中級、実技シリーズ <エピソード6 ~傷の掟~>

いきなりジン・シャリ作りのデモンストレーションいっちゃいます。

【ジンづくり】

ジンはあまり長く作らないようですが、最初から短くしなくてもよいので、まずは余分な枝葉を落としてからジンを作ります。▽

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ジンを作るときには、残しておきたい樹皮まで傷つけないよう、予め枝の周りにぐるりと切り込みを入れておきます。小学校の理科でやった、ビニル絶縁電線の絶縁部分を切り取る要領です。(って、そっちの方が分かりにくい?)▽ 切り込みを入れているところ

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その次に「やっとこ(盆栽用のペンチ)」や彫刻刀で樹皮を剥がしていきます。▽

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11月頃までは樹皮がツルっと剥けるようなので、ジン・シャリ作りもやりやすいとのこと。不思議なのは、枝先や幹の一部が枯れても樹全体は生きているということです。先人たちの知識と技術の受け継ぎです。▽ジン出来上がり

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【ジンを曲げるのは今でしょ】

ジンを作るということは、その部分は枯れてしまうということです。盆栽ではその枯れた部分も鑑賞するため、意図的に曲げることもします。この作業は枯れてからではできないので、樹皮を剥いだばかりでまだ枝が柔らかいうちに針金を掛けて曲げます。▽

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枯れ枝は簡単にポキッと折れるけれど、生木はなかなか折れないなーという経験を思いだしました。

【シャリの法則】

大雑把にジンは枝先、シャリは幹の枯れた部分という分け方ですが、幹のどこにシャリを作るのかというのは少しコツがあるようです。まず、枝を根元から切ったり、ジンを作ったりした部分の周りから将来樹皮が枯れていくので、それらの周りをシャリにするという考え方があるようです。そして、盆栽を正面から見たときに水吸いという樹皮が生きている部分が鑑賞できるように残しておくことも大切です。根元が枯れているのに上だけ生きているという姿は不自然に見えてしまうからです。▽見本のシャリは、枝を切り取った周りがシャリになるよう作られています。

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そして、削る部分の境目をチョークなどで印をつけて分かりやすくします。うーん、自宅でチョークって持っていないのですが、目印程度なので自分が分かれば良さそうです。f:id:katsuo_24:20181017174530j:plain

目印をつけたら、彫刻刀ややっとこを用いて樹皮を剥がします。このとき、彫刻刀でめくった部分をやっとこで持ち上げるように引っ張ると、繊維に沿ってゴボウの皮のように樹皮が自然に剥がれます。これが無理なく自然な形でシャリをつくる方法なので、少しずつ剥いて行くのが良いようです。

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原師匠によると、一度にシャリを作らなくても、毎年少しずつシャリを広げて行く作業を行うと、のっぺりしたシャリではなく皺のように筋が入ったシャリができるので古木感が出るようです。焦らずゆっくり作り上げるのも楽しみという大人なアドバイスですねー。さっさとやりたくなってしまう忍耐力がない素人がここにおりました。

【素材と向き合う】

素材と向き合うなんてちょっと高尚なアーティスト風ですが、いやはや実際悩みます。

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写真だと分かりづらいのですが、ワタクシがお世話することになったこの子、足元の立ち上がりが良いなあと思っていましたが、しっかりした枝が上の枝に乗り上げてガッチリ交差しちゃっています。インストラクターの先生に相談しながら、このやっかいな枝はジンにすることにしました。しっかりした枝だったのでもったいないと思ったのですが、全体構想としては不要な枝になってしまうのです。

【スケッチに芸術性は不要】

さて、作業に夢中ですっかり忘れていましたが、この時点で、以前宿題でスケッチしたものと全く違っています。そこが所詮素人です。▽当時のスケッチ 

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しかし、将来の姿を想像するという作業をスケッチすることで具体的にイメージする練習になるということが分かりました。講義中、スライドで盆栽師さんが構想を練ったときのスケッチを紹介してくださったものを拝見し、スケッチの意味をようやく理解したように思います。実践で学ぶということは、こういうことかと納得しました。

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次回からは模写ではなく、どこを活かしてどこを切るのかという描き方に気をつけようっと。そういう点で、スケッチというより構想図という方が私の中ではしっくりくるような気がしました。

【中途半端ですが】

実技の時間は、ジン・シャリ作りが初めての初心者には到底足りませんが、インストラクターの先生方のお力を借りてどうにかここまでできました。まず、下の枝が上の枝に乗っかって不自然にクロスしていた枝をジンにしてから力技で引き離し、針金を掛けて曲げました。枝がバキッと折れかかってしまいましたが、致し方ないようです。真柏ちゃんには山から大岩が落ちてきたと思って耐えてもらいたいところです。

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【ステップバイステップ】

盆栽の基本の手入れを学ぶのが初級コースだとすると、中級コースでは「新しい見どころを作る」というのが次の段階となるようです。私もこれまでは単に水やりと肥料、枯れた葉っぱと徒長枝の手入れくらいしか出来ていませんが、針金掛けやジン・シャリ作りをやりだすとちょっと盆栽やってるぜ!的な自己満足のレベルが上がります。皆さんはいかがでしょうか? 

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【おまけ】

少し前ですが、我が家のツリバナも実が綺麗に色づき、割れて風情が出たので玄関に飾ってみました。真柏のジン・シャリ作りはまだまだですが、飾って楽しむことは気軽にできますね。

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今では、もうすっかり実が開ききっています。ちょうど良いタイミングで飾っておいてよかったー。

中級、実技シリーズ <エピソード5 ~ジン・シャリ~>

今回はいよいよジン・シャリ作りです。たまたま写真撮影可スペースに「武甲(ぶこう)」という銘がついた私が好きな盆栽が展示してあったので、僭越ながら解説に使用させていただきます。こんな立派な盆栽にはとても手が出せないので見るだけ~f:id:katsuo_24:20181012182424j:plain

【ジン・シャリとは】

まずは言葉のおさらいから。ジンとは神とも書かれる盆栽の枝先の枯れて白骨化した部分、シャリは舎利と書かれ幹が枯れて白骨化した部分を指します。盆栽に神や仏を連想させるなんざ、先人たちは洒落たことを考えますね。

ジン・シャリは主に松柏(しょうはく)盆栽に見られ、中でも真柏(しんぱく)という樹種(じゅしゅ)で枯れた部分の白さと生きている部分の幹(水吸いと呼ばれる)の茶色、葉の緑といった色の対比が美しく表現されています。 

盆栽は自然の風景を盆器の上で表現しようと試みるものです。自然界では風雪で折れたり枯れて白骨化したりしますが、盆栽では人為的にそれらを作ります。その作業は痛そうに見えますが、樹全体が枯れないように注意しながら作業します。

 【準備オッケー】

前置きが長くなりましたが、アカデミーの講義に移りましょう。本日の教室には数か月前に各人の素材を大まかに手入れしたもの、将来の姿を想像してスケッチしたものも用意されています。しばらく見ていなかったので忘れていましたが、そうそう確かにこの子です。

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テーブルにはいつも上記のようなセットをご用意いただいております。自宅で手入れするときにも少しずつ道具が増えているので道具箱が欲しくなってきました。大工さんみたいな工具箱欲しいな。

さて、本日も原師匠の講義から入ります。

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【なぜジン・シャリを作るのか?】

もみじや花梨、欅といった雑木(ぞうき)盆栽では(幹の)肌の美しさを見せたいのでキズが無い方が美しいとされます。一部例外は梅やズミ、寒グミくらいだそうです。一方、真柏や松などの松柏(しょうはく)盆栽は幹肌が荒れて古木に見えることにより風格が出るので良いとされます。

特に真柏の「水吸い」と呼ばれる樹皮の茶色い部分(生きている部分)とジン・シャリの白骨化した部分(枯れている部分)、葉の緑色の色のコントラストが美しく出ている盆栽はもうアートそのものです。世の中でお高い盆栽さんたちは、皆これらが見事に表現されています。下世話な話ですが、何年もかけて1点ずつ作成するアートなので、価値も高くなるのもうなずけます。

【お手本には程遠く】

自分の素材を目の前にしてどうしたものかと悩んでいると、インストラクターの先生が見本をテーブルに持ってきてくださいました。

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幹の太さからすると、私たちの素材もここまでとは言わなくてもかなり小さくしても大丈夫なようです。そもそも、仕上がりをどのくらいの大きさにしたいのかも自分たちで考えるのです。難しいよぉ~!とヘタレそうになりますが、まあまあ、20㎝程度までの大きさくらいが私にはちょうどいいかな。

【おおまかな手順】

高級盆栽に少しでも近づくために我々も頑張ってみましょー!ということで、お手本のデモンストレーションです。先に全体のおおまかな手順を記すと、以下のとおり。

①正面を確認する

②余計な枝葉を落とす

③ジンにする枝を決め、樹皮を剥ぐ

④ジンから繋がるようにシャリを入れる場所を決める

⑤シャリにする部分の樹皮を剥ぐ

この作業を一つずつ原師匠が解説しながら実演してくださいます。

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皆熱心にメモを取りながら原師匠のデモに見入ります。私は写真を撮りながらなので注意散漫ですが、学生時代より熱心なのは間違いありません。

さて、このまま続けるとちょっとボリュームが多くなりそうなので、今日はここまで。

to be continued !

中級、実技シリーズ <エピソード4 ~三手先を読む~>

久しぶりの盆栽アカデミー中級コースの実技です。ワタクシ、この日はカメラの設定で、うっかり「曇天」モードにしてしまっており、写真のホワイトバランスというものが崩れておりました。。御見苦しくて申し訳ございませんが、内容物には異常がございませんので、このまま読み進めていただけますと幸いです。

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今回は、初級コースで剪定、植え替えを行った皆にとって初めての盆栽ともいえる五葉松君が素材です。各自1年間自分で水やりして管理したものを持ち寄って、それに針金掛けを行うという実習なので、1年間のお世話の成果次第では教材が無いという事態にもなりかねないため、皆ドキドキしながらこの日を迎えたことでしょう。

インストラクターの先生方から「いやぁ~、どうかなと思っていましたが、皆さんの五葉松がどれも想定以上に元気で素晴らしいです」とお褒めの言葉をいただき、教室全体がホッとした空気に包まれました。今年は台風や強風が多く、そうした時には盆栽棚から一時的に地面に下ろしたり、盆栽棚に紐で固定するなど、風で倒れないようにする対策が必要です。きっと波平さんも台風の時には気をつけたことでしょう。

 【前回のおさらい】

針金掛けは、「躾(しつけ)」と考えて行います。初心者の私は昨年までは痛々しいと思っていましたが、躾によって、見栄えが変わることが理解できると、鑑賞用として樹が痛まない程度で姿を整えるのは、アリだと思うようになりました。ボサボサのままでは身だしなみを整えずにパジャマで出勤するようなものという感じでしょうか。

針金も、強すぎず、曲げが効く強さで45度の角度で巻いていき、ピッチ(巻いたときの針金と針金の感覚)を等間隔にします。原師匠がレジュメで様々なタイプの枝への針金かけを説明してくださいました。針金の太さや針金をかける順番、二又に掛けるときの針金の渡し方、全体の形の整え方など、順序や将来の姿を考えながら行うのです。

【針金の種類】

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針金には銅線とアルミ線があります。盆栽用の銅線は火入れをしてあるのですが、これはなかなかホームセンターでは見かけません。盆栽園かネット通販なら買えます。さらに、銅線は硬いので、扱うのが難しいのです。一方、アルミ線は入手もしやすく柔らかいので扱いやすいです。これは一長一短で、硬い=曲げが効く、柔らかい=効きにくい、ということになるのですが、紅葉や花物などの雑木は樹皮が薄く柔らかいので、傷まないためにはアルミ線の方が向いていそうです。

今回は皆初心者なので、扱いやすいアルミ線をご用意いただいております。太さも1.5㎜から4㎜まで各種取り揃えてくださっています。いつもながらの痒い所に手が届く盆美の気配り、感謝でございます。

【師匠のお手本】

レジュメでの解説の後、原師匠のデモンストレーションです。太い幹に3㎜のアルミ線を掛けていきます。しっかりと一方の手で幹と針金を押さえながらもう一方の手で巻いていきますが、このとき、既に幹や枝についてしまっている針金の跡は、これ以上深くならないよう、古傷を避けて針金をかけるようにします。

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【プロの技!】

原師匠が太い幹に3㎜という太い針金を巻いても、アルミ線だとなかなか思うように枝が下がってくれません。ここで、プロの技が出ました!すでに巻いた針金に細い針金を通そうとしても、幹との隙間に細い針金が入らないとみるや、鉢底用のネットを幹に巻き付け(←針金が幹に食い込まないよう養生するため)、鉢全体に針金を掛けて一の枝をグッと下ろすという技です。

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上の写真と見比べると、下の写真では枝がぐっと下がったことが分かります。松はこんなに曲げても折れないんですねー。折れやすいワタシの心と大違いです。

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これは素人にはなかなか思いつかない技ですが、さすが原師匠!いつか私もこんな風にパパっと思い浮かぶのだろうか。。まあ、諦めなければ私たちもいつかきっとね。

【実践で分かる先読み力】

さあ、原師匠の技に感心しているだけではいけません。我々も各自の五葉松君に「躾」を行うのじゃー!と皆それぞれ真剣に五葉松に向かいます。ボーっと眺めているのと、いざ針金を掛けるのとでは雲泥の差です。なぜか?それは、最初の針金は掛けられても、2本目、3本目、この枝とあの枝、、と考えながら針金を掛けることになるため、二手、三手、先を読んで針金を掛けていかねばならぬのです。マジか!針金掛けでこんなに頭を使うとは!まるで詰将棋です。まさかの集中力が必要な作業で頭に汗をかきます。

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皆様、真剣にぐるぐるです。インストラクターの先生方が各テーブルに1人ずつついて指導してくださるので、迷ったり分からなかったらすぐに聞けるのが有難いですね。実際に手を動かしてみると、「あれ?この枝はどっちに持って行った方がいいのかな?」「この枝とこの枝に針金掛けたいけど、巻きはじめはどこから?」といった細かな疑問が次々出てきます。一人自宅で黙々とやっていたらなかなか分からないことも、インストラクターの先生方が傍にいてくれると安心です。

【ぐるぐる後】

集中して針金をかけていると、あっという間に時間が過ぎます。全ての枝に針金をかけることはできませんでしたが、本日はここまで。かなりぐるぐるです。針金が見えないようにかけるのが良いとされていますが、アップで見るとバレバレです。

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とりあえず、ビフォーアフターを写真に収めて本日の作業を確認します。

▽なかなか、躾した感が出来てきたじゃありませんか。(インストラクターの先生方にいちいち聞きながらでしたが)えへへ。

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植え付け角度を変えた方が良いと指摘されました。なるほど、、After(右の写真)の方が、流れがはっきりして足元の出っ張りが気になりません。うーむ、今春植え替えたばかりだから、3年後まではこのままで致し方ないか。。

【自分の身だしなみ用に強い味方】

松の作業の時には、松脂(まつやに)が出ちゃうものです。手に着くとしぶとく、なかなか取れないのですが、さすが盆栽アカデミーさん、アフターフォローもお見事です。松脂が着いた手に直接シュッシュとスプレーして手をこすり、その後水洗いすれば、あーら不思議、あんなに頑固な松脂が見事に落ちるではありませんか!

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つい自宅にも欲しくて写真で記録です。香りも良くてこれは一家に1本ですな。(残念ながら本日現在、ワタクシ御用達の密林では販売していないようです)

 

【おまけ】

写真を失敗して落ち込んでいましたが、屋外では曇天モードでもまともに写っていました。さて、こちらは冬の姿が素敵な花梨ちゃん。鉢映りもいいですねー。こんなに薄い鉢にこれだけの大木。見事としか言いようがございません。猛暑で水やりも大変だったことでしょう。

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既に大きな実がいくつかなっています。先の季節の姿を想像する楽しみがあるのが盆栽の魅力ですね。

 

失意の夏を乗り越えて

まだまだ暑い日が続きますが、空の色や虫の声で秋の訪れが実感できる日々です。しかし、今年の夏の暑さで、我が家の盆栽ちゃんたちのいくつかがダメージ受けました。台風の暴風時には、棚から下ろして倒れないように気をつけましたが、日焼けや異常な高温は盆栽ちゃんたちも参ったようです。

【雑草も枯れる】

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△この子は通称「赤まんま」という雑草がワシャワシャ生えていたのですが、雑草も枯れてしまいました。

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△強いと思っていた笹でさえも、鉢が小さいとなかなか水やりの調整が難しく、残念な姿に。乾きすぎた反動で水をあげすぎたかな?

 【可愛い子もお亡くなりに】

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こちらは、目一杯可愛がっていた(つもり)の紅葉ですが、小さな体なのに無理に葉刈りしたうえ、直射日光が当たってしまって痛々しい姿に。ごめんなさい。。脇に雑草が生えている時点で、目一杯可愛がっていたということがウソだとばれてしまいますね。

 【日差しダメージ】

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頑張って針金かけて春に葉刈りして小さな葉を出そうと思った紅葉の盆栽ちゃんも、日差しが強すぎたのか、多少の日よけではダメで、新芽が暑さに負けてチリチリになっちゃいました。。水やりだけ気をつけてもダメなんですねー。まあ、まだ樹は生きているので、来年リベンジすることにしましょう。

【自分流で無理なくいこう】

とまあ、こんな感じでいくつか枯れてしまいました。1年少しと少ない経験ですが、自分にはつくづくミニ盆栽や豆盆栽という女子が好きそうな可愛らしい盆栽は向かないということが分かりました。というのも、小さな盆栽はすぐ水が乾いてしまうので、私のようなズボラな者には1日何度も水やりをするという気配りはできないのです。しかし、逞しく生き残ってくれている盆栽ちゃんたちも多くいます。前向きに生きるぞー!

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△辛うじて生き残った子

最近は、自己流で小さな鉢のものは、まとめて100均で買ったトレーに入れて水を絶やさないようにしたのですが、これもなかなかうまく行っていない気がします。要改善です。今回、盆栽世界で炎暑をしのぐ水やりメソッドの記事を読んだので、来年は参考にしてみたいと思います。

 

 【おまけ】

カラカラの写真ばかりアップしたので、盆美ロビーで飾られていた美しい吊花の写真でお口直しを。

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我が家にも吊花の盆栽ありますが、まだまだ実の色が緑色で割れていません。夏の台風の暴風でも実が落ちなかったのが幸いです。秋の実物は期待できそうです♪

 

 

水石遊びでほぐす石頭(後編)

さて、水石の歴史を学んだあとは、実物を使ってデモンストレーションいただくお楽しみの鑑賞です。なかなかライブでは見ることがない、水石の展示方法や鑑賞方法をご紹介いただきました。

 【精神統一の作業】

教室前方でアシスタントの方が、水石を飾る鉢を用意しています。水盤一面に張った砂を刷毛で丁寧にならしています。水石の展示は見たことがありましたが、事前の作業を間近で見るのは初めてです。刷毛でならすのかー。ほうほう。

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滑らかな手つきで左右に刷毛でならすというのも、意外に難しそうです。なんとなく、書を書く前の墨を磨る(する)ような、精神統一の作業を見ているようです。

▽ささ、こちらが、水石を配置した水盤でございます。どうでしょう。雲海に浮かび、朝日に赤く照らされた山のように見えてきます。この背景に朝日の掛け軸を掛けてくださいました。

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▽そして、背景の掛け軸を変えると、あら不思議、雨に洗われた紅葉の山々がそこに現れます。(奥)

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 【鑑賞方法は遊びのこころ】

石の向きや角度を変えることによって、見える風景も違ってきます。森前氏でも悩むそうです。何が見えるかを楽しむことが水石なのでしょうから、「こうでなければいけない」と堅苦しく決まっていないところがいいですね。

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△卓(しょく)の高低差を利用してジオラマのような風景を演出することもできます。 山の麓にぽつんと佇む古い庵の風景が感じられます。 

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△単に石だけを鑑賞するだけでなく、小さな庵の置物を石の上に置くだけで、その石が山となったり海辺の岸壁になったり、と、様々な景色が浮かんできます。盆栽同様、デジタル時代の今日になんとも優雅な遊び方ですね。

【水石の発見方法】

水石は、盆栽と違って成長しないので、新しい水石はどのように入手するのかと不思議になりますよね?それは、ズバリ「河原で拾う」という、子どもの遊びのような見つけ方だそうです。水石協会が国交省に問い合わせをしたところ、日本の河川で、景観を損ねない程度(リュックに入れて手で持ち帰れる1,2個くらい)であれば、河原で石を採取しても良いらしいです。営利目的としない趣味の範囲内でねってことでしょう。

水石の展示で気になっていたことがもう一つ、「花崗岩(かこうがん)」とか「石灰岩(せっかいがん)」という鉱物の種類で呼ぶのではなく、「賀茂川石(かもがわいし)」「鞍馬石(くらまいし)」という、良く聞く河川や地名の名前で表示されているということ。水石は河原の石ころなので、採取地で表すそうです。そうした呼び方の方が由来も分かるし、展示した時も風流ですね。

【石が変化する?】

生きた芸術の盆栽と違い、石って変わらないものだと思っていませんか?ですよねー。普通。しかし、石も長いながーい年月をかけて徐々に風化され、変化するようです。驚いたのは、水石は押入れにしまっておいて、飾るときだけ「よいしょ」って出すものだと思っていたら、なんと、水石も盆栽棚のような屋外の雨水が当たる場所で割りばしなどの上に置いて管理するとのこと。「養石(ようせき)」といいます。自然の風雨に晒して、何年もかけて味わいを醸し出すのだそうです。水道水はカルキが入っているので、雨水がいいようです。うひゃー、忍耐力ないので私は待てませんが2~3年でも変化するのですと。録画して100万倍速の動画見たくなります。

【世界では?】

世界で盆栽がBONSAIとして人気があるように、水石も世界で認知されているようです。Viewing Stoneといわれ、欧米では日本の水石文化の模倣が主流のようですが、中国をはじめとしたアジア圏では、日本よりも古くから珍石や奇石が鑑賞されており、石から生まれた孫悟空のように、石自体にパワーがあるような石が好まれているようです。所変われば感受性の文化も変わるものですね。

 

  【おまけ】

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いました。ここに、もの好きが。10年以上前に、海辺で見かけて面白い形だったので持ち帰った石ころです。我が家にあったことを思い出し、夏っぽく飾ってみました。

 

 

変化する水石、瞑想の旅(前編)

盆栽アカデミーの中級コースでは、盆栽だけでなく「水石(すいせき)」と呼ばれる石の鑑賞についても講義があります。箱に銘まで入って、骨董品のような雰囲気満点! 

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とはいえ、石でしょ?盆栽ですらまともに出来ていないのに、まだまだそこまで行けないなー。という、ちょっとした抵抗感のようなものがありますが、今回の講義は、新たな世界を垣間見られそうです。

【美術品?それともただの?】

水石って、やっぱりお高いんでしょう??と、小市民は思いますよね。(←なぜか同意を求める)お値段は私には不明です。まあ、需要と供給のバランスと言ってしまえばそれまでのことでしょうが、盆栽と同じで、銘がついた有名な水石もあります。一番古いものは、徳川美術館所蔵の「夢の浮橋」という盆石(ぼんせき:水石と呼ばれる以前の呼び名)で、後醍醐天皇の所蔵だったようです。有名な盆石は銘でググってもすぐ出てきますね。

以前から気になっていた水石の下の板は、石の底にチョークをつけて、何度も何度も当たる部分を削って精緻に凹凸を石の形に合わせて一つずつ特注品として作るそうです。▽見本の水石

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石の底を平らに削ってしまうと、水盤に飾った時に沈んでしまい、氷山のように下に続いている感じが損なわれてしまうので、あえて石は凸凹を残し、台座の方を削って合わせるとのこと。特注の台座をあつらえてもらえる石も幸せ者です。ただの石と水石って何が違うんでしょうか。

 【水石とは山水情景石】

京都の竜安寺石庭は、日本人だけでなく、世界で有名な禅のシンボリックな石ですが、庭に石を配置して山や川などの風景を感じさせるものだけでなく、盆栽のように床の間に飾って鑑賞する「水石」は、心象の世界を楽しむ文化だそうです。

つまり、木々などの植物や滝や川などの自然は移ろいやすい風景ですが、同じ自然を構成するものの中でも、石という時間の変化がほとんどないものは、「不変のもの」として信仰の対象だったようです。こう語るのは、日本水石協会の事務局長、森前誠二氏。

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水石の魅力を歴史から鑑賞方法までたっぷり講義してくださいました。

【日本にもあったストーンサークル

イギリスのストーンサークルは有名ですが、日本にも縄文時代にあったそうです。スライドで森前氏が紹介してくれました。驚きです!石を円形に並べるって、古代からパワースポット的な場所だったのでしょう。

【歴史と共に日本独自の美意識へ】

飛鳥・白鳳時代を経て、乱を逃れてきた百済人により、仏教と共に文化が日本に本格的に普及しました。その後、奈良時代には唐の宮廷文化の模倣がされ、そこから日本独自の自然信仰の思想で、平安時代にあの世を表した浄土式庭園が広まったとのことです。と、あっさり書いていますが、ものすごい時代の流れがあったことでしょう。はたして「あの世は豪華絢爛」という唐の文化から、「広々として静か」という日本人の美意識?がどのように育まれたのか、、歴史好きにはたまらない想像力をかきたてるドラマがいくつもありそうです。

【現代の水石へ】

その後、東山文化から室町・安土桃山時代で「侘び」「寂び」という美意識が形成され、茶道具のひとつとして盆石(水石と呼ばれる前)が小堀遠州らによって広められたとのこと。江戸時代には煎茶道と共に、明治から昭和にかけては、盆栽の広がりと共に水石も広がってきたようです。へぇー、盆栽と水石って、歴史上似たような変遷をたどっているのですね。だから対と言われているのでしょうね。

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△庵のような形をした水石、丸みを帯びているためか、無機質な石でもなぜかほっこりとした温かみを感じるのが不思議です。

森前氏のお話は、たっぷりの知識はもちろんのこと、楽しそうにお話しされる姿から水石愛が伝わってくるので聞いている方もついつい引き込まれます。やっぱり水石もいいなぁ~と、いつの間にか水石ワールドに入っているのです。

                       

                         (お楽しみの鑑賞は後編で!)

 

 

夏休み、子ども企画が大人にウケる訳

この暑さで人間も動物も盆栽も、日本列島皆参っています。推定樹齢1,000年と言われている「轟(とどろき)」という銘の盆栽も、さすがに生まれてこのかた、今年のような酷暑はご経験ないのではないでしょうか?▽盆栽の正面ではなく、裏側から撮影していますが、シルエットでもステキな姿です。

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【室内でひんやり、生き返る】

そんな中、大宮盆栽美術館の企画展示室では、「子ども盆栽美術館」として、子どもたちに分かりやすくパネル展示が行われています。盆栽美術館も、エアコンを効かせた室内展示で、熱中症を気にせず訪れられるよう、気を配って企画していますねー。 

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さてさて、この企画、盆栽アカデミーの受講生たちの間でなかなかの人気なのです。撮影可能だったので、一部をご紹介。

 【基本を思い出せ!】

盆栽を学びだしてまだ1年少ししか経っていないくせに、色々知ったかぶりしてきている自分を見返すとても良い機会なのです。まず、「盆栽ってなに?」からですよ。もう、某N局のチコちゃんに「ボーっと生きてんじゃねえよ!」って叱られそうです。 

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なぜ大人にウケているのかって、パネルです。パネル展示というのは、「いかに文字量を少なく、ポイントを押さえて飽きさせずに見せるか」というとてもプロフェッショナルな技術を要するものなのですが、そのまとめ方がお見事!

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 パッと見ただけで要点が分かるため、盆栽アカデミーの復習まとめみたいな位置づけとなり、ハッと思い起こされることとなりました。

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このカレンダーなんか、自宅のトイレとかに張りたくなります。今日は何の日?的にね。

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この学習ノート、パネル展示ちゃんと見ないと盆栽の手入れの達人でもできないでしょう。よくできてる! 

【大人でも難しい!】

こちら、大きなマグネットになっており、春・夏・秋・冬のそれぞれの盆栽を写真で見分けて貼って遊ぶパネルです。 

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これがなかなかの曲者でしてねぇ。。相当意地悪な学芸員さんの仕込みではないかと私は勝手に推測しています。ニヤリ。だって、松柏盆栽なんて常緑樹で年中葉っぱが緑色なんだから、写真で季節を当てろってそんなん、無理やー!しかも、出猩々(でしょうじょう)という、春の葉っぱが紅い紅葉の種類のパネルが紛れているとか、、もう、意地悪すぎやー!というツッコミしながら遊ぶのも、大人もついハマってしまう感じです。ちなみに、この写真は裏側の解説で答えをちゃんと見てから貼っています。大人の計算高さが表れたショットでございます。

【絵本コーナー】

展示室の一角に絵本の本棚が設置してあります。畳も敷いてあるので、裸足でくつろげるスペースとなっているのが親子への優しさを感じます。

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特に盆栽の絵本が、可愛らしいイラストで盆栽の手入れ方法が描かれているのですが、大人が見てもとても参考になる絵本で、友人もすぐにネットで注文していました。何度見てもほっこりしながら学べる絵本って、子どもと一緒に見ながら盆栽育てるプライスレスな時間を過ごせそうです。

  

【おまけ:実りの準備】

こちら、盆美玄関入ったところの展示の盆栽さんのアップです。何かの実がなっていますが、

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何だろう?と思いながらパネルを見て、思わず「へぇー」が出ました。どんぐりの赤ちゃんです。帽子の部分だけだと、どんぐりってすぐ分かりませんでした。

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視覚で涼を感じる粋な演出の展示です。