ちょっと背伸びの中級コース、始まりました。
昨年から始まった盆栽アカデミー、今回も抽選でしたが、なんとか2度目のチャレンジで当選し、中級コースに行けることになりました(今回も2倍の倍率だったそうです)。これはブログ続けなければ、落選してしまった方に申し訳ない、、と誰に言われたわけでもありませんが、自分で圧をかけて頑張ります!
久々に受講生として教室に入ると、やっぱりワクワクします。そして、初級コースで同じクラスだった方や、モニター取材でお伺いした初級コースの方がいらしたので、お顔は分かりますがまだお互いよく知らないという、ちょっと恥ずかしいけどよろしくね、という感じが中学時代の進級したときの感覚に似ています。
【重みのあるお言葉】
さて、ほぼ1年ぶりの開校式です。今年から着任された大宮盆栽美術館副館長の栗澤氏(下写真左)の爽やかで丁寧なご挨拶に続き、大宮盆栽協同組合の浜野理事長(下写真右)のお話は背筋がしゃきっとしました。「中級となったのならば、盆栽園に実習に行ったとき、単に教えてもらうことを待っているのではなく、自ら質問して学ぶ姿勢を持つように」 とのお言葉。
中級コースでは、終盤に実際に盆栽園に出向いてご指導いただく実習の回が設けられています。盆栽園にはプロを目指すお弟子さんや盆栽教室の生徒さんたちがいらっしゃいます。彼らはすでに何年も盆栽園で盆栽のお手入れをされているのです。盆栽歴1年そこらの輩がポンと「アカデミーの中級でーす」なんてズケズケ入ってきたら、それは「勘違いしてんなヨ」って思われても仕方ありません。技量が彼らに遠く及ばないことを自覚しつつ、謙虚に学ぶ姿勢を持ち続けていたいと思います。
【第1回講師は公務員盆栽師】
中級コース第1回目講師の中村さんは、盆美の盆栽師でありながら公務員でもある方で、清香園(せいこうえん)という有名な盆栽園で6年間修業を重ね、盆栽師として技術をもった方です。公務員盆栽師という肩書は世の中にたった二人だそうです。特技で貢献できるってとても素晴らしいですね。
毎月第二日曜日の午後は一般の方々の「盆栽相談デー」に中村さんはじめ、指導くださる方がいらっしゃるようなので、ワークショップや初級コースで作った盆栽を持っていけば具体的にご指導いただけるとのこと。困ったときの駆け込み寺があるというのは心強いです。
さて、講義へ移りましょう。
【改めて樹齢とは】
「樹齢」って、例えば「この樹は樹齢300年で…」という説明を何気なく聞いてへぇーって思うだけでしたが、これはそのまま樹木の年齢のことです。樹齢を正確に特定するのは難しいため、最近では「推定樹齢」と表記するようにしたとのことです。躯体や太さ、樹の種類などから樹齢を推測するようですが、実際に過去に枯れてしまった盆栽を輪切りにして年輪を数えたところ、推測値と近似だったので、現在でも推定方法として用いられているようです。
△年輪の見本として紹介してくださいましたが、この切り株自体が見事で美術品のようです。(年輪が確認できるのは写真上部の切断面)できる限り長生きしてほしいのですが、森羅万象命には限りがあります。樹木も呼吸して生きているので、永遠というわけにはいかないのでしょう。
昭和初期の頃、山に自生していた姿の良い樹木を根から採って盆栽にしたものが「山採り(やまどり)」と言われて多く流通していたようです。自然に生えていたものですから、樹齢も曖昧になるのは否めませんね。現在、山で勝手に樹木を採取することは禁じられていますので、私たちが盆栽園で気軽に買えるようなものは、かつて山採りされた盆栽から挿し木や接ぎ木で増やされた子孫がほとんどのようです。糸魚川真柏(いといがわしんぱく)は代表的ですね。ペット業界でいう血統書みたいなものでしょう。
【持ち込み】
盆栽用語は色々聞きなれない言葉が良く出てきます。今回は「持ち込み」という言葉。昨年まで聞いたこともありませんでした。盆栽の培養年数の基準用語(盆栽大辞典)とのこと。「持ち込みが良い」「持ち込みが古い」という使われ方をするようです。
例えば、「持ち込みが古い」というのは、「盆栽鉢に植えてから長年経過していること」を指すようです。どうしてそのような語源なのかは不明ですが。「持ち込みがいいねぇ」なんて盆栽見て言ったらツウっぽく思われること間違いなしですが、私のような素人が迂闊に使って実際は持ち込み年数2,3年だったらちょっと恥ずかしい思いをしそうです。
△推定樹齢70年~80年程度の山もみじ
長く持ち込んだ盆栽は、自然に品位が備わって、幹や枝、葉の味わいに、侘び、寂びがにじみ出てくるため、持ち込みの古さが尊ばれるとのこと。なるほど、一朝一夕にはいかないものだからこそ、価値も高くなるのでしょうね。
講義では、いくつかの盆栽の昔の写真と現在の写真を比べてひとつずつ丁寧に解説してくださいました。樹種によって持ち込みの特徴(経年変化)が異なる点が面白かったです。共通するのは、どれも元々山に生えている自然の樹木ですから、盆栽として鉢に植えて手入れをしなければ高さ数メートル、幹回りも何十センチと成長してしまいます。そこで、盆栽として何十年も小さく形よく育てるためには技術が必要になってくるというわけです。その技術を習得された方々が盆栽師としてご活躍されているので、今日まで貴重な盆栽たちが枯れずに受け継がれてきたのですね。
今回の見本として中村さんがご用意してくださった「山もみじ」は、樹の高さに比べてとても薄い盆器に植えられており、根張り(ねばり)がどっしりとして幹のコケ順も良く、枝が密に出て小さな葉もたくさん茂っているので、見事に大木感が出ています。この盆栽を間近で見上げるとまるで大木の下にいるようです。
これだけ薄い盆器にいれるため、相当底根(そこね)を追い込んだとのこと。(盆栽用語で「追い込む」というのは切り詰めること)植替え後に重要なのが水やりだそうです。水やりは簡単そうで奥が深いようです。
講義後にこの盆栽に近づいて観察しましたが、受講生たちの中にはすでにボランティアとして活躍されていらっしゃる方もおり、中村さんへの質問が高度で驚きました。まだまだ未熟者ですが、皆さんに付いて行けるよう復習しまーす!
【盆栽と庭木の違い】
帰宅後、家の小さな庭に植えてあるもみじと葉の大きさを比べてみました。「持ち込みが古い」もみじと庭木のもみじ、明らかに葉の大きさが異なります。ミニチュアとして品種改良されたものではない、という点が盆栽師の方々の驚くべき技量です。
△盆栽の葉 △自宅の庭木の葉
とにかく、盆栽は実際に手入れしないと分かりません。そして、多くの良質な盆栽を見ることも、知識を得ることも重要だと実感できたことが初級コースを終えた自分の一番大きな成長でしょうか。中級コース、少しだけ背伸びが必要なのでブログ内容も少しだけ堅苦しくなりそうですが、備忘録としてお付き合いいただけますと幸いです。
【おまけ】
さて、私が目指すのはやはり「お気楽盆栽生活」なので、素人がやってみたなんちゃって盆栽をご紹介。昨年の7月に八ヶ岳で購入した萩の苗を盆栽として自主練したものです。一番左が花が終わった直後の苗(2017/7)、真ん中が植え替え後(2017/7)、右側が針金掛け(2018/3)後に新芽が出たところ(2018/4)です。この後針金を外しました。暖かい日が続いたせいでしょうか、早くも満開になったので玄関に飾ってみました。
完璧ではなくても、苗から自分で植えて成形したものに花が咲いて見頃を迎えられたのが嬉しいです。この喜びが盆栽の楽しさでしょう。うーん、こうして見ると左側の枝は切ってもよさそうですが、まだ勇気出ません。ここが素人っぽいですね。