中級、実技シリーズ <エピソード1 ~運命の出会い~>
いよいよ、中級コースの実技が始まりました。一年を通じて同じ素材を用いて指導を受けながら、その時期に適した手入れ学んでいきます。実技のエピソードとして記録していきたいと思っています。(ちょっとアメリカのドラマみたいなタイトルで盛ってますが)
【準備万端】
ちょっと早めに着き教室に入ると、講師陣がミーティングをされていました。本日の実技講座の進行方法や注意点などお話しされていらっしゃるのでしょう。一方で机の上には一人ずつ実習用の真柏(しんぱく)の苗木と道具が早くも準備されています。
▽各自の席に用意されているお道具セットとレジュメ
本当に至れり尽くせりで準備してくださっているので、自宅で自主練するときにアカデミーの準備の有難さがよーくわかります。本日もよろしくお願いします!
【パートナー選び】
席は先着順で好きなところに座ることになっていたので、自分のパートナーとなる樹を選びます。ボサボサ状態の外観で苗木の良し悪しがそんなに分かるわけではないものの、アカデミー初級を終えて展示会でも良い盆栽を少しは見てきたので、ここは選択眼が問われるところとばかり、鑑定団になったつもりで選びます。この樹と今後1年間実技で絡み、その後もお世話することになります。ゆっくり素材と対話する時間はないので、一目惚れで選びました。さて、運命はいかに?
受講生の皆様もそれぞれ苗を選び、熱心に色んな角度から眺めて早くも正面を検討しているようでした。さすが中級、指導前から皆様積極的に素材と向き合っています。おっと、まずは手入れする前の姿を撮っておかなくちゃね。
【本日のメニュー】
中級コースも、お馴染みの原師匠(インストラクターの先生です)の講義で安心です。今日のキーワードの板書と樹形作りの見本もご用意くださっており、分かりやすいです。中級コースでは真柏を使った実習で学んでいくようです。本日は樹形作り三要素、①切る②曲げる③傾ける、の中の「切る」作業で、「剪定と正面を決める」をメインとして進めていきます。
素材は「真柏(しんぱく)」です。真柏はヒノキ科で別名ミヤマビャクシンと呼ばれ、北は北海道、南は屋久島まで日本全域に広く生えているそうですが、盆栽で良く知られているメジャーな真柏といえば糸魚川真柏(いといがわしんぱく)で、緑の細かな葉性(はしょう)が特徴です。五葉松と違って、手入れで細かなことは気にしなくていいようです。ズボラな私向きです。
【デモンストレーション、まずは輪郭づくりから】
初級でやった剪定方法をレジュメで復習しながらさっと解説いただき、早々にデモンストレーションです。百聞は一見に如かずとはこのこと。やはりライブで手入れ方法を間近に見られるというのは、何よりも参考になります。
まずは、徒長枝(とちょうえだ)と呼ばれる、飛び出た枝や基本的な余分な枝を落としていきます。大まかに切っていくとある程度樹の輪郭が見えてくるため、正面も決めやすくなります。
真柏の剪定は初めてなので、初級コースで扱った五葉松と違う鋏の入れ方を教えていただきました。真柏は鱗片状に新芽が出るため、斜めに鋏を入れる必要があるとこのと。
真横に鋏を入れると切り口から枯れてしまうことがあるようです。これは覚えておきたいポイントです。
【細部の処理】
徒長枝を落とした次は、忌み枝(いみえだ)と呼ばれる、不要な細かな枝を切っていきます。閂枝(かんぬきえだ)、車枝(くるまえだ)、脇枝(わきえだ)、下り枝(さがりえだ)といったごちゃごちゃに見えている原因の細い枝を切り、スッキリと整えていきます。細かな枝を整理しつつ、正面を意識して幹や枝ぶりが見えるように小枝の剪定を行っていきます。もうこれだけでも盆栽っぽくなっています。なんたって早い!そして解説しながら受講生側に手元を見せながらって。難しいだろうなぁ。。
▽上記デモで原師匠が徒長枝や忌み枝を処理した段階
原師匠のデモンストレーションの後で、早速各自の素材のお手入れです。皆様、真剣に自分の真柏と向き合っています。正面はどこにするか、角度はどのようにつけるか、どの枝を残すか、、インストラクターの方々に相談しながら作業を進めます。自分のやり方でいいのか、この枝を切っていいのかと、やっぱり相談したくなるのでインストラクターの方々のサポートが心強いです。
初級コースでは「切る」だけで精一杯でした。まだ「切る」のも自信が持てないので、恐る恐るという感じですが、それでも実際にいくつか手を入れているとだんだん「この枝要らないな」と見えてくるようになった気がします。やみくもに切っていたときと、考えながら切るという違いが少しだけ成長した気がします。なんてね。
【迷ったら切らない!】
皆が作業に没頭していると、原師匠が「迷ったら切らないでください」と仰いました。これ、重要です!原師匠がてきぱきと見事な手さばきであっという間に次々と枝や葉を剪定していく姿を見ていると、つい自分が上手くなったような錯覚に陥ってしまい、自分もチョキチョキ切ってしまいそうになります。当たり前ですが、何十年も盆栽歴がある師匠と1年しか盆栽触っていない自分が同じようにできるはずがないのです。ここで、我に返って、焦らずに将来の盆栽の姿をイメージしながら、一つ一つの作業をやっていきたいところです。
>>>エピソード2へ続く
【おまけ:梅花の見分け方】
講義の途中で、原師匠が「梅の花が咲くかどうかの見分け方」を教えてくださいました。これは見ただけでは分かりにくいので、実際に見本を各テーブルに回して触らせてくださったのですが、葉を触った感触がザラザラしたしたものは花が咲かず、ツルツルしたものは花が咲くそうです。同じ樹でもザラザラとツルツルがある場合もあるのだと。メモメモ。
△この見本では、左側の葉がザラザラ。手が触っている右側の葉がツルツルです。
テキストには載っていませんが、時間内に少しでも受講生に生きた盆栽の知識を授けてくださることにも感謝ですね。