過酷な環境、それでも生きる姿を求めて

盆栽づくりの参考にしようと、長野県で比較的アプローチしやすい山に2つ登りました。どちらも花の百名山です。8月の記録ですが、一緒に夏山を惜しんでみてください。

 【根子岳(ねこだけ)2,207m】 

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根子岳から四阿山(あずまやさん)へ向かう尾根から見下ろした谷。

ラグビー夏合宿が真っ盛りの菅平高原にある牧場を通り抜け、標高2,207mの根子岳にトライ。今年の8月はまるで梅雨のように連日の雨だったため、雨が降らないタイミングを探す方が一苦労でした。

 

【癒し効果と清涼感】

数日前からストレッチはしたものの、日頃何のトレーニングもしていないので、少しの登りでも息が上がり、結構辛いです。しかし、さすが花の百名山、、霧がかかった中で高山植物の花々に癒されます。

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▲「ハクサンシャジン:白山沙蔘(キキョウ科)」 8/12撮影

今回のテーマは盆栽の参考となる樹木です。牧場の草原を脇に眺め、登り続けると白樺林が出てきます。ここでは目にも涼しい風が吹いてきそうです。実際登山中は汗だくですがね。

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白樺は高原を代表する美しい樹木ですが、これだけ群生しているところも珍しいと思います。美しいです。このミニチュア版が鉢の上で再現できたら、、老後に歩き回れなくなったら欲しい盆栽の一つです。果たして暑い下界でも育つのでしょうか?

 

 【高山の樹木は元祖ラガーマン

 厳しい風雪に押され続けてもぐっと立ち続け、枝葉を伸ばそうとする姿は樹木の生命力を強く感じます。麓で練習していたラガーマンのような屈強な足腰なのでしょう。風の向きの影響をそのまま受けた形で枝も伸びているのが、下界の穏やかな気候で育つ樹木との違いです。立ち枯れた木もそれが当たり前のように風景に馴染んでいます。人が手を加えないままの自然、これに勝るものはないのでしょう。

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盆栽は、自然の風景を生活の中で再現したいという、勝手な人の欲望でもありますが、自然を大切に想う心は、植物を育てたことがある人は皆同じでしょう。だからこそ、水やりや手入れも行い、長く愛着もって育てたいと願うのです。犬や猫、観賞魚といった動物と同じように、人と共存し、人に精神的な安らぎを与える重要な存在です。

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 【アクロバティックな草花たち】

2,200mの高山の植物たちはその可憐な姿とは裏腹に、ものすごく逞しく育っています。栄養も無い岩場で、マイナス20度にもなるような厳しい冬も乗り越え、それでも生きています。

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▲この写真は横向き回転にしているのではなく、この草木が岩の裂け目から横向きに生えているのです。

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 そして、岩場に咲く可憐な花。「イワインチン:岩茵陳(キク科)8/12撮影」でしょうか。この足元は断崖絶壁で写真撮るのもヒヤヒヤでした。しかし、山の上は気持ちがいいものです。人間も自然の中にいると、様々な煩わしさから解放されますね。

 

 【木曽駒ケ岳(きそこまがたけ)2,956m】

 いつでも行けそうだけど、いつか行きたいと思っていた山の一つ、木曽駒ケ岳にも登りました。ロープウェイで標高2,600mまで行けるので、アプローチしやすいのが有難いです。そのロープウェイから見える景色は、まさに天然ジンシャリの宝庫!ジンシャリとは、盆栽用語で枯れて白くなった樹木の枝や幹のことを指します。枯れた部分までも美しいと思うところが詫びさびの世界なのでしょう。

 

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そして、石付盆栽の参考になるような壮大な風景も眼下に広がりますが、このロープウェイの売りは「高さと速さ」なので、ゆっくり鑑賞しているゆとりは全くございません。

 そしてロープウェイを降りたらすぐに千畳敷のお花畑が広がります。8月は高山植物の花々が咲き乱れており、観光客もいっぱいです。霧が濃くて山々の遠景は望めませんでしたが、お花は見事でした。ここでお花の写真を撮りすぎて予定ペースを大幅に遅れての登山開始となりました。 f:id:katsuo_24:20170911181149j:plain

 ▲クルマユリ:車百合(ユリ科)8/22撮影

 そして、山頂付近では下の写真にある不思議なお花?周りの景色との調和で芸術作品のような植物に遭遇。これだけで盆栽になりそうな景色です。

こちらは、「チングルマ:稚児車(バラ科)」の花後の果穂だと、下界に戻って図鑑で調べて初めて知りました。お花は白く丸い形の可愛らしいものです。タイミングよく素敵な姿に出会えました。 

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  【木曽駒御朱印効果か!束の間の晴れ間】

忘れちゃならないのが、ここは標高ほぼ3,000mの高山です。空気も下界より薄いです。尾根での体感風速は20mくらいの暴風ですが、眼下に雲が見える景色は格別です。

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あいにく連日霧の登山でしたが、ほんの30分ほど、強風で霧が晴れた瞬間がありました。木曽駒ケ岳山頂の御朱印をいただいたおかげでしょうか。木曽駒ケ岳を馬の背から望む絶好の位置で、「ああ、晴れるとこんなに元気が蘇るのか!」と、疲労で折れそうになっていた気持ちを吹き飛ばすことができました。お天道様、ありがとう!

 

 【天然盆栽園】f:id:katsuo_24:20170911182119j:plain

森林限界を超えた山頂付近は、ハイマツの天然盆栽園が広がっていました。

うわー、これは見事だ!高い値段がつきそうだなーと思うようなものも。

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 しかし、高山植物は採取禁止です。「枯れた木や石も持ち帰ってはいけません」と千畳敷でアナウンスされていました。そうでなくても温暖化で植生も変化している昨今、貴重なものは皆の財産として後世に伝えたいものです。 ということで、これらの姿を盆栽で目指そうとするのですね。きっと。

 

 【剛と柔】

数多くの高山植物と出会えましたが、中でも私のお気に入りは「イワツメクサ:岩爪草(ナデシコ科)」です。寒い霧の中、朝露をためた1㎝にも満たない花が、岩の隙間に健気に咲いていました。清楚でいながら強さを感じる花です。f:id:katsuo_24:20170911182446j:plain

毒づいていた私もデトックスして純粋な心を取り戻せた山行でした。また毒素が溜まってしまったら、この写真を見て取り戻そうっと。