中級、実技シリーズ <エピソード3 ~45度の躾~>

ちょっとアップ遅れてしまいましたが、いよいよ、中級の一番大きな?実技トピックの「針金掛け」の基礎編です。先輩方からすると、これをやらずして盆栽を語ろうなんざ、100年早えよ!ってな感じでしょうか。 ▽針金掛けの色々見本

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針金を掛けるとなるといよいよ「盆栽やってるねー」みたいな、ちょっと自尊心くすぐられる技なので、この一歩は初心者でもぜひチャレンジしたいところです。

 【準備万端!】

今回も実技用に各自のテーブルに道具と素材が用意されていました。毎度スタッフの方々のお気遣いに感謝です。もちろんですが、今回は針金切り(左写真のピンセット右隣)があります。盆栽用の先端が丸いものは持っていないので、私が次に欲しい道具の一つです。 

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 【赤松と黒松の違い】

今日の素材は黒松くんです。小さな苗だと見分け付きにくいのですが、赤松と黒松の違いは、芽の色で判断できるようです。赤松の芽は赤っぽく、黒松の芽は白っぽいのです。これも実物見比べるのが一番手っ取り早いです。(写真がなくてすみません。ネットで探してください。←得意の放り投げ)

「短葉法(たんようほう)」という作業を赤松も黒松も行いますが、これは初級コースで既に習っているので、今回はやりません。どうやら同じ素材で初級コースの方が練習するそうです。短葉法は、赤松は6月中に、黒松は6月下旬から7月上旬に行うのが良いとのこと。その後、秋に新芽が同じところから3つ以上出て来たら、新芽を2つ以下に切り取る「芽かき」という作業を行います。

盆栽って、なんでこう、専門用語が多いんでしょうねぇ。未だに私は使い分けられません。「長くて強い芽は切る」「先端は二又にする」だけでもいいんじゃないかと思っています。

【樹形づくり、作業の三要素】

盆栽の全体の形を整える作業として、①切る②傾ける③曲げる、という3つの要素があげられるようです。これまでの実技で、剪定して樹形を作る「切る」作業と、植え付け角度を変える「傾ける」というのは初級でやりました。

中級では、針金を掛けて「曲げる」作業を学びます。この曲げるという作業がとても重要で、「形小相大」を表現して盆栽らしくなるポイントです。

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針金掛けは、素人が見ると「痛々しい」と不自然さを感じてしまうかもしれません。実際、私も盆栽を始める前はそう思っていました。しかし、これをペットの躾と思えば、似たようなことかもしれません。庭木や街路樹も剪定して人間の都合によって手を入れています。愛情をもって「こんな風に成長してね」という気持ちを込めて剪定や針金掛けを行うのです。原師匠がご自分の指に針金を巻いて、針金を巻く強さは、自分の指に巻くくらいの強さだと目安を教えてくださいました。人が痛いものは木も痛いのね。

【生木でやる前に】

まず、練習用として各自のテーブルに用意されている二又の枯れ枝に針金を巻いていきます。ここで注意したいのが、斜め45度でピッチを同じ間隔で巻いていくということです。ピッチとは、幹や枝に巻いた針金と針金の間の幅です。分かれた枝に針金を掛ける場合は、先にかけた針金の上にクロスしないよう、添わせるように巻いていきます。

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これを右巻き、左巻きと巻く方向を変えて練習しますが、右利きの人は右巻きがやりやすく、左利きの人は左巻がやりやすいようで、盆栽の流れ方も右利きの人は右に流れる作りになりやすいらしいです。私もどうも右流れの方が落ち着くのはそうした癖からなのでしょうか。

【師匠のお手本です】

今回の苗木は、針金掛けは初めての方にもやりやすいように選んでくださっています。まず、幹に針金を掛けるために、針金の先端を幹の根元に45度の角度で差し込みます。

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その時、土が固くて直接針金を差し込めない場合、太めの針金で先端を鋭利に切ったものを予めグリグリと差し込み、穴を開けてから矯正用の針金を差し込みます。長いネジを入れる前にキリで穴を開けるようなイメージです。

針金を幹に巻き付けるときは、針金を持っていない方の手で幹と針金をしっかり固定させて握るのがポイントです。ここをしっかり握らないと、巻き方が緩み、針金が浮いてしまい、結果として曲げの力がうまく木に伝わりません。根元の部分が特に重要だそうです。

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ピッチを同じように、45度の角度でぐるぐると巻いていきます。巻き終わりは、今年の新芽(青々と色が違うので分かりやすいです)の手前までです。巻きたい幹や枝の長さの約1.5倍の長さの針金を用意し、巻き終わりは幹に絡み付け、見栄えも良くするために裏側で切ります。

【右巻き、左巻き、引掛ける、そしてジンにも】

見本の鉢では、針金が右巻きと左巻きがあります。これはなぜ??と思っていたところ、盆栽の中心となる幹から右側に生えている幹は右に曲げて広げていき、左側は左側に広げていき、全体的に空間を作っていくためとのこと。曲げたい方向を予め決めておき、曲げが効きやすい方向に針金も巻くのだそうです。

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やりやすいので、うっかり全部右巻きにしちゃうところでした。

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△こちらは見本。針金を掛けたい枝は反対側(ピンボケ部分)の枝なのですが、針金を固定させるために引掛ける枝をあえて全部切り落とさずに残しています。

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△これはジン(枝先が白く枯れた部分)に針金をかけた見本。ジンを作った時に同時に針金掛けも行います。硬くなってしまってからでは曲げられなくなってしまいます。

また、写真はありませんが、曲がった枝に針金を掛けるときの注意として、曲がっている頂点部分に針金がかかるようにし、その枝を曲げたときに緩まないようにするのもポイントとのことです。

 【皆でぐるぐる】

さて、師匠のお手本を見た後、教室では各自が針金掛けにチャレンジです。今回の素材は一鉢に苗が何本も寄せ植えされています。

まず、正面を決めますが、これは中でも太くて主役になりそうなものを1本選び、その幹が見える面を正面とします。次に、中心部分の太くて長い苗から周辺の細い苗の順に針金を掛けていきます。針金を土の深くまで差し込みますが、差し込む位置は、正面から見えない方、つまり、裏側に45度の角度で差し込みます。かなりグイグイ土に差し込みますが、その時根を痛めることになっても大丈夫だそうです。強いですね。

そして、主役より右側に生えている苗は右巻きに、左側に生えている苗は左巻きにぐるぐる。枝がないので、真っすぐ1本の針金だけで割合簡単ですが、本数が多いので、良い練習になりました。

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ビフォーアフターを記録したら、癒しの培養所へ】

さて、私の黒松君もおそまつながら針金掛け完了です(また寒い風が。。)。何も切っていないのですが、針金掛けて姿勢を整えるだけでなんとなくスッキリ見えるから不思議です。

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針金をぐるぐるした後は、さすがに黒松君といえど、突然の躾に驚いてしまっているので、水をたっぷりあげて培養所で休養させます。お隣では、同じアカデミーの方々の紅葉が青々と茂っておりました。こちらも成長が楽しみですねー。

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【夏仕様】

一方、盆栽アカデミーの会場がある大宮盆栽美術館のお庭では、この時期の風物詩?寒冷紗が、ちゃんと設置されています。

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葉や根を切ったり、少ない土で育てたりと、大変窮屈な思いをさせてしまっていますが、天然では寒冷紗も栄養も無いので、たとえ針金掛けて姿勢をキリリと躾けられても、やはり盆栽ちゃんたちはセレブ扱いで、大切にされていますね。

 

【おまけ】

今回の実習中に、ひょっこりカマキリちゃんが参加していました。どこからともなく現れた爪の先ほどの大きさのカマキリちゃん。柔らかそうな若草色でなんとも癒されます。私たちのテーブルでちょっとした人気者でした~

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