盆栽っぽくなってきた

2017年6月4日 第3回目の授業

【実技】盆栽づくり(雑木盆栽)    

講師:盆栽インストラクター 原先生ほか藤樹園の先生方 

 

 前回に続き、今日も楽しい実技です。受講生も新たな教材に朝からウキウキの様子。クラスも3回目になると緊張感がほぐれ、近くの席の方たちと会話も出てきます。前回は剪定方法を主に学びましたが、今回は植え替えの実習です。

今回の素材は、雑木盆栽のうちの一つ、捩幹石榴(ねじかんざくろ)です。明治時代に名古屋付近で突然変異として発見された左巻きに成長する種類の石榴が話題になり、園芸家が広めたそうです。幹の曲がりが特徴的です。

インストラクターの原先生が限られた時間の中で、前回の復習から今日の講義のポイント、実演とテンポよく進行してくださいます。 

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【石榴(ザクロ)らしさ??】

盆栽づくりで非常に重要な「らしさ」。~松は松らしく、ケヤキケヤキらしく~です。といっても今回の石榴(ザクロ)って。。石榴らしさって??実は見たことあるけど、木の姿となると、実際に庭木でボサボサ生えてるくらいしかイメージわきません。。

盆栽でザクロの実がなるの?と思いましたが、実際に実をつけることもあるようです。見本の写真を見せてくださいましたが、プロでも相当難しいようです。

 さて、いよいよインストラクターの原先生の実演です。受講生たちは、自分がこの後やる作業のお手本なので、真剣なまなざしで先生の手先を見つめます。さすが先生!あざやかな手つきでみるみる盆栽らしく仕上がりました。

 植え替え時のポイントは、根は乾きやすいので、手早く行うことです。よって、予め正面を決め、完成後のイメージを作っておき、植え替える鉢の準備をしておくことが肝心です。

今回の準備に必要な素材と道具もちゃんと用意されています↓(これ全部準備してくださっているんです。これからは自分で用意しないとね)f:id:katsuo_24:20170612181202j:plain

【まずは伸びた枝葉のお手入れを】

 まず、ボサボサの捩幹石榴の正面を決めます。幹の根本が凹んでいて、幹の立ち上がりが見える方を正面に。細かな枝があちこちから生えていて分かりにくいので、枝を手で隠しながら見極めます。そして前回同様、ピンセットで雑草取り。

 次に、剪定です。下の方の枝で、余分な枝をハサミで切ります。前回の五葉松で実技をやったおかげで、皆さん少しは余分な枝がどれかを自分たちで判断できるようになっているようです。すごい進歩です!とはいえ、枝は切ってしまったら同じところからは生えないので、切る前に将来の木の姿を想像しながら不要かどうかよく考えます。迷ったら今は切らずに数年後に切ってもいいのです。

 

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枝を切ったところには、癒合剤(ゆごうざい)を塗り、雑菌が入るのを防ぎます。

 

枝を切り、おおまかな樹形を決めたら、次は上の方から新芽の剪定です。石榴の剪定は4月~梅雨時期までの間に行うのが良く、その後ピンピン芽が出て来たら、しばらく放置して9月ごろにまた剪定した方が良いとのこと。上の方から剪定するのは、切った芽や葉っぱが下に落ちるため、邪魔にならないようにするのです。大掃除の時に天井や壁の上の方から掃除するのと同じ理屈ですね。

ちなみに石榴の植え替えは3年に1度くらいの頻度が適しているそうです。(松は春先の植え替えが良いらしい)

 

【鉢も重要なアイテム】

 次は鉢の準備です。盆栽っぽい鉢は主に塗りがあるものと塗りがないものに大別されますが、雑木盆栽は塗りがあるものが似合い、松柏盆栽は塗りがないものが似合うといわれています。また、色も重要で、木や花の色を引き立たせるものを選びます。人間の洋服選びみたいなイメージでしょうか。洋服で印象が変わるように、鉢で印象が変わるように思います。

今回の鉢は角が丸い長方形の塗りの鉢です。長方形の鉢の場合には、中心に植えるのではなく、横幅全体の6:4くらいの場所に植え、空いた空間も大切な景色となるように配置します。(丸い鉢の場合は真ん中に植えます)

 

【針金登場!土は富士山型?】

 針金を曲げて鉢底の穴に防虫網(ネット)を盆栽鉢に固定する方法は、鉢が浅くてネットがずれやすい盆栽鉢特有の方法なのでしょう。私が通常買うような植木鉢のネットは底に敷いてあるだけです。

さらに、長い針金をU字型に曲げ、固定したネットの下側から上にニョキっと出します。これは後で盆栽を鉢に固定して、風雨で倒れて抜けないようにするためです。土を入れてからではできない作業なので、最初にやっておきます。

 

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用意された土は赤玉土。大きな粒(鉢底用)と小さな粒(植え付け用)の2種類があり、大きな粒は少量を鉢底が隠れる程度に敷きます。次に小さな粒をカップで鉢の中央に富士山型に盛ります。ここがポイント。なぜなら、植え替え前の根は、幹の直下に空間ができているからです(根が外に向かって生える習性があるため)。植えたときに隙間なく土が入るようにするため、予め鉢の中には富士山型に土を入れておくのだそうです。へー。

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【土の匂いで健康診断】

 さて、いよいよ元の鉢から抜き出して、根をほぐします。この時に根の裏側から土の匂いを嗅ぐのもミソ。良い状態の根は良い匂いがするとのこと。悪い状態の根はドブ臭いそうです。匂いを嗅ぐことができるのは植え替え時だけなので、インストラクターの先生は、「胃カメラみたいなもの」と仰っていました。なるほど、盆栽の健康状態を見るのですね。

そして、箸で根をほぐしながら古い土を落としていきますが、この時大切なのは細かな根だそうです。古い根ではなく、細かな新しい根が水分や養分を吸い上げるのでこれを切らないようにします。

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 【新たな鉢にお引越し】

先に準備した鉢の6:4くらいの位置に、予め決めておいた正面(鉢も正面を決めておきます)を意識して植えつけます。位置を決めて石榴を置いたら、鉢底からニョキっと出していた長いワイヤーをねじってペンチで締めていきます。この時、ねじったワイヤーの元の方をペンチで挟んだまま、ぐっと持ち上げるように引っ張ってワイヤーをねじります。ぐっと引っ張ってねじる。ぐっと引っ張ってねじる。そして、しっかり石榴が鉢に固定されたら、余分なワイヤーは切り、ワイヤーの端は鉢の外側に向けて土の中に見えないように押し込みます。(先生のデモ↓)

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根が乾かないようにどんどん作業を進めます。土を入れ、箸を根の奥まで差し込んでグリグリ動かし、新しい土が根の間に隙間なく入り込むように入れていきます。↓

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最後に、ピンセットの上についているヘラで土をならして出来上がり!

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先生のアドバイスにより、私の石榴はやや傾けて植えつけました。それにより、威張っていた根が隠れ、枝下に空間が生まれました。

先生、すごいです!!盆栽らしくなりました!(ほぼ先生のお力です)f:id:katsuo_24:20170612190050j:plain

【仕上げにたっぷりお水を】

 前回の五葉松くんの様子も見ながら、新たなお友達の石榴ちゃんを保管場所に移動し、たっぷりお水を与えます。この時に、最初は鉢底から泥水が流れますが、しばらくすると透き通った水が出てきます。泥水がたまっていると根が腐る原因になってしまうので、たっぷりお水をあげるようにします。これにて本日の講義終了です。

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隣に並べられている五葉松くんの鉢には、早くも雑草が生えていました。ピンセットで丁寧に抜きながら、また次回会うのを楽しみにします。皆、元気に育ってね~

  【授業後の美術館】

ちょうど6月に入ったばかりで、サツキ展の時期です。館内正面玄関では、紅白混ざった花が満開のサツキがゴージャスにお出迎えしてくれました。一つの株で様々な花の色が楽しめるってとても贅沢です。花の展示の時は華やかな賑わいを感じることができますね。

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展示室も見事なサツキの花を咲かせた盆栽たちが、その空間全体の調和を考えた飾り方も相まって、華やかで雅な姿で展示されていました。