初級コースで雑木盆栽植え替えにトライ!<後編>

盆栽の植替えを初めてトライするアカデミー初級コースの受講生たちの奮闘は続きます。(剪定までの作業は<前編>で)

 【幹掃除】

剪定が終わったら、次に取り出したるは「使い古した歯ブラシ」です。盆栽の道具って割り箸やら針金やら色々面白いもの使いますが、今度は歯ブラシ。これでシャカシャカと幹を磨いていきます。

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 これは幹についた汚れを落とすのが目的です。樹を磨くなんて初めて聞いたので意外でしたが、さすが盆栽ちゃん、抜いて捨てられる雑草とちがってセレブ扱いです。飾られる日を夢見て美肌ケアいたしましょう。

教室では皆一斉にシャカシャカタイムです。見落としてしまいがちな汚れや害虫をこのときに綺麗に落とします。「一年に一度は磨いてあげてくださいね」と原先生。我が家の盆栽ちゃん、シャカシャカしてあげてない!帰ったらやってあげようっと。

 さて、いよいよ植え替え作業に移ります。インストラクターの原先生のデモンストレーションを見るところからまいりましょう。

  【植え替え】

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今回は元々入っている鉢をそのまま使用するため、一旦桜を鉢から外し、鉢を雑巾で拭いて綺麗にします。スポッと外す原先生に「え?そんな簡単に抜けちゃうの?」と思いましたが、この苗は1年前に植えたばかりもののようで、簡単に外れるようです。

さあ、ここからは根が乾かないようにさっさと作業します。

まず、鉢の準備です。鉢にも正面と背面があるのですが、今回の鉢は楕円形で模様もないので、キズが無く綺麗に見える方を正面とします。 

f:id:katsuo_24:20180311123220j:plainその後、鉢底の穴に防虫ネットを針金で固定します。通常ひっくり返して見ませんが、鉢底から出た針金の向きも綺麗に整えておくところが、実に奥ゆかしいです。ちょっとした身だしなみですね。

 さて、盆栽固定用の長いワイヤーも鉢底から通し、植えこみやすいように針金を広げておきます。後にこの針金で盆栽を固定するのですが、同じ針金同士で結束しないと、緩んでしまう恐れがあるので、どれとどれが同じ針金の両端なのか注意が必要ですね。 f:id:katsuo_24:20180311123641j:plain

そうして鉢の準備が整ったら、鉢底に粒の大きめの土を薄く敷き、その上に粒の細かな土を真ん中が少し高くなるように盛ります。これは、根の生え方を観察すると分かるのですが、樹の根というのは、外側へ外側へと伸びていく性質があるため、幹の真下に空間ができていることが多く、植え替え時にその空間に新しい土が隙間なく入るようにするためです。

【ブランド土】f:id:katsuo_24:20180311124904j:plain

アカデミーでは実習での植え替え用に土もご準備いただいております。この土ですが、通称「二本線」と呼ばれる土だそうです。この土は少しお値段も高めのようですが、安い土に比べて硬く、鉢に入れて1年たっても粒が壊れにくいので水はけや通気性が良いようです。切れる鋏と土、これだけは盆栽を手入れする上で安物買いの銭失いにならないよう気をつけたいものです。昨年、土の入手に色々ネット探してみましたが、重たいので土の購入はネット通販も有難いですね。(あまり量が多いとベランダでは土の置場にも困りますが。)

  【根の手入れ】

 植え替えのタイミングでしかできないことがあります。さて、それは何でしょう?

A.鉢に隠したへそくりを探す

B.根の健康状態を見る

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アホなこと言ってないで、さっさと「根の健康状態を見る」を実施しましょう。このとき、臭いも確認してみましょう。カビ臭くなければ健康だそうです。

そして、根をほぐします。竹の割りばしを使ってほぐしますが、まずは裏側からぐりぐり。ある程度ほぐれたら、樹の内側から外側に向かって少しずつほぐします。この時に、根ばかりに注意していると、うっかり花芽や小枝を傷つけてしまいますので、幹の根元を持って注意しながら作業します。

もし、根に瘤(こぶ)を発見したら切り除きます。これは「根頭癌腫病(こんとうがんしゅびょう)」という病気だそうですが、切り落とすのが一番とのこと。外科手術ですね。 

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ある程度ほぐれたら、長く伸びた根を切り詰めます。樹は細かな根から水分や養分を吸収しているので、細かな根よりも、太く長い根を切るのだそうです。長くて太い根は重要そうに見えるので、残さなくちゃと思っていましたが、きっとここが素人の勘違いポイントなのでしょうね。

 【新しい土を隙間なく】

 さて、植え替えも終盤です。さっぱりと手入れされた樹を、新たな鉢に予め決めていた正面と鉢の正面を合わせてセットします。位置が決まったら、鉢底からニョキっとだしていたあの針金で樹を鉢に固定します。このとき、「やっとこ」という面白い名前の盆栽用ペンチで針金を挟み、引っ張って捩じりながら締めていきます。同じ針金同士で結束しないと針金が緩むというのはここで実感できますね。やっとこは、盆栽を傷つけないような優しい形状になっているのが工具用ペンチと異なるところです。f:id:katsuo_24:20180311132215j:plainなぜ針金で固定するのかって?いい質問です。鉢植えは深い鉢なので、土も沢山入り、その重さで安定しますが、盆栽は鉢も薄く、土の量もあまり多く入れられないので、万が一強い風や衝撃で倒れた場合、鉢から樹が抜けてしまう恐れがあるからです。これって盆栽特有の方法ですね。ちゃんと固定すると写真のように持ち上げられちゃいます。

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針金での固定が済んだら隙間に土を入れていきます。この時にも竹の箸が大活躍!隙間なく土を根の間に入れこんでいきます。箸をグリグリ動かしたり、鉢を拳でトントン叩くと意外に土が入るものです。どこまで入るか、まるで詰め放題にチャレンジのようです。最後にピンセットに付いているヘラの部分で土をならして完成です!

【では、ご自分で】

皆さん、ご自分の桜を植え替えてみましょう~ となりましたが、見るのとやるのは大違い。「マジか!」と焦らなくても大丈夫です。インストラクターという強い味方が手助けしてくれます。

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 △網を止める針金の曲げ方をインストラクターの手元を見ながら一緒にやってみました。

f:id:katsuo_24:20180311135806j:plain時間の都合でなかなか慌ただしい作業になりましたが、皆さん無事に植え替え完了できました! 

 【休息の場所へ】

 受講生の方々は実習の後、それぞれ自分が植え替えした河津桜の鉢を大切に抱え、培養所に運びます。 

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植替えした後は、たっぷり水をあげます。鉢底から最初は濁った泥水が流れますが、これが透き通ってくるまで水をあげます。泥水が溜まると土が固まり、腐ったり病気になったりしてしまうので、水はたっぷり与えます。

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ちょうどこれから開花の時期ですが、植え替え直後は樹にとても負担がかかっている状態なので、この培養所で盆栽美術館が3月の最後の講義まで預かってくださるとのこと。その間に自宅で受け入れ態勢整えたいですね。3/10以降は持ち帰ることができるとのことでしたので、ご自宅で早速鑑賞されていらっしゃるでしょうか? 

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 △初回の実技で手入した五葉松の盆栽(左奥)と今回植替えした河津桜の盆栽

 

【おまけの疑問】

 なぜ植え替え必要なの?と思う方もいるでしょう、そりゃそうですよねー。ズボラ派の私も、面倒なことはやらずに通り過ぎたいところです。

ちょうど盆栽の特集番組を見て知ったのですが、盆栽は小さな鉢の中で日々成長を続けています。そのため、何年か経つと根が鉢の中でパンパンになってしまうのです。生きている証拠ですね。伸びた根を切ることで、新しい根が生えてきて、成長も促されるようです。盆栽の不思議な魅力を科学的に検証したとても面白い番組でした。

 インストラクターの先生のお話では、水をあげたときに染み込まずに溜まってしまうようになったら植え替え時期とのこと。大体2,3年に一度くらいのペースだそうです。

てなわけで、私も自宅の盆栽ちゃんの植替えそろそろやってあげなくちゃ。

 

【お知らせ】

このステキな盆栽アカデミーの初級コースが本年度も開催されます!募集期間は3/21(水)必着です。ぜひ盆友になりましょう~!