ギャラリートーク「貴重盆栽」の巻

【GT初参加】

先月、友人がGTに参加するというので、私も一緒に参加してみました。グレートティーチャーではなく、「ギャラリートーク」です。寒いですか。そうですか。

 毎月、盆栽美術館ではギャラリートークというイベントが開催されています。その時の展示に合わせ、盆栽師さんや学芸員さんが鑑賞方法やバックグラウンドを解説しながら盆栽を鑑賞できるので、一人で鑑賞するよりも格段に中身の濃い鑑賞ができます。

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300円という入場料だけで、普段の展示鑑賞に加えて専門家のギャラリートークも聞けるので、タイミングを合わせて遠方からいらっしゃる方もいるようです。今回は「貴重盆栽」のギャラリートークです。

【専門家の解説は、お得感満載!】

館内アナウンスがあり、開始時刻に盆美のロビーに集合すると、結構な人数が集まっていました。本日は学芸員の田口さんにご案内いただきます。

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当日、盆美ロビーに飾られているのは花梨でした。お正月のバラエティー番組の格付けチェックでは、花梨の冬の姿でしたが、今は緑が生い茂る瑞々しい姿です。私も1年前は花梨が盆栽になるとは全く知らなかったのですが、冬の姿を見ると、まあ惚れ惚れしちゃいます。

さて、この花梨、実は「貴重盆栽第1号」だそうで、盆栽美術館のロビーでは3日間だけの展示とのことです。それこそ貴重な機会に見ることができました。

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【どれもが貴重盆栽になれるわけじゃない】

「貴重盆栽」という制度は1980年に登録制度が始まったそうです。約40年前なので、盆栽の歴史に比べたら比較的最近の話ですね。盆栽園や国風展で時折「貴重盆栽」という文字を見かけておりましたが、どういう盆栽が貴重なのか疑問ですよね。

登録されるためには次の3つの条件があるようです。

その1)樹形が素晴らしい

その2)樹齢が長い

その3)所蔵歴が良い

とのこと。さて、順にみていきましょう。

 その1)樹形が素晴らしい

見たままで分かるポイントです。樹形(じゅけい:正面から見たときに「ようこそ」と両腕を広げているような姿で、横から見たときに頭と呼ばれる盆栽の一番上の部分が少しお辞儀をしているように見えるものが良い)、根張り(ねばり:根がどっしりと広がっている)、立ち上がり(根元から幹にかけての大元部分)、幹模様(みきもよう:幹が描く曲線)、コケ順(こけじゅん:下から上に徐々に幹が細くなり、大木感が出ている)、枝配り(えだくばり:枝が交互に出て奥行きもあり、立体感がある)、葉性(はしょう:小さく、盆栽全体が大木に見えるようなものが良い)といった数々の評価点をクリアする必要があります。

その2)樹齢が長い

これは先の授業でもやりましたが、正確な樹齢は分からないため、「推定樹齢」としてカウントされています。こちらの花梨は、推定樹齢150年だそうです。人類より長生きですね。戦争も生き延びて代々受け継がれてきたというだけでも貴重です。大事に日々管理されてきた方々の努力の積み重ねがあってこそです。そもそも花梨の寿命って何年くらいなんでしょう?自然界の樹木も何百年と生きられるものはあまりないでしょう。神社仏閣だと御神木のような古くて大きな木を見かけますね。普通はそのように大きくなってしまう樹木を、盆器の中で100年も育て続けることがいかに凄いことかと改めて驚きます。

その3)所蔵歴が良い

こういう基準もあるのですね。。となると、私の盆栽はきっと100年後くらいに「貴重盆栽」に登録されるでしょう。ふふふ。という妄想はさておき、こちらの第1号の来歴を聞いて思わずははーっ!と頭を下げてしまいそうです。まず、戦前にさかのぼります。根津嘉一郎氏(根津美術館の設立者)→佐藤栄作氏(元首相)→岸信介氏(元首相、安倍首相の祖父、日本盆栽協会初代会長)と流れてきて、現在は大宮盆栽美術館の所蔵です。文句のつけようがございません。ううむ、そうそう簡単には貴重登録されないものなのですね。

 

さて、もう一度、この貴重盆栽第1号の花梨を、下から見上げるようにじっくり見てみましょう。

f:id:katsuo_24:20180621101422j:plain推定樹齢150年、どっしりと大木感が出て風格文句なしですね。

 

この後、展示室に飾られていた貴重盆栽を一つずつ丁寧に田口学芸員が解説いただきながら鑑賞しました。展示室の説明や盆器や添えの説明など、貴重なこぼれ話が盛りだくさんです。覚えきれなくてもなんだかすごい感が感じられます。はは、私のような小市民はそんなもんでいいでしょう。

貴重盆栽にはブーゲンビリアの盆栽というような変わったものもあります。今後、貴重盆栽というものを見かけたら、上記2つのポイントは見た目でなんとなく分かっても3つ目の所蔵歴は一見して分からないから難しそうです。

現在、全国で1215点の貴重盆栽があるそうです。中には残念ながら枯れてしまったものもあるそうですが、見かけたらお話し伺ってみたいですね。

【貴重盆栽だけじゃない】

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こちらは、お庭に飾られている真柏で「武甲(ぶこう)」という銘がついた盆栽です。これも文句ない見事な作品で、撮影可能エリアに展示されている時はラッキーですね。良いものをたくさん見る。これで私の鑑賞眼も少しずつ養われていくのであーる。

 

【おまけ】

盆栽美術館ではロビーや展示室、庭園だけでなく、ちょっとしたところにも盆栽が飾られています。男性用御手洗い前の飾り棚は、ひそかにチェックポイントです。

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この日の盆栽は、高さ20cmくらいの夏草の寄せ植えでした。照明もあるので、立派な飾りに見えます。展示室の盆栽は大品が多くて圧巻ですが、この場所では小品や草ものが飾られているので、ほっこりしますね。