鉢映りが良い。なんと美しい響き。

2017年6月17日 第5回目の授業                  初回はこちら

【講義】盆栽の管理・育成の基礎知識

講師:盆栽インストラクター  原先生、風見先生、昼間先生

 

初級講座も今日から後半スケジュールに入りました。盆栽アカデミーの受講生は皆さんとても熱心で全員が毎回ほぼ無欠席で参加されています。皆さん熱心ですねー。きちんとカリキュラムを組まれて、毎回新しい内容をどんどん教えてくださるアカデミーに感謝です。盆栽のような長い歴史のある職人技の世界では「技は見て盗むもの」という文化だったことでしょう。確かに、奥が深い世界なので、一朝一夕に習得するのは無理ですが、学びのきっかけになる場を与えていただけるというのは非常に有難いです。 

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本日も講師の先生が育てていらっしゃる貴重な素材をご用意くださっているので、実習を交えた講義で贅沢です。鉢の置き場所、水やりのタイミングと方法、土の配合や肥料の与え方、病害虫の予防と対処方法を駆け足で教えていただきました。

 前回までの講義で剪定を行った五葉松と植え替えを行った石榴(ざくろ)では、それぞれ剪定方法や肥料を与えるのに適した時期があります。こうした樹種(じゅしゅ)による剪定方法や植え替え時の根の扱い方、肥料の種類などは専門家に教えていただくのが一番の早道で、本の解説や写真ではなかなか分かりにくいのですが、きっと公的な盆栽相談イベントや民間の盆栽教室でも教えてくれる機会があると思います。

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【直置き禁止!水やりはこまめに】

置き場は屋外の日当たりと風通しの良いところに60cm程度の高さの棚を置くようにします(上の写真は、最低でもこの程度のものを揃えるようにと安上りに置き場を確保する方法を教えてくださいました)。地面には置かないように注意します。なぜだろうと思っていましたが、鉢底の穴から水がちゃんと抜けて目詰まりを起こしにくくし、風通しを良くすることが盆栽の健康には良いようです。

そして、肥料を置く場所は幹の根元近くではなく、根元からなるべく遠い鉢の縁側に4つほど置きます。(見た目は動物のフンみたいです)

水やりは毎日(夏場は朝晩)行うのが基本ですが、旅行等で水をあげられない日は、2~3日であれば、風呂場に置いて濡れたタオルで根元を土ごと覆ってあげれば大丈夫なようです。

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前回までに手入れを行った盆栽を、講座終了後は各自自宅で管理するので、ちゃんと聞いておかないと!

 【目利きができるか、盆栽鉢鑑定はいかに?】

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今日は教室にずらっと鉢が並んでいます。鉢の形状や色、釉薬(ゆうやく)の有無など様々です。

松柏盆栽は泥物(でいもの)鉢、雑木盆栽には釉薬鉢を合わせます。これは、それぞれの樹種を引き立たせるようにそれらの鉢が良いとされているからです。花や実がなる雑木盆栽は、その花や実の色を引き立たせるために花や実と同色は避けるようにします。

このように鉢を樹種によって選ぶことを「鉢合わせ(はちあわせ)」と言うそうです。いずれの盆栽も、木に対して小さくて薄いものを使うことがポイントです。そうすることで、木が相対的に大きく見えるのですね。

そして、盆栽同様古いものに価値があるようで、中でも江戸時代や明治時代といった古い時代に中国から渡ってきたものは大変な値打ちものだそうです。で、教室に並んでいる中で、一番高価な鉢があるとのことでしたが、いくらかは教えていただけませんでした。そこ気になります(笑)

また、樹と鉢の調和が良い様子を「鉢映り(はちうつり)」というそうです。響きがなんとも雅な感じですね。盆栽を鑑賞しながらこんな言葉がさらりと出るようになってみたいものです。

 【赤松の手入れ】

さて、実習は赤松です。「短葉法(たんようほう)」と呼ばれる剪定方法で、これは黒松や赤松で行われますが、6月にしかやらない作業だそうです。また、懸崖(けんがい)作りのものは、垂れ下がっている一番下、つまり根元から一番遠い部分から徐々に芽切りを行います。5日~7日ほど経ってから根本の方の芽切りを行うそうです。一度にダメージを与えないためでしょう。前年に肥料をたっぷりあげておくことも必要だとのこと。

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先日の講義で五葉松の剪定を行いましたが、大きな違いは、その芽の出方によります。赤松や黒松は軸が緑色の柔らかい新芽が長くニョキっと出るため、この部分を選定しないと大きくボサボサになってしまうのです。五葉松は新芽の長さが短いので、そこまでやらなくてよいとのこと。同じ松柏盆栽でも手入れ方法が違うのですね。

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写真が暗いのですが、Before(写真左)とAfter(写真右)は芽切りをしてボサボサ感が減ったのが分かりますでしょうか。

6月だけでなく、季節に応じた手入れ方法があるので、それもレジュメで図解してくださっています。受講生たちにとってレジュメは宝物です。

 

【授業後のお庭】

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この五葉松は直幹(ちょっかん)という造り方ですね。空に向かって真っすぐ堂々とした風貌です。立ち上がり(根から幹の部分)から上に行くにしたがって徐々に細くなっていきます。これをコケ順が良いといいます。言葉の由来は「頬がこける」から来ているとか。私の解説もだんだんそれっぽくなってきました(笑)