水石遊びでほぐす石頭(後編)

さて、水石の歴史を学んだあとは、実物を使ってデモンストレーションいただくお楽しみの鑑賞です。なかなかライブでは見ることがない、水石の展示方法や鑑賞方法をご紹介いただきました。

 【精神統一の作業】

教室前方でアシスタントの方が、水石を飾る鉢を用意しています。水盤一面に張った砂を刷毛で丁寧にならしています。水石の展示は見たことがありましたが、事前の作業を間近で見るのは初めてです。刷毛でならすのかー。ほうほう。

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滑らかな手つきで左右に刷毛でならすというのも、意外に難しそうです。なんとなく、書を書く前の墨を磨る(する)ような、精神統一の作業を見ているようです。

▽ささ、こちらが、水石を配置した水盤でございます。どうでしょう。雲海に浮かび、朝日に赤く照らされた山のように見えてきます。この背景に朝日の掛け軸を掛けてくださいました。

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▽そして、背景の掛け軸を変えると、あら不思議、雨に洗われた紅葉の山々がそこに現れます。(奥)

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 【鑑賞方法は遊びのこころ】

石の向きや角度を変えることによって、見える風景も違ってきます。森前氏でも悩むそうです。何が見えるかを楽しむことが水石なのでしょうから、「こうでなければいけない」と堅苦しく決まっていないところがいいですね。

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△卓(しょく)の高低差を利用してジオラマのような風景を演出することもできます。 山の麓にぽつんと佇む古い庵の風景が感じられます。 

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△単に石だけを鑑賞するだけでなく、小さな庵の置物を石の上に置くだけで、その石が山となったり海辺の岸壁になったり、と、様々な景色が浮かんできます。盆栽同様、デジタル時代の今日になんとも優雅な遊び方ですね。

【水石の発見方法】

水石は、盆栽と違って成長しないので、新しい水石はどのように入手するのかと不思議になりますよね?それは、ズバリ「河原で拾う」という、子どもの遊びのような見つけ方だそうです。水石協会が国交省に問い合わせをしたところ、日本の河川で、景観を損ねない程度(リュックに入れて手で持ち帰れる1,2個くらい)であれば、河原で石を採取しても良いらしいです。営利目的としない趣味の範囲内でねってことでしょう。

水石の展示で気になっていたことがもう一つ、「花崗岩(かこうがん)」とか「石灰岩(せっかいがん)」という鉱物の種類で呼ぶのではなく、「賀茂川石(かもがわいし)」「鞍馬石(くらまいし)」という、良く聞く河川や地名の名前で表示されているということ。水石は河原の石ころなので、採取地で表すそうです。そうした呼び方の方が由来も分かるし、展示した時も風流ですね。

【石が変化する?】

生きた芸術の盆栽と違い、石って変わらないものだと思っていませんか?ですよねー。普通。しかし、石も長いながーい年月をかけて徐々に風化され、変化するようです。驚いたのは、水石は押入れにしまっておいて、飾るときだけ「よいしょ」って出すものだと思っていたら、なんと、水石も盆栽棚のような屋外の雨水が当たる場所で割りばしなどの上に置いて管理するとのこと。「養石(ようせき)」といいます。自然の風雨に晒して、何年もかけて味わいを醸し出すのだそうです。水道水はカルキが入っているので、雨水がいいようです。うひゃー、忍耐力ないので私は待てませんが2~3年でも変化するのですと。録画して100万倍速の動画見たくなります。

【世界では?】

世界で盆栽がBONSAIとして人気があるように、水石も世界で認知されているようです。Viewing Stoneといわれ、欧米では日本の水石文化の模倣が主流のようですが、中国をはじめとしたアジア圏では、日本よりも古くから珍石や奇石が鑑賞されており、石から生まれた孫悟空のように、石自体にパワーがあるような石が好まれているようです。所変われば感受性の文化も変わるものですね。

 

  【おまけ】

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いました。ここに、もの好きが。10年以上前に、海辺で見かけて面白い形だったので持ち帰った石ころです。我が家にあったことを思い出し、夏っぽく飾ってみました。