変化する水石、瞑想の旅(前編)

盆栽アカデミーの中級コースでは、盆栽だけでなく「水石(すいせき)」と呼ばれる石の鑑賞についても講義があります。箱に銘まで入って、骨董品のような雰囲気満点! 

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とはいえ、石でしょ?盆栽ですらまともに出来ていないのに、まだまだそこまで行けないなー。という、ちょっとした抵抗感のようなものがありますが、今回の講義は、新たな世界を垣間見られそうです。

【美術品?それともただの?】

水石って、やっぱりお高いんでしょう??と、小市民は思いますよね。(←なぜか同意を求める)お値段は私には不明です。まあ、需要と供給のバランスと言ってしまえばそれまでのことでしょうが、盆栽と同じで、銘がついた有名な水石もあります。一番古いものは、徳川美術館所蔵の「夢の浮橋」という盆石(ぼんせき:水石と呼ばれる以前の呼び名)で、後醍醐天皇の所蔵だったようです。有名な盆石は銘でググってもすぐ出てきますね。

以前から気になっていた水石の下の板は、石の底にチョークをつけて、何度も何度も当たる部分を削って精緻に凹凸を石の形に合わせて一つずつ特注品として作るそうです。▽見本の水石

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石の底を平らに削ってしまうと、水盤に飾った時に沈んでしまい、氷山のように下に続いている感じが損なわれてしまうので、あえて石は凸凹を残し、台座の方を削って合わせるとのこと。特注の台座をあつらえてもらえる石も幸せ者です。ただの石と水石って何が違うんでしょうか。

 【水石とは山水情景石】

京都の竜安寺石庭は、日本人だけでなく、世界で有名な禅のシンボリックな石ですが、庭に石を配置して山や川などの風景を感じさせるものだけでなく、盆栽のように床の間に飾って鑑賞する「水石」は、心象の世界を楽しむ文化だそうです。

つまり、木々などの植物や滝や川などの自然は移ろいやすい風景ですが、同じ自然を構成するものの中でも、石という時間の変化がほとんどないものは、「不変のもの」として信仰の対象だったようです。こう語るのは、日本水石協会の事務局長、森前誠二氏。

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水石の魅力を歴史から鑑賞方法までたっぷり講義してくださいました。

【日本にもあったストーンサークル

イギリスのストーンサークルは有名ですが、日本にも縄文時代にあったそうです。スライドで森前氏が紹介してくれました。驚きです!石を円形に並べるって、古代からパワースポット的な場所だったのでしょう。

【歴史と共に日本独自の美意識へ】

飛鳥・白鳳時代を経て、乱を逃れてきた百済人により、仏教と共に文化が日本に本格的に普及しました。その後、奈良時代には唐の宮廷文化の模倣がされ、そこから日本独自の自然信仰の思想で、平安時代にあの世を表した浄土式庭園が広まったとのことです。と、あっさり書いていますが、ものすごい時代の流れがあったことでしょう。はたして「あの世は豪華絢爛」という唐の文化から、「広々として静か」という日本人の美意識?がどのように育まれたのか、、歴史好きにはたまらない想像力をかきたてるドラマがいくつもありそうです。

【現代の水石へ】

その後、東山文化から室町・安土桃山時代で「侘び」「寂び」という美意識が形成され、茶道具のひとつとして盆石(水石と呼ばれる前)が小堀遠州らによって広められたとのこと。江戸時代には煎茶道と共に、明治から昭和にかけては、盆栽の広がりと共に水石も広がってきたようです。へぇー、盆栽と水石って、歴史上似たような変遷をたどっているのですね。だから対と言われているのでしょうね。

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△庵のような形をした水石、丸みを帯びているためか、無機質な石でもなぜかほっこりとした温かみを感じるのが不思議です。

森前氏のお話は、たっぷりの知識はもちろんのこと、楽しそうにお話しされる姿から水石愛が伝わってくるので聞いている方もついつい引き込まれます。やっぱり水石もいいなぁ~と、いつの間にか水石ワールドに入っているのです。

                       

                         (お楽しみの鑑賞は後編で!)