え時の根の扱い方、肥料の種類などは専門家に教えていただくのが一番の早道で、本の解説や写真ではなかなか分かりにくいのですが、きっと公的な盆栽相談イベントや民間の盆栽教室でも教えてくれる機会があると思います。

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【直置き禁止!水やりはこまめに】

置き場は屋外の日当たりと風通しの良いところに60cm程度の高さの棚を置くようにします(上の写真は、最低でもこの程度のものを揃えるようにと安上りに置き場を確保する方法を教えてくださいました)。地面には置かないように注意します。なぜだろうと思っていましたが、鉢底の穴から水がちゃんと抜けて目詰まりを起こしにくくし、風通しを良くすることが盆栽の健康には良いようです。

そして、肥料を置く場所は幹の根元近くではなく、根元からなるべく遠い鉢の縁側に4つほど置きます。(見た目は動物のフンみたいです)

水やりは毎日(夏場は朝晩)行うのが基本ですが、旅行等で水をあげられない日は、2~3日であれば、風呂場に置いて濡れたタオルで根元を土ごと覆ってあげれば大丈夫なようです。

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前回までに手入れを行った盆栽を、講座終了後は各自自宅で管理するので、ちゃんと聞いておかないと!

 【目利きができるか、盆栽鉢鑑定はいかに?】

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今日は教室にずらっと鉢が並んでいます。鉢の形状や色、釉薬(ゆうやく)の有無など様々です。

松柏盆栽は泥物(でいもの)鉢、雑木盆栽には釉薬鉢を合わせます。これは、それぞれの樹種を引き立たせるようにそれらの鉢が良いとされているからです。花や実がなる雑木盆栽は、その花や実の色を引き立たせるために花や実と同色は避けるようにします。

このように鉢を樹種によって選ぶことを「鉢合わせ(はちあわせ)」と言うそうです。いずれの盆栽も、木に対して小さくて薄いものを使うことがポイントです。そうすることで、木が相対的に大きく見えるのですね。

そして、盆栽同様古いものに価値があるようで、中でも江戸時代や明治時代といった古い時代に中国から渡ってきたものは大変な値打ちものだそうです。で、教室に並んでいる中で、一番高価な鉢があるとのことでしたが、いくらかは教えていただけませんでした。そこ気になります(笑)

また、樹と鉢の調和が良い様子を「鉢映り(はちうつり)」というそうです。響きがなんとも雅な感じですね。盆栽を鑑賞しながらこんな言葉がさらりと出るようになってみたいものです。

 【赤松の手入れ】

さて、実習は赤松です。「短葉法(たんようほう)」と呼ばれる剪定方法で、これは黒松や赤松で行われますが、6月にしかやらない作業だそうです。また、懸崖(けんがい)作りのものは、垂れ下がっている一番下、つまり根元から一番遠い部分から徐々に芽切りを行います。5日~7日ほど経ってから根本の方の芽切りを行うそうです。一度にダメージを与えないためでしょう。前年に肥料をたっぷりあげておくことも必要だとのこと。

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先日の講義で五葉松の剪定を行いましたが、大きな違いは、その芽の出方によります。赤松や黒松は軸が緑色の柔らかい新芽が長くニョキっと出るため、この部分を選定しないと大きくボサボサになってしまうのです。五葉松は新芽の長さが短いので、そこまでやらなくてよいとのこと。同じ松柏盆栽でも手入れ方法が違うのですね。

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写真が暗いのですが、Before(写真左)とAfter(写真右)は芽切りをしてボサボサ感が減ったのが分かりますでしょうか。

6月だけでなく、季節に応じた手入れ方法があるので、それもレジュメで図解してくださっています。受講生たちにとってレジュメは宝物です。

 

【授業後のお庭】

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この五葉松は直幹(ちょっかん)という造り方ですね。空に向かって真っすぐ堂々とした風貌です。立ち上がり(根から幹の部分)から上に行くにしたがって徐々に細くなっていきます。これをコケ順が良いといいます。言葉の由来は「頬がこける」から来ているとか。私の解説もだんだんそれっぽくなってきました(笑)

 

 

お手入れも実習で勉強?!

2017年6月10日 第4回目の授業                  初回はこちら

【講義】盆栽の技術解説

講師:盆栽インストラクター  原 先生、風見先生、藤樹園の方々

 

今日から最終回まで講義の日が続く、、と思っていたのですが、教室に入ったらまさかの各自席に盆栽が用意されておりました!受講生は皆、今回以降実習は無いと思っていたので、急に活気づいてしまうところが、なんとも正直です。先生方も講義を飽きないように進行を考えてくださっているので、毎回楽しみに通えます。

 まず、最初は原先生から先週のおさらい。この復習の時間がとても大切です。 

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復習のひとつ、松の鉢裏を見せてくださり、生きた情報を教えてくださいます。鉢裏の白い部分は共生菌といって、状態が良い松の盆栽にしか付かない菌だそうです。盆栽を購入するときのポイントになるので、姿形だけでなく、一歩踏み込んだ目利きの盆栽選びができそうです。

 【欅(けやき)の種から15年。。】

さて、今日は、欅(けやき)を素材として手入れの方法を学びます。伺ったら盆栽師の方々はそれぞれ得意な樹種(じゅしゅ)がだんだん決まってくるそうです。最初は色々手掛けているものの、徐々に自分に合うものが増えていき、苦手なものは扱わなくなってくるとのこと。自身の性格も樹種との相性もあるようです。面白いですね。

私の教材(本日の教材はお借りするだけです)は、講師の風見先生が種を採取して自ら15年も育ててきた欅です。これで樹高(じゅこう:木の全体の高さ)は約25cm。見事な姿です! f:id:katsuo_24:20170617181755j:plain

欅の盆栽の姿は、直立した「箒(ほうき)づくり」か「芯立て」の2種類しかないとのこと。箒づくりは、箒を逆さにしたような形の樹形に仕立てることです。欅の自然の姿はあたかもまっすぐ空に向かって枝葉を茂らせています。そして、欅は冬に葉が落ちた後、枝ぶりや幹を鑑賞する「寒樹(かんじゅ)」の代表なのです。落葉樹の冬はつまらないと思ったら大間違い。むしろ逆というのが新鮮です。

欅は埼玉県の県のシンボルとなる木なので、埼玉ではあちこちで見られます。東京都は銀杏(いちょう)ですね。銀杏の盆栽も紅葉が楽しめそうです。

【欅にはたっぷりの愛情を】

風見先生がスケッチブックに大きく分かりやすい図解と写真の資料で欅の種を採取してから発芽、植え替え、手入れまで解説してくださいます。

まず、11月頃に欅の木の下に落ちている種を採取してくるところから。欅の落ち葉に種が付いているなんて全く知りませんでした。その種を一晩水につけた後、種の上下の向きに気を付けて植えつけることが肝心だそうです。なぜなら、芽が出たときに曲がっていると、成長した時に幹も曲がってしまうので、最初からまっすぐに育てないと、綺麗な直立にならないようです。 

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そして発芽したら根を切り!(せっかく出た根を切っちゃうんですね。)切った部分に発根剤を塗って水に入れてその後植え替え、朝晩丁寧に霧吹き!(霧吹きとは、なんて繊細な扱いなのでしょう。またもやセレブ扱いです。)で水を欠かさず与える必要があるそうです。

箱入り娘のように、愛情たっぷりに育てるのが欅だそうです。とても素敵だけど、自分でここまでできる自信がありません。欅の盆栽を見かけたら、作者を尊敬することでしょう。初心者はある程度成長したものを購入する方が良さそうです。 

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葉が出て来たら適宜葉刈りを行い、樹形のバランスを見て枝に対して幹が長すぎたら「取り木」という作業で樹高を短くします。上の写真の左隅に写っている欅は、枝葉の部分に比べて幹が長いため、途中で幹の皮を薄く削り、その部分に水苔(みずごけ)を巻いてポットで覆い、水分を逃さないようにしたものです。3か月後くらいに根がでたところで切るそうです。

 【欅をだます】

さて、新芽が出て6月頃までに葉刈り(はがり)という作業を行います。盆栽の欅の葉を全部切り落としてしまうのです。なんてことでしょう!せっかく出た葉を。しかし、この作業により、欅は「冬が来た」と勘違いし、続けて温かい日を浴びることで「もう春が来ちゃったよ。早く芽をださなくちゃ」と新芽を頑張って出すので、1年に2歳年をとるのです。 

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なぜわざわざそうするのか?いい質問です(聞かれていませんが)。葉刈りすることにより、①強い枝を抑え弱い枝が強くなるので枝が平均化し、②日の光が樹の内側まで届き風通しも良くなり、③細かな枝も密になり、葉も小振りになって雑木らしい柔らかな小枝が期待でき、④葉も小さく薄くなるため、紅葉が美しくなるのです。つまり、小さくても大木に見えるようになり、盆栽らしい姿になるのです。(全部先生の講義です)

【葉刈りはまるで写経?】

いよいよお楽しみの実習です!今日の道具は鋏(はさみ)だけです。ひたすら葉を切り落とします。ちょきちょきちょきちょき、、、ひたすら無心に鋏を入れ続け、何百枚という葉っぱを切っていくのです。

最初はザワザワ話しながら皆作業していましたが、次第に教室が静かになっていきました。

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あたかも写経をしているかのような無心の集中力です。これは没頭できて、嫌なことをすべて忘れられる作業です。

今回は、時間切れで作業途中であえなく断念。葉が少なかったお隣の方に手伝っていただきましたが、それでもここまで。数えていませんが、200枚くらいの葉は切ったと思います。本当なら、全部葉を落とし、徒長枝(とちょうえだ)と呼ばれるピンピンと余計なところから生えて樹形を乱す枝を切り取って完了です。

受講生たちにご自身が精魂込めて15年も育てた欅の素材をお貸しくださり、手入れの実習をさせてくださった先生も、葉刈り作業で受講生が手伝ったことで手間が省けて喜んでいらっしゃいました。これぞWIN-WINです(笑) 

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(先生のお手本ビフォーアフター。左の欅は全部葉を切っていいのですが、可愛すぎて切れなかったと。愛情込めて育てていらっしゃる証拠ですね)

 

講義終了後は保管場所へ行って雑草取りと葉の病害虫の確認をしました。受講生の方の石榴の盆栽には蕾がついていらっしゃる方もいました!こういう発見が嬉しいですね。 

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【授業後のお庭】

 今日は講義終了後、以前の職場のお友達と土呂でランチをとった後で、盆栽美術館を再訪しました。自分と違う視点での鑑賞や好みもとても楽しく、新しい発見ができました。 

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 盆栽の洞の中から小さなシダが覗いていたのでそれも景色なのか面白くて撮りました。

 

盆栽っぽくなってきた

2017年6月4日 第3回目の授業

【実技】盆栽づくり(雑木盆栽)    

講師:盆栽インストラクター 原先生ほか藤樹園の先生方 

 

 前回に続き、今日も楽しい実技です。受講生も新たな教材に朝からウキウキの様子。クラスも3回目になると緊張感がほぐれ、近くの席の方たちと会話も出てきます。前回は剪定方法を主に学びましたが、今回は植え替えの実習です。

今回の素材は、雑木盆栽のうちの一つ、捩幹石榴(ねじかんざくろ)です。明治時代に名古屋付近で突然変異として発見された左巻きに成長する種類の石榴が話題になり、園芸家が広めたそうです。幹の曲がりが特徴的です。

インストラクターの原先生が限られた時間の中で、前回の復習から今日の講義のポイント、実演とテンポよく進行してくださいます。 

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【石榴(ザクロ)らしさ??】

盆栽づくりで非常に重要な「らしさ」。~松は松らしく、ケヤキケヤキらしく~です。といっても今回の石榴(ザクロ)って。。石榴らしさって??実は見たことあるけど、木の姿となると、実際に庭木でボサボサ生えてるくらいしかイメージわきません。。

盆栽でザクロの実がなるの?と思いましたが、実際に実をつけることもあるようです。見本の写真を見せてくださいましたが、プロでも相当難しいようです。

 さて、いよいよインストラクターの原先生の実演です。受講生たちは、自分がこの後やる作業のお手本なので、真剣なまなざしで先生の手先を見つめます。さすが先生!あざやかな手つきでみるみる盆栽らしく仕上がりました。

 植え替え時のポイントは、根は乾きやすいので、手早く行うことです。よって、予め正面を決め、完成後のイメージを作っておき、植え替える鉢の準備をしておくことが肝心です。

今回の準備に必要な素材と道具もちゃんと用意されています↓(これ全部準備してくださっているんです。これからは自分で用意しないとね)f:id:katsuo_24:20170612181202j:plain

【まずは伸びた枝葉のお手入れを】

 まず、ボサボサの捩幹石榴の正面を決めます。幹の根本が凹んでいて、幹の立ち上がりが見える方を正面に。細かな枝があちこちから生えていて分かりにくいので、枝を手で隠しながら見極めます。そして前回同様、ピンセットで雑草取り。

 次に、剪定です。下の方の枝で、余分な枝をハサミで切ります。前回の五葉松で実技をやったおかげで、皆さん少しは余分な枝がどれかを自分たちで判断できるようになっているようです。すごい進歩です!とはいえ、枝は切ってしまったら同じところからは生えないので、切る前に将来の木の姿を想像しながら不要かどうかよく考えます。迷ったら今は切らずに数年後に切ってもいいのです。

 

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枝を切ったところには、癒合剤(ゆごうざい)を塗り、雑菌が入るのを防ぎます。

 

枝を切り、おおまかな樹形を決めたら、次は上の方から新芽の剪定です。石榴の剪定は4月~梅雨時期までの間に行うのが良く、その後ピンピン芽が出て来たら、しばらく放置して9月ごろにまた剪定した方が良いとのこと。上の方から剪定するのは、切った芽や葉っぱが下に落ちるため、邪魔にならないようにするのです。大掃除の時に天井や壁の上の方から掃除するのと同じ理屈ですね。

ちなみに石榴の植え替えは3年に1度くらいの頻度が適しているそうです。(松は春先の植え替えが良いらしい)

 

【鉢も重要なアイテム】

 次は鉢の準備です。盆栽っぽい鉢は主に塗りがあるものと塗りがないものに大別されますが、雑木盆栽は塗りがあるものが似合い、松柏盆栽は塗りがないものが似合うといわれています。また、色も重要で、木や花の色を引き立たせるものを選びます。人間の洋服選びみたいなイメージでしょうか。洋服で印象が変わるように、鉢で印象が変わるように思います。

今回の鉢は角が丸い長方形の塗りの鉢です。長方形の鉢の場合には、中心に植えるのではなく、横幅全体の6:4くらいの場所に植え、空いた空間も大切な景色となるように配置します。(丸い鉢の場合は真ん中に植えます)

 

【針金登場!土は富士山型?】

 針金を曲げて鉢底の穴に防虫網(ネット)を盆栽鉢に固定する方法は、鉢が浅くてネットがずれやすい盆栽鉢特有の方法なのでしょう。私が通常買うような植木鉢のネットは底に敷いてあるだけです。

さらに、長い針金をU字型に曲げ、固定したネットの下側から上にニョキっと出します。これは後で盆栽を鉢に固定して、風雨で倒れて抜けないようにするためです。土を入れてからではできない作業なので、最初にやっておきます。

 

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用意された土は赤玉土。大きな粒(鉢底用)と小さな粒(植え付け用)の2種類があり、大きな粒は少量を鉢底が隠れる程度に敷きます。次に小さな粒をカップで鉢の中央に富士山型に盛ります。ここがポイント。なぜなら、植え替え前の根は、幹の直下に空間ができているからです(根が外に向かって生える習性があるため)。植えたときに隙間なく土が入るようにするため、予め鉢の中には富士山型に土を入れておくのだそうです。へー。

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【土の匂いで健康診断】

 さて、いよいよ元の鉢から抜き出して、根をほぐします。この時に根の裏側から土の匂いを嗅ぐのもミソ。良い状態の根は良い匂いがするとのこと。悪い状態の根はドブ臭いそうです。匂いを嗅ぐことができるのは植え替え時だけなので、インストラクターの先生は、「胃カメラみたいなもの」と仰っていました。なるほど、盆栽の健康状態を見るのですね。

そして、箸で根をほぐしながら古い土を落としていきますが、この時大切なのは細かな根だそうです。古い根ではなく、細かな新しい根が水分や養分を吸い上げるのでこれを切らないようにします。

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 【新たな鉢にお引越し】

先に準備した鉢の6:4くらいの位置に、予め決めておいた正面(鉢も正面を決めておきます)を意識して植えつけます。位置を決めて石榴を置いたら、鉢底からニョキっと出していた長いワイヤーをねじってペンチで締めていきます。この時、ねじったワイヤーの元の方をペンチで挟んだまま、ぐっと持ち上げるように引っ張ってワイヤーをねじります。ぐっと引っ張ってねじる。ぐっと引っ張ってねじる。そして、しっかり石榴が鉢に固定されたら、余分なワイヤーは切り、ワイヤーの端は鉢の外側に向けて土の中に見えないように押し込みます。(先生のデモ↓)

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根が乾かないようにどんどん作業を進めます。土を入れ、箸を根の奥まで差し込んでグリグリ動かし、新しい土が根の間に隙間なく入り込むように入れていきます。↓

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最後に、ピンセットの上についているヘラで土をならして出来上がり!

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先生のアドバイスにより、私の石榴はやや傾けて植えつけました。それにより、威張っていた根が隠れ、枝下に空間が生まれました。

先生、すごいです!!盆栽らしくなりました!(ほぼ先生のお力です)f:id:katsuo_24:20170612190050j:plain

【仕上げにたっぷりお水を】

 前回の五葉松くんの様子も見ながら、新たなお友達の石榴ちゃんを保管場所に移動し、たっぷりお水を与えます。この時に、最初は鉢底から泥水が流れますが、しばらくすると透き通った水が出てきます。泥水がたまっていると根が腐る原因になってしまうので、たっぷりお水をあげるようにします。これにて本日の講義終了です。

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隣に並べられている五葉松くんの鉢には、早くも雑草が生えていました。ピンセットで丁寧に抜きながら、また次回会うのを楽しみにします。皆、元気に育ってね~

  【授業後の美術館】

ちょうど6月に入ったばかりで、サツキ展の時期です。館内正面玄関では、紅白混ざった花が満開のサツキがゴージャスにお出迎えしてくれました。一つの株で様々な花の色が楽しめるってとても贅沢です。花の展示の時は華やかな賑わいを感じることができますね。

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展示室も見事なサツキの花を咲かせた盆栽たちが、その空間全体の調和を考えた飾り方も相まって、華やかで雅な姿で展示されていました。