ごめんください~。盆栽園実習。<前編>

中級コースも残すところあと2回となりました。今回は、大宮の盆栽園6か所に中級コース受講生が分散してお邪魔することになっています。我々は、いくら中級コースの受講生とはいえ、盆栽園のお仕事を本当に手伝えるほどの技量があるわけもなく、ご迷惑をおかけしないようにすることだけで精一杯です。

(※注:実際にお邪魔したのは3月です。季節感ゼロで申し訳ございませんm(_ _)m)

【九霞園さん、お世話になります!】

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ワタクシが割り振られたのは、九霞園(きゅうかえん)という盆栽園です。ふふふ。お邪魔しまーす!と心は弾んでおります。

盆栽アカデミーさん、なんと事前に受講生分の道具を各園に用意してくださっていました。子供のお道具を準備するお母さんみたいな心遣いに泣けてきます。

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これらに加え、九霞園さんでは、手袋や根切り鋏なども人数分ご用意くださっていました。かたじけない。。こうした道具は真似するべし!と、早速帰りにホームセンターで買い求めました。

【園主による講和という導入】

この実習では、実際に販売する商品となる盆栽の手入れをさせていただくという、なんとも緊張するものですが、園主の村田さんの飾らないお人柄がにじみ出た自然な流れで始まりました。

盆栽に向き合う心得というのは、どこまでやりたいかで異なるとのこと。趣味でやるのか、本格的にやっていくのか。そして、一つ一つの作業の意味を考え、一つ一つの作業の精度を高めていくことが求められると。

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深いです。。すみません、、こんなひよっこが、申し訳ないです。。

道具の紹介を交え、アカデミーで習ったことをお話しし、では、実習に移りましょうとなりました。村田さんも良くお考えいただいており、せっかくなので1つだけでなく、時間内でいくつも作る方が身に着くと、できるだけ多く作業をさせていただけるようです。

【プロの早業!】

午前中には、小品の長寿梅(ちょうじゅばい)のポット苗を陶器の鉢に植える作業をさせていただきます。まずはお手本を見せてくださいます。こんなかんじ↓

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我々は、盆栽アカデミーで、底網のセットは針金をメガネの形状にしてセットする方法を教えて頂いたのですが、こちらではU字型でサクサクとセットしていきます。短時間できっちり仕上げることもプロの技です。あれよあれよという間に植え替え完了です。

【新たな技の登場!】

我々は、盆栽アカデミーでは、盆栽鉢に苗を固定する方法として針金で根を固定する方法を学びましたが、今回は、小品ということもあり、麻縄で苗と鉢を固定する方法を教えて頂きました。苗木を販売しているところで見たことがある十文字の巻き方です。

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嬉しいですねー!新たな技を習得した感じです。(習得してませんけど)

結わえた鉢は、たっぷり水が入った鉢の中に入れ、鉢底から水を鉢内に行きわたらせます。どぶ漬けという小さな鉢に水やりする方法で、表面まで十分水に浸ったら取り出し、完成です。

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【同じように行くはずない】

さて、我々もチャレンジです。が、そうそう手早くできません。村田さんからは「最初の1,2点は丁寧に。ネットはパパっと。根をさばく時は注意して。」といったアドバイスをいただきながら、作業していきます。一生懸命やってようやく皆3個ずつ作って時間となりました。なるほど、商売ともなると、効率性も考えなくてはなりませんよね。ああ、無事に商品としてお客様に選んでいただけるものになったでしょうか。。

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ここまでで午前の部終了~。お弁当食べて午後の部は<後半>へつづきます~

お待たせ!盆栽界の革命児、平尾です。

もう、今回は女性受講生が浮足立って大変です。昨今メディアでも有名な平尾成志(ひらおまさし)さんの講義「盆栽の国際事情」です。

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盆栽アカデミーも平尾さんを講師に招聘するところが攻めていていいですねー。伝統も大事にしながら新しいことにチャレンジする、カリキュラムの幅広さがとても魅力です。

【世界の盆栽認知度は侮れない】

平尾さんは、2013年に文化庁文化交流士として世界各国を訪問され、各地で盆栽の普及活動に貢献されています。

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意外に日本人が思う以上に世界での”BONSAI”(私が海外ドラマで聞いた発音は「ボンザイ」と聞こえます)知名度は高く、アートとして高く認識されているように思います。それは、盆栽美術館や盆栽展での海外からの来訪者の割合からもうかがえます。逆に、我々日本人が盆栽の魅力を日本人にさえ十分に伝えられていないことが残念です。

 【各国の特徴】

さすが現地に行かれた生の声は面白いです。上記各国を訪問され、各地の盆栽園や展示会、イベントなどの体験を写真と映像を交えてお話しいただいたのですが、それぞれの特長があります。

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f:id:katsuo_24:20190706174700j:plain正統派からすると眉をひそめそうなスタイルでも、 「このようなスタイルがある」と、否定ではなく淡々と紹介されていました。まあ、絵画の歴史でも、ピカソやらゴッホやら色んな革命児がいますから、何がどう評価されるかは、その時代の流れでしょう。

平尾さんは蔓青園(まんせいえん)という、由緒ある盆栽園で先代の加藤氏に師事し6年間修業され、現在は成勝園(せいしょうえん)の園主としてご活躍です。見た目はイマドキのお兄ちゃんですが、しっかりした技術と経験をお持ちの方です。実力があるというのはどの世界でも通用しますね。

【うかうかしとれん】

イタリアやスペインをはじめ、ヨーロッパでは日本で修行を積んだ盆栽技師もおり、イタリアでは盆栽学校も日本より先に開校しているのです。日本のとある盆栽園の園主の話で、「外国人は日本人より『自国に帰って盆栽で事業を興す』という意識が強いから、奴らは強い」と伺ったことがあります。日本人がフランスの田舎でワイン造りの修行を何年もして日本でワイン事業を興すような決意でしょうね。ううー、私とは気持ちの入れ方が違いすぎる。。

そんな熱量をお持ちの方々が、世界各地で盆栽園を運営し、それぞれ活動されていることに頭が下がります。

【新しいチャレンジ】

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平尾さんは、伝統的な日本の盆栽文化を伝えるだけでなく、アートとして新しいジャンルにチャレンジされています。音楽ライブでの実演など、モダンなパフォーマンスがカッコイイですねー!世界各地で一匹狼みたいに盆栽パフォーマンスを行う姿はまさしくサムライ!Youtubeでいっぱい映像はあるので、平尾ファンはそちらへ。

【これも盆栽?】

各地の盆栽を写真で紹介いただきましたが、「これが盆栽??」と思うようなものもあります。外国文化を自国に取り入れて独自に進化させるのは日本人ばかりではありませんね。その土地の植物で仕立てる方が自然なスタイルのようにも思います。

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そして、美的感覚が違う点が面白いですね。視野を広げることによって自分の好きなものが見えてくることもあります。

【あえて飛び出した平尾氏】

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講義後に質問させていただきました。「どうしたら盆栽文化がもっと普及できるのでしょう?」その質問に、平尾氏は「だから自分は(独立して)外に出た。若い世代がもっと活躍できるようにしなければならない。」と仰っていました。

若い世代、、かなり過ぎてしまっていますが、若い世代を応援することはできますね。自分も楽しみながら応援できたら楽しそうです。

  

【おまけ】

盆美のエントランスに飾られていた「青嵐(せいらん)」という銘がついた推定樹齢120年の黒松です。

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 講義で世界一周をした後で思ったのは、やはり私は日本の盆栽が好きだということです。ドーンとした直幹スタイル、見ているこちらも背筋がスッと伸びます。

 

煎茶文化と盆栽ってどこが共通?

座学がつまらないと思う方、いやいや、視野が広がることによって自分なりの好みがでてくるという体験ができるのですよ。今回、私独自の視点ができました。その点は最後に。

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【盆栽との関連性】

今回は「煎茶文化史」を学びます。何度かこうした座学が入るのが、盆栽アカデミーの大きな特徴です。盆栽だけでなく、周辺知識を学べるというのは、大変良い機会ですね。煎茶文化史というものがあることすら知りませんでした。

煎茶のどこが盆栽と関係するのかなぁと思いましたが、文人たちの「侘び・寂び」の精神が盆栽に通じるようです。

【現在の入れ方は煎茶ではない?】

煎茶文化史の講義をしてくださるのは、入間市博物館学芸員の工藤先生です。歴史が苦手なワタクシですが、見栄を張って最前列に陣取りました。

どの座学も一様に先生方は通常一年間かけてお話しする内容を1時間半という短い時間に凝縮してお話しいただくため、かなり悩まれると思います。

 で、それをさらに部分抽出させていただきますが、現在我々が淹れるお茶は「淹茶」という淹れ方で、「煎茶」というのは、茶葉を煮出していただく飲み方のようです。鎌倉末期の五山文学に見られるとのこと。知らなかったー!

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 さて、ワタクシは静岡出身のため、狭山茶押しの工藤先生には申し訳ありませんが、地元から頂いた緑茶を飲みながら書いております。。先日は熊本で頂いた緑茶があまりにも美味しくて、日本全国の緑茶レベルの高さに驚いたばかりです。産地よりも新茶の瑞々しい美味しさは勝りますね。おっと、話がズレてしまいました。。

茶の湯文化と煎茶文化】

茶の湯といえばお抹茶。それに対して煎茶文化が緑茶。と言い切ってしまうのは乱暴かもしれませんが、お茶の二大文化であったことは間違いないようです。盆栽も生け花と比べられることも多いようですが、個人的にはどっちでも好きなように合わせたらいいのではないかと思います。

【売茶翁(ばいさおう)って】

工藤先生がスライドでご紹介くださった、「売茶翁」という仙人風のこの方の風貌、伊東若冲筆というのも相まって、好みのタイプです。柳のようにしなやかなあり方は、様々なしがらみにとらわれている我々に哲学的な問を投げかけているようです。

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売茶翁は、子供の頃から優秀で、寺で教育を受けたものの、病気がちであったようで、成人後に自己の心身を鍛錬するため修行の旅で遊歴したとのこと。元の寺に戻り、後を継いだものの、還暦を過ぎた頃に辞職して京都の賀茂川べりに「通仙亭(つうせんてい)」を開いて売茶活動(ばいさかつどう)を始めたようです。限られた時間の中で、工藤先生は売茶翁のお話しを中心に、煎茶文化史をたっぷりお話しくださいました。

数行では説明しきれないので、詳しくは入間市博物館へGo!

文人たちよ】

売茶翁が活動してきて、ようやく出てきました。「文人(ぶんじん)」というキーワード。工藤先生から講義内で盆栽についての言及は多くはありませんでしたが、私はこれこそが盆栽と煎茶文化の共通点ではないかと思います。

一般に「盆栽」としてメジャーな姿でイメージされる姿はどっしりした根張り(ねばり)の松だと思います。いわゆる和風の屏風や垂れ幕に描かれる松です。これを「模様木」といい、それに対して「文人木」という仕立て方があります。それこそ、「なんでこんなにひょろっとしたのがいいの?」という素人丸出しで「意味わかんねー」と言いそうなスタイルです。着飾った姿ではなく、自然でありのままの姿。盆栽そのものというより、盆栽を置いた「空間」その全体から侘び・寂びが感じられるもので、その空間の創り方が味わい深いものになります。どちらの仕立て方も盆栽ファンの間では人気のスタイルです。

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【売茶翁は盆栽嫌い?】

これは、工藤先生のお話しではなく、私の勝手な推測です。売茶翁はもしかしたら盆栽は嫌いだったのではないでしょうか?なぜなら、盆栽を鑑賞するのは、「自然の中でお茶を楽しみ、語らう」という売茶翁のスタイルとは異なり、「小さな鉢の上に自然の風景を創り上げる」という、ある意味人工的なものだからです。また得意の妄想ですが、売茶翁だったら、「さて、今日は天気が良いからピクニック行って木陰で色々話そうか」といった感じで、自然の中に身を置くことを好まれたでしょう。

盆栽は「ピクニックに行けなくても自然を身近に感じたい」という、まあ、売茶翁から見ると俗世間にまみれた人の欲が作り出したものかもしれません。

ここから先は長くなりそうなので、お茶を飲んで文人たちと語らいましょうか。

 

【おまけ】f:id:katsuo_24:20190623114711j:plain

先日、北海道の紋別市に行く機会がありました。オホーツク海沿いの街路樹は「蝦夷松」でした。街路樹にその土地固有の樹種が用いられるというのがいいですね。北海道の夏の花、ハマナスも色を添えていました。

番外編:1600年代のミニチュアランド ~水前寺成趣園~

日本庭園って、池があって、石があって、松が生えてて、大体どこもそんな感じ…くらいにしか思っていたのは、私だけじゃないはず。。

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しかし、盆栽アカデミー中級コースでは、短時間ではあるものの、日本庭園史を教えていただきました。庭園が造られた時代背景を各地の庭園を時系列で並べ、その特徴を教えていただいたおかげで、おおまかな日本庭園の分類がちょこっと頭の片隅に残っているだけで、見方が変わるものです。

 機会があれば各地の日本庭園に行ってみたいなぁと思っていましたが、ちょうど熊本市に行ったので、これは!と思い、水前寺公園(正式名:水前寺成趣園(すいぜんじじょうじゅえん))に足を延ばしました。

桃山時代のミニチュアランド】

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水前寺公園は桃山式の回遊式庭園の代表的な庭園でございます。桃山文化というのは、秀吉様の頃ですね。1600年代です。回遊式庭園というのは、人工的に自然の風景を庭園の中に造り、人がその中を歩いて巡ると、見える景色が様々に変わり、あたかも実際にその場所に行ったかのように感じることができるという、現代のミニチュアランドのようなイメージかもしれません。

水前寺公園は、公園正面入口からまっすぐ進むと、どどーんと池が広がり、遠くに富士山を模した小山が配置されているのが大きな特徴です。

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池の中の岩の上にも石付き盆栽のように植栽されています。島に見えますね。 

【モデルは浮世絵?】

庭園内の橋を渡って富士山に近づくと、なんだか浮世絵の富士山のようです。

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私の勝手な推測ですが、庭園が造られたのは1600年代ですから当時は写真も無いでしょう。回遊式庭園で富士山をイメージして庭をデザインするために、浮世絵を参考にしたのではないでしょうか。。得意の妄想が広がります。

 【清らかな湧き水】

そして、こちらの池の水は、阿蘇山からの湧き水です。

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2016年の熊本地震で一時水が枯れてしまったそうですが、復活したようです。良かった!それはそれは吸い込まれそうに透明な水で、鯉たちも色鮮やかに泳いでいました。

富士山を通り過ぎた頃、松の手入れをしていた方がいらっしゃいました。ちょうど松も芽がぐんと伸びる季節です。

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庭木の場合も「芽切り」って言うのでしょうか?私もボサボサの我が家の盆栽ちゃんたちのお手入れしてあげなくちゃ、と焦りを覚えます。。

 

【おまけ】

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水前寺公園で珍しいアルビノの大きなスッポンを見かけました。紅葉の若葉と澄んだ水で、なんだか花札の絵になりそうな景色でした~

 

中級、実技シリーズ <エピソード8 ~時の過ぎゆくままに~>

【思い出して!私は真柏(しんぱく)です】

えーっと、半年近く経ってしまいましたが、記憶の限り思い出しましょう。幸い、盆栽アカデミーではレジュメを毎回配布してくれるので、後から見直しても大変助かります。年間のお手入れカレンダーや管理方法が記載されたレジュメは、初心者には有難いガイドとなりますね。この救いの神(紙?)が強い味方です。

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▲今回はこの素材(真柏)の枝先まで細い針金をかけて整姿していきます。

アカデミー中級コースの実技では、真柏の手入れを学びますが、同じ素材を何回かにわけて少しずつ手入れ方法を教えていただきます。真柏の剪定は一年中可能のようなので、私のようなズボラな人向けの手入れしやすい樹種のようです。おサボりしてもなんとかなる真柏ちゃん、なんとも良い子です。君とならうまくやっていけそうだ!

【実技の感覚はやってこそ】

中級コースといっても、ほとんどの受講生が初心者に毛が生えた程度の知識です。ただ、何度か講義→実技→講義→実技と繰り返していると、「あ、こういうことか!」という理解ができてくるように思います。これはどんな習い事も同じようなものかもしれませんね。水泳も、いくら泳ぎ方を聞いたところで泳ぐ感覚は実際に自分がプールに入らなくちゃ分からないですから。人にやってもらっているうちは分からないので、自分でチャレンジすることが大事です。そりゃあ失敗したくはないけれど、失敗してしまったときは、なぜ失敗したのかが痛いほどわかり、次に生かせるというものです。

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【待ちきれなくて、、】

インストラクターの先生のお話しを一通り伺い、自分の素材に向き合います。もう、皆さんどんどん作業を自主的に初めています。何をやるべきか、簡単な手入れはそろそろ各自で判断できるようになってきているようです。実は教室に入った時から、皆さんどんどんインストラクターの先生を捕まえて、質問しながら手入れをしています。

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針金掛けは先読み力が必要ですが、これも何度もやってみてコツがつかめるようになるようです。まだまだ修行が足りませんが、インストラクターの先生のアドバイスを頂きながら、限られた時間で素材を整姿していきます。

【技も色々】

針金掛けは枝の付き方によって掛け方が変わりますが、大きく曲げたいときはさらに技が必要です。これも長年の盆栽技術の伝承の中で伝わってきているのでしょうか。引っ張る力を利用して時間をかけて向きを変えるという技も教えて頂きました。

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私は、「へぇー」といういつもの間抜け声を出しているだけなのですが、いやあ実技では学ぶことがいっぱいです。 

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【自然の造形力】

私がとても気に入った原師匠の言葉があります。

「人が手を加えるのは10%程度。後は樹が自然に形を作ってくれるのです。」…言葉を失いました。なるほど、「ここはこうしてやろう」と粘土で作る造形とは違い、盆栽は生きた樹木なので、自然の成長力に任せるという気長に待つこちら側の姿勢も問われるところがなんとも哲学っぽいです。切るべきか切らざるべきか、、と悩みつつ作業するのが盆栽の手入れの面白さでもあります。

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 本日のお手入れはここまで。次回の実技はいよいよ最終回、植え替えですよー!

 

【おまけ】

この講義の時期は真冬でしたが、あまりに季節外れになってしまうので、先日の盆栽美術館のロビーを彩っていた涼し気な岩がらみの写真をお口直しにどうぞ。

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教えて樹木医さん、盆栽の病気。

【そうだった盆栽は樹木だった】

つい忘れちゃいますが、盆栽は小さいけれど、立派な樹木なんですよね。草もの花ものといった小さなものもあるので、広く植物の中に含まれますが。

今回の盆栽アカデミー中級コースは座学で樹木医の樋口裕仁先生にお話しを伺いました。個人的に樹木医さんのお話しとても興味があったので、期待感でいっぱいです。

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樋口さんは会社の社長さんなのですが、学者という方がなんだかしっくりくるアカデミックなイメージのお方です。

【病気でも喜ばれるものもある?】

学者っぽいイメージ通り、「病気」の定義から講義が始まりました。こういうところがきちんと公的機関の盆栽アカデミーらしくてとても好きです。根拠がきちんとあるところが。まあ、個人の好みは置いといて、、簡単に言えば、健康な状態でないものは病気ということになります。さらには、「傷害」や「病害」という言葉もありますが、ここは割愛。病気っていうと皆悪いイメージなのですが、マコモダケは病原菌により肥大するもので、肥大部分を食べるのです。超高級な貴腐ワインは、樹になった状態で枯れるブドウから作られますが、この貴腐菌は、若いときに付くと、炭色なんとか病という病気のブドウになっちゃうらしいです。へー。この知識を飲みながら話すとちょっとした雑学王っぽくなりそうです。

【生物学の授業】

続いて細胞や細菌、ウイルスの話に移っていきますが、このあたりはまるで高校の生物の授業のようです。私はこの辺の話もとても好きなので、目に見えないミクロの世界に自分が入り込んだように楽しくお話し聞きました。わかりやすくて面白いのは、ウイルスは動植物の中でしか生きていけないという話です。濡れたスポンジでは最近は生きているのですが、ウイルスは生きていけないんですって。

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【病気になるのは条件次第】

誰しも病気は避けたいものですが、樹木も病気になる条件というものがあります。まず、直接的な要因の「病原」、かかりやすいかどうかという「植物の性質」、そして、「気象や土壌」などの間接的な要因の3つが挙げられます。逆に言えば、この3つが揃わなければ病気の発生にならないということです。樹木の病気についてはとくに「環境条件」が重要になるようです。盆栽でいうと、鉢植えによる水ストレスが病気にかかりやすい誘因となるようです。台風の後や大胆に樹形を剪定した後の傷口からの病原体の侵入も要注意とのこと。

【病原体を持ち込むのはヒト!】

ううー、悪気はないのですが、、そうなんですねー。人類が世界を旅することが、その地域の植生に影響を与えてしまうのです。現代では「植物貿易法」によって検疫されていますが、昔は知らずに持ち込んだ植物によって、現地の樹木に甚大な被害を与えるという恐ろしい影響があったと教えていただきました。

日本は島国なので日本独自の植生があります。大陸続きのヨーロッパやアメリカへの盆栽輸出が難しいのはこのような背景があるからなのでしょうね。

 【病気アラカルトと調べ方】

病原体は細菌(バクテリア)、ウイルス、菌類が主要なもので、さらに病気の種類はとても多いので、ここには書ききれませんが、自分の盆栽が病気かな?と思ったら、「日本植物大辞典」というサイトで写真や情報を確認してみましょう。

樹木医さんは身近にそうそういないので、自分でまずは検索してみて盆栽園が近くにあったら聞いてみるのが良さそうですね。

【対処法】

病気の処置としては薬剤散布がメジャーな対処方法となります。用法、用量はきちんとラベルで確認して使用してください。なんとなくではなく、規定量を量って散布してください。濃度が濃すぎると枯れてしまうそうです。また、薬剤は作ったら劣化してしまうので、使い切ってくださいと樹木医さんからのご指導。劣化するとは知りませんでした。食品同様、消費期限があるんですね。(私はズボラ派なので、オールマイティーに使えるスプレー式しか使っていません)

【WANTED!!】

樋口さんから重要な注意事項がありました。「ウメ輪紋病」という病気が関東に発生しているそうです。これは、写真のように花弁が斑入りの症状になります。

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白い梅には筋状にピンクの斑が、紅梅種は白く色抜けする症状が出ます。これらは珍品ではなく病気なので、植物防疫所に連絡をしていただきたいそうです。

この病気が発生すると、桃に伝染し、成熟前の実が落下してしまうそうです。これは大変!桃が食べられなくなってしまうなんて、ピーンチ!梅の斑入りを発見したら通報を!

 

【おまけ】

ただいま、上野にて「国風盆栽展」開催中!後期は2/14~17です。やっぱり国風展に展示される盆栽はどれもお見事!!見逃すのはもったいない作品ばかりです。

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中級、実技シリーズ <エピソード7 ~試される頭脳プレー~>

あけましておめでとうございます。年初の写真は大宮盆栽美術館でお庭に展示されていた五葉松の「輝」です。青い空に映えるこちらの盆栽、推定樹齢は350年でございます。若干ブログ更新が遅れても気にしない泰然としたお姿です。

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さて、年初恒例の格付け番組での盆栽問題、多くの方が引っかかったようですね。もう一方がお菓子とあらば、意地でも盆栽アカデミー受講生として外すわけには参りませぬ!真柏(しんぱく)という樹種(じゅしゅ)同士の比較でしたね。多分アカデミー受講生たちなら当てられたんじゃないでしょうか。この問題だけの一流芸人ですが。兎にも角にも、あのような立派な盆栽を仕立てられるようになるには、当然長年積み重ねた経験が必要です。そこまで到達できなくても、少しずつチャレンジしていると楽しみ方の幅はぐんと広がります。お菓子も見事でしたね。もったいなくて食べられないな。。

ささ、今年も生きたアートの世界を愉しみましょう!

【黒松くん、お久しぶり!】

今回は、5月頃に針金掛けの練習をした黒松くんも各自のテーブルに用意されていました。久しぶり~!元気だった~?こんな姿だっけ?なんて、1回会っただけでは分からないよねぇ。でも、盆栽ちゃんたちは、切り花と違って季節を超え、年を経てのお付き合いになるので、ゆっくり少しずつ育てていく楽しみでしょうか。この日(11月3日)は「芽かき」という作業をやりました。 

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備忘録的に黒松くんのお手入れ歳時記を残しておくと、3月~4月のはじめ、桜の咲く頃に植え替えます。素焼きの鉢が良いようです。どうも、私はすぐ鑑賞用の鉢に植えたくなっちゃうのですが、苗ちゃんには水はけや通気性が良い素焼きの鉢がベビーベッドのようで気持ち良いのでしょうね。

今回大きく残っていた枝は、来年の6月20日~6月末に切るのが良いとのことでした。大きな枝は、小さな木の栄養を奪ってしまうそうです。そっかー、植物なのに同じ鉢の中で、弱肉強食の戦いがあるのかー!

 【二又っていっても浮気じゃないから】

盆栽の基本で、新芽は2つずつ残していきます。「芽かき」という作業は、2つ以上同じところから芽が出た場合に、不要な目を切り取って、2つに残すという作業をすることです。そのまま残しておくと、芽の付け根が太ってしまうため、美しくないのです。私は手抜きしがちなのですが、アカデミーのおかげで「この時期に何をやるのか」というのが自然と身に着くようになってきます。短期集中講座もいいけど、やはりゆっくり何度も反復する方が忘れにくいですね。

【ジン・シャリ作りも二度目なら】

前回のジン・シャリはおっかなびっくりの作業でしたが、二度目になると度胸もつくものです。前回作ったシャリは、まだ削り方が甘く、自然治癒力が勝っていました。こうして徐々に力加減も覚えて行くように思います。やりすぎたら戻らないし、やらなさすぎは効かないので、ちょうどよい加減というところは、自分でやってみて初めて納得するものです。

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【葉透かしは風通し】

今回は、ジン・シャリ作りだけでなく、「葉透かし(葉すぐり)」という作業も新たに行いました。これは、針金を掛ける直前に行い、葉を先の方だけに残し、交互に小さな枝を残して余分な小枝や古葉を取り除いて針金を掛けやすくする作業です。まあ、これがまた、素人にはどの小枝を残すのか迷っちゃったりしますが、インストラクターの先生からは「真柏は強いから大丈夫」と度々言われるので、ちょっと大胆にやっても大丈夫かもしれません。

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【樹形作りに欠かせない針金】

つくづく、盆栽って色んな作業があるんだなぁと思いますが、それを愉しむゆとりのある大人になりたいものです。。さて、次は針金掛けです。種類も枝の太さに合わせてこんなにご用意いただいております。(自宅でやるならまあ2,3種類からスタートでいいかもですね)

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【針金掛けは頭脳プレー】

針金掛けは、将来の姿を想像しながら、そして二手、三手先を読んで掛けていく頭脳プレーなのです。まず、幹や太い枝から順に掛けていきます。45度の躾、覚えていますよー。そして針金と針金を交差させない。針金による躾を「効かせる」ための相手方の枝の選び方。針金の太さ、、文字で書くと嫌になりそうですが、実物でチャレンジすればすぐ納得。このハードルは盆栽の手入れの中でかなり大きいと私は感じました。しかし、これこそが醍醐味とも言えそうです。数年後の理想の形を思い描き、その形に近づけるよう盆栽を躾ていく。。なかなか思うようにいかないところも愉しみのうちなのです。 

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【個性だらけ】

針金掛けの具合は、その樹によって異なります。それゆえ、アカデミーのようにテーブルごとにインストラクターの方がついてくださり、マンツーマンで教えていただけるのは個人レッスンのようなものです。ネットや本で調べて自分流でやっても限度があります。そこは、盆栽教室なり、盆栽園なりでプロに指導してもらうことをお勧めします。何度かやればきっと分かってきます。何事も基本をマスターすることが上達への早道だと確信しています。

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ビフォーアフター

実技の回は1回2時間ですが、その中で盛りだくさんの作業となります。てなわけで、かなり端折ってしまいましたが、今回の成果はこんなところです。あとは自宅で自主練となります。 

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これ、同じ樹ですよ。ま、植替えを意識してAfterの写真は鉢を傾けていますが、こんなに曲げても大丈夫とは、びっくりですねー。

 

【おまけ】

正月飾りは、アカデミーの教材だった五葉松君と、昨年盆栽美術館で参加したワークショップで作成した長寿梅、秋雅展の販売所で購入した笹の苗と、、ほぼ原価松竹梅セットです。苔や飾り砂があればもう少しオシャレになったんだけどなー。

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買ったばかりでも嬉しいけれど、自分が育てて花が咲いたり姿が整ってきた子たちは、喜びもひとしおです。本年もよろしくお願いいたします。