お手入れも実習で勉強?!

2017年6月10日 第4回目の授業                  初回はこちら

【講義】盆栽の技術解説

講師:盆栽インストラクター  原 先生、風見先生、藤樹園の方々

 

今日から最終回まで講義の日が続く、、と思っていたのですが、教室に入ったらまさかの各自席に盆栽が用意されておりました!受講生は皆、今回以降実習は無いと思っていたので、急に活気づいてしまうところが、なんとも正直です。先生方も講義を飽きないように進行を考えてくださっているので、毎回楽しみに通えます。

 まず、最初は原先生から先週のおさらい。この復習の時間がとても大切です。 

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復習のひとつ、松の鉢裏を見せてくださり、生きた情報を教えてくださいます。鉢裏の白い部分は共生菌といって、状態が良い松の盆栽にしか付かない菌だそうです。盆栽を購入するときのポイントになるので、姿形だけでなく、一歩踏み込んだ目利きの盆栽選びができそうです。

 【欅(けやき)の種から15年。。】

さて、今日は、欅(けやき)を素材として手入れの方法を学びます。伺ったら盆栽師の方々はそれぞれ得意な樹種(じゅしゅ)がだんだん決まってくるそうです。最初は色々手掛けているものの、徐々に自分に合うものが増えていき、苦手なものは扱わなくなってくるとのこと。自身の性格も樹種との相性もあるようです。面白いですね。

私の教材(本日の教材はお借りするだけです)は、講師の風見先生が種を採取して自ら15年も育ててきた欅です。これで樹高(じゅこう:木の全体の高さ)は約25cm。見事な姿です! f:id:katsuo_24:20170617181755j:plain

欅の盆栽の姿は、直立した「箒(ほうき)づくり」か「芯立て」の2種類しかないとのこと。箒づくりは、箒を逆さにしたような形の樹形に仕立てることです。欅の自然の姿はあたかもまっすぐ空に向かって枝葉を茂らせています。そして、欅は冬に葉が落ちた後、枝ぶりや幹を鑑賞する「寒樹(かんじゅ)」の代表なのです。落葉樹の冬はつまらないと思ったら大間違い。むしろ逆というのが新鮮です。

欅は埼玉県の県のシンボルとなる木なので、埼玉ではあちこちで見られます。東京都は銀杏(いちょう)ですね。銀杏の盆栽も紅葉が楽しめそうです。

【欅にはたっぷりの愛情を】

風見先生がスケッチブックに大きく分かりやすい図解と写真の資料で欅の種を採取してから発芽、植え替え、手入れまで解説してくださいます。

まず、11月頃に欅の木の下に落ちている種を採取してくるところから。欅の落ち葉に種が付いているなんて全く知りませんでした。その種を一晩水につけた後、種の上下の向きに気を付けて植えつけることが肝心だそうです。なぜなら、芽が出たときに曲がっていると、成長した時に幹も曲がってしまうので、最初からまっすぐに育てないと、綺麗な直立にならないようです。 

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そして発芽したら根を切り!(せっかく出た根を切っちゃうんですね。)切った部分に発根剤を塗って水に入れてその後植え替え、朝晩丁寧に霧吹き!(霧吹きとは、なんて繊細な扱いなのでしょう。またもやセレブ扱いです。)で水を欠かさず与える必要があるそうです。

箱入り娘のように、愛情たっぷりに育てるのが欅だそうです。とても素敵だけど、自分でここまでできる自信がありません。欅の盆栽を見かけたら、作者を尊敬することでしょう。初心者はある程度成長したものを購入する方が良さそうです。 

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葉が出て来たら適宜葉刈りを行い、樹形のバランスを見て枝に対して幹が長すぎたら「取り木」という作業で樹高を短くします。上の写真の左隅に写っている欅は、枝葉の部分に比べて幹が長いため、途中で幹の皮を薄く削り、その部分に水苔(みずごけ)を巻いてポットで覆い、水分を逃さないようにしたものです。3か月後くらいに根がでたところで切るそうです。

 【欅をだます】

さて、新芽が出て6月頃までに葉刈り(はがり)という作業を行います。盆栽の欅の葉を全部切り落としてしまうのです。なんてことでしょう!せっかく出た葉を。しかし、この作業により、欅は「冬が来た」と勘違いし、続けて温かい日を浴びることで「もう春が来ちゃったよ。早く芽をださなくちゃ」と新芽を頑張って出すので、1年に2歳年をとるのです。 

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なぜわざわざそうするのか?いい質問です(聞かれていませんが)。葉刈りすることにより、①強い枝を抑え弱い枝が強くなるので枝が平均化し、②日の光が樹の内側まで届き風通しも良くなり、③細かな枝も密になり、葉も小振りになって雑木らしい柔らかな小枝が期待でき、④葉も小さく薄くなるため、紅葉が美しくなるのです。つまり、小さくても大木に見えるようになり、盆栽らしい姿になるのです。(全部先生の講義です)

【葉刈りはまるで写経?】

いよいよお楽しみの実習です!今日の道具は鋏(はさみ)だけです。ひたすら葉を切り落とします。ちょきちょきちょきちょき、、、ひたすら無心に鋏を入れ続け、何百枚という葉っぱを切っていくのです。

最初はザワザワ話しながら皆作業していましたが、次第に教室が静かになっていきました。

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あたかも写経をしているかのような無心の集中力です。これは没頭できて、嫌なことをすべて忘れられる作業です。

今回は、時間切れで作業途中であえなく断念。葉が少なかったお隣の方に手伝っていただきましたが、それでもここまで。数えていませんが、200枚くらいの葉は切ったと思います。本当なら、全部葉を落とし、徒長枝(とちょうえだ)と呼ばれるピンピンと余計なところから生えて樹形を乱す枝を切り取って完了です。

受講生たちにご自身が精魂込めて15年も育てた欅の素材をお貸しくださり、手入れの実習をさせてくださった先生も、葉刈り作業で受講生が手伝ったことで手間が省けて喜んでいらっしゃいました。これぞWIN-WINです(笑) 

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(先生のお手本ビフォーアフター。左の欅は全部葉を切っていいのですが、可愛すぎて切れなかったと。愛情込めて育てていらっしゃる証拠ですね)

 

講義終了後は保管場所へ行って雑草取りと葉の病害虫の確認をしました。受講生の方の石榴の盆栽には蕾がついていらっしゃる方もいました!こういう発見が嬉しいですね。 

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【授業後のお庭】

 今日は講義終了後、以前の職場のお友達と土呂でランチをとった後で、盆栽美術館を再訪しました。自分と違う視点での鑑賞や好みもとても楽しく、新しい発見ができました。 

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 盆栽の洞の中から小さなシダが覗いていたのでそれも景色なのか面白くて撮りました。