ああ、初級コースも最終日。

2017年7月8日 第8回目の授業                  初回はこちら

【講義】盆栽飾りの基礎知識

講師:日本盆栽協会インストラクター 原先生、風見先生、昼間先生

 

5月に始まった盆栽アカデミー初級コースも今日で最終日です。皆、口には出しませんが、とても名残惜しく感じています。それだけ毎回充実した講義と実技のカリキュラムだったということです。

f:id:katsuo_24:20170718100619j:plain

さて、今回は皆の席にこれまでの講義で各自が手入れをした盆栽が並べられており、グループワークのようです。原先生の解説に続き、昼間先生がご自身の作品を使って飾り方をデモしてくださいました。

【ARTの世界】

盆栽というと、その樹形ばかりに目が行きそうですが、「盆栽を飾る」というのは、鉢や苔、盆栽を乗せる台(=卓)、空間と、全体の調和をとりつつ、まさに盆栽をART(芸術)という世界に高める作業です。

まず、卓(しょく)と呼ばれる脚付きの文机のような台に主役となる盆栽を乗せます。

f:id:katsuo_24:20170718101113j:plain

この時、どんな卓でも良いわけではなく、どっしりとした大地から生えているような姿の盆栽か、崖から垂れ下がるように作ったものかという盆栽の樹形や繊細さなど、主役の盆栽に釣り合う卓を選びます。卓が盆栽より主張しないように気を付けます。

上の写真の奥にある、高卓(こうしょく)と呼ばれる高さがあるものは、高い山をイメージしています。これは、懸崖(けんがい)と呼ばれる、幹や枝が垂れ下がったものに合います。 f:id:katsuo_24:20170718101936j:plain

上の写真の根卓(ねじょく)と呼ばれる卓は、一見して独特な有機的な曲線でできていますが、これは、一本の木から透かし彫りで作ったものだそうです。これは素人がぱっと見ただけでもとても高そうです!

f:id:katsuo_24:20170718102101j:plain

地板(じいた)と呼ばれる平らで薄い艶のある板は、主役の盆栽に脇にちょこんと置かれる「添え」の盆栽を置くために用いられることが多いそうです。

飾るためのわき役にもこんなに種類があるんですねー。舞台ならさながら大道具さんでしょうか。

 【飾り方の手順】

まず、主役の盆栽(主木:しゅぼく)に合う卓を選び、盆栽の流れ(盆栽を正面から見たときの風を受けたような枝ぶりの方向)や席(せき)全体の幅や奥行を考えながら配置します。

席というのは、盆栽を飾るスペースのことで、この空間全体を「調和」を重視して飾っていくのです。(下の写真は、「空間」を見た目で分かりやすくするために、原先生が輪を用いて解説してくれているところ)

f:id:katsuo_24:20170718102354j:plain

f:id:katsuo_24:20170718101815j:plain

次に「下草(したくさ)」を盆栽の脇に置きますが、これは主役の盆栽の流れを受けるように配置します。

面白いのは、盆栽も短歌と同様、季節感を出すために、その季節にあった下草を選ぶようにします。松には季節がないので、この下草や地板で季節感を出すのがポイントのようです。下の写真は下草の一例です。

f:id:katsuo_24:20170718102241j:plain

あくまで主木が目立つように飾るようにするため、主木の鉢の形や色も気を付けながら、わき役は主張を押さえた控えめな感じで選びます。草にも正面や左右があるようなので、それぞれ見極めて配置します。

f:id:katsuo_24:20170718110232j:plain

こちらは文人木(ぶんじんぎ)の飾り方。先の懸崖(けんがい)のものとは違った飾り方になります。

全体の調和をみながら、「空間の美しさを表現する」というのは、いかにも日本的な美に対する考え方ですね。

 【舞台に上がる前のお化粧】

さあ、主役の盆栽を舞台に上げる前に、お化粧を施します。まずは鉢の汚れを菜種油(なたねあぶら)を布につけて拭き取ります。菜種油は高価だそうで、身近で代用できるものとしてはベビーオイルで可能だとのこと。これならすぐ入手できますね。また、苔は、自然に盆栽鉢に生えるのかと思っていましたが、実はあとからお化粧のように張り付けるのだそうです。自然に見えるように苔をはるというのも、腕なのでしょうね。美人さんのお化粧のように、これまですっかり騙されていました。

【グループで集大成の席飾り】

グループに分かれて、それぞれ誰のどの盆栽を主木にするか決め、席飾りを皆で考えて発表するということになりました。

f:id:katsuo_24:20170718104211j:plain

限られた時間の中で、卓や地板、下草など自由に選び、2点飾り(主木と下草の2点)なのか3点飾りにするかなど、それぞれ話し合いながら決めていきます。

そうして、順に発表していきました。皆それぞれインストラクターの先生から寸評をいただきながら、他のグループの席飾りを「なるほどねぇ」と感心しながら楽しみました。

 【修了式】

毎回楽しみだった全8回の初級コースも今日で終了です。受講生一人ずつ、さいたま市大宮盆栽美術館の館長から、さいたま市長が発行した終了証が手渡しされました。公的講座ということを実感し、受講生一同背筋もピンとなりました。

f:id:katsuo_24:20170718105155j:plain

さて、初級のあとはやっぱり中級に進みたくなるのが自然な成り行きです。ほとんどの受講生が中級コースを希望しています。しかし、講師や会場のご都合もあるのでしょう、抽選で初級コースの半分の人数の20人しか枠がありません。希望者全員受講できるようにビデオやチャットのアプリを使ってサテライト講義やってほしいところですが、運営に負担がかかるようなわがままも言えません。くじ運が良いことを祈るばかりです。

 【さて、ブログの行方は?】

授業も無くなっちゃうしブログどうしようかなぁ、と思っていましたが、講師の勧めもあり、有難いことにこの講座を通じて盆友(ぼんゆう)ができました。せっかくなので、盆友たちとの交流や疑問、挑戦の話や、アカデミーから自宅に持ち帰った盆栽たちの成長も見守るため、素人の奮闘記を不定期で継続しようかと思います。引き続きお付き合いいただけますと幸いです。

 

【授業後のお庭】

初級コースの最終日なので、美術館のお庭全体の写真を選びました。ちょっとジオラマみたいにトイモードで撮ってみました。

f:id:katsuo_24:20170718105738j:plain

東京都内の中心部ではないものの、さいたま市大宮盆栽美術館には実に多くの海外からの観光客がいつも訪れています。受付の方も多国語対応サラッとこなされていてカッコいいです。

また、観光客だけでなく、盆栽園で何人も外国籍の方々が盆栽師の見習いとして働かれています。私たちよりずっと先輩です!本当に世界に広がるBONSAI文化ですね。

アカデミー卒業生(まだ初級ですが)として、気軽に盆栽を楽しむことを引き続き伝えていきたいと思います。