番外編:1600年代のミニチュアランド ~水前寺成趣園~

日本庭園って、池があって、石があって、松が生えてて、大体どこもそんな感じ…くらいにしか思っていたのは、私だけじゃないはず。。

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しかし、盆栽アカデミー中級コースでは、短時間ではあるものの、日本庭園史を教えていただきました。庭園が造られた時代背景を各地の庭園を時系列で並べ、その特徴を教えていただいたおかげで、おおまかな日本庭園の分類がちょこっと頭の片隅に残っているだけで、見方が変わるものです。

 機会があれば各地の日本庭園に行ってみたいなぁと思っていましたが、ちょうど熊本市に行ったので、これは!と思い、水前寺公園(正式名:水前寺成趣園(すいぜんじじょうじゅえん))に足を延ばしました。

桃山時代のミニチュアランド】

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水前寺公園は桃山式の回遊式庭園の代表的な庭園でございます。桃山文化というのは、秀吉様の頃ですね。1600年代です。回遊式庭園というのは、人工的に自然の風景を庭園の中に造り、人がその中を歩いて巡ると、見える景色が様々に変わり、あたかも実際にその場所に行ったかのように感じることができるという、現代のミニチュアランドのようなイメージかもしれません。

水前寺公園は、公園正面入口からまっすぐ進むと、どどーんと池が広がり、遠くに富士山を模した小山が配置されているのが大きな特徴です。

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池の中の岩の上にも石付き盆栽のように植栽されています。島に見えますね。 

【モデルは浮世絵?】

庭園内の橋を渡って富士山に近づくと、なんだか浮世絵の富士山のようです。

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私の勝手な推測ですが、庭園が造られたのは1600年代ですから当時は写真も無いでしょう。回遊式庭園で富士山をイメージして庭をデザインするために、浮世絵を参考にしたのではないでしょうか。。得意の妄想が広がります。

 【清らかな湧き水】

そして、こちらの池の水は、阿蘇山からの湧き水です。

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2016年の熊本地震で一時水が枯れてしまったそうですが、復活したようです。良かった!それはそれは吸い込まれそうに透明な水で、鯉たちも色鮮やかに泳いでいました。

富士山を通り過ぎた頃、松の手入れをしていた方がいらっしゃいました。ちょうど松も芽がぐんと伸びる季節です。

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庭木の場合も「芽切り」って言うのでしょうか?私もボサボサの我が家の盆栽ちゃんたちのお手入れしてあげなくちゃ、と焦りを覚えます。。

 

【おまけ】

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水前寺公園で珍しいアルビノの大きなスッポンを見かけました。紅葉の若葉と澄んだ水で、なんだか花札の絵になりそうな景色でした~

 

中級、実技シリーズ <エピソード8 ~時の過ぎゆくままに~>

【思い出して!私は真柏(しんぱく)です】

えーっと、半年近く経ってしまいましたが、記憶の限り思い出しましょう。幸い、盆栽アカデミーではレジュメを毎回配布してくれるので、後から見直しても大変助かります。年間のお手入れカレンダーや管理方法が記載されたレジュメは、初心者には有難いガイドとなりますね。この救いの神(紙?)が強い味方です。

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▲今回はこの素材(真柏)の枝先まで細い針金をかけて整姿していきます。

アカデミー中級コースの実技では、真柏の手入れを学びますが、同じ素材を何回かにわけて少しずつ手入れ方法を教えていただきます。真柏の剪定は一年中可能のようなので、私のようなズボラな人向けの手入れしやすい樹種のようです。おサボりしてもなんとかなる真柏ちゃん、なんとも良い子です。君とならうまくやっていけそうだ!

【実技の感覚はやってこそ】

中級コースといっても、ほとんどの受講生が初心者に毛が生えた程度の知識です。ただ、何度か講義→実技→講義→実技と繰り返していると、「あ、こういうことか!」という理解ができてくるように思います。これはどんな習い事も同じようなものかもしれませんね。水泳も、いくら泳ぎ方を聞いたところで泳ぐ感覚は実際に自分がプールに入らなくちゃ分からないですから。人にやってもらっているうちは分からないので、自分でチャレンジすることが大事です。そりゃあ失敗したくはないけれど、失敗してしまったときは、なぜ失敗したのかが痛いほどわかり、次に生かせるというものです。

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【待ちきれなくて、、】

インストラクターの先生のお話しを一通り伺い、自分の素材に向き合います。もう、皆さんどんどん作業を自主的に初めています。何をやるべきか、簡単な手入れはそろそろ各自で判断できるようになってきているようです。実は教室に入った時から、皆さんどんどんインストラクターの先生を捕まえて、質問しながら手入れをしています。

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針金掛けは先読み力が必要ですが、これも何度もやってみてコツがつかめるようになるようです。まだまだ修行が足りませんが、インストラクターの先生のアドバイスを頂きながら、限られた時間で素材を整姿していきます。

【技も色々】

針金掛けは枝の付き方によって掛け方が変わりますが、大きく曲げたいときはさらに技が必要です。これも長年の盆栽技術の伝承の中で伝わってきているのでしょうか。引っ張る力を利用して時間をかけて向きを変えるという技も教えて頂きました。

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私は、「へぇー」といういつもの間抜け声を出しているだけなのですが、いやあ実技では学ぶことがいっぱいです。 

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【自然の造形力】

私がとても気に入った原師匠の言葉があります。

「人が手を加えるのは10%程度。後は樹が自然に形を作ってくれるのです。」…言葉を失いました。なるほど、「ここはこうしてやろう」と粘土で作る造形とは違い、盆栽は生きた樹木なので、自然の成長力に任せるという気長に待つこちら側の姿勢も問われるところがなんとも哲学っぽいです。切るべきか切らざるべきか、、と悩みつつ作業するのが盆栽の手入れの面白さでもあります。

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 本日のお手入れはここまで。次回の実技はいよいよ最終回、植え替えですよー!

 

【おまけ】

この講義の時期は真冬でしたが、あまりに季節外れになってしまうので、先日の盆栽美術館のロビーを彩っていた涼し気な岩がらみの写真をお口直しにどうぞ。

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教えて樹木医さん、盆栽の病気。

【そうだった盆栽は樹木だった】

つい忘れちゃいますが、盆栽は小さいけれど、立派な樹木なんですよね。草もの花ものといった小さなものもあるので、広く植物の中に含まれますが。

今回の盆栽アカデミー中級コースは座学で樹木医の樋口裕仁先生にお話しを伺いました。個人的に樹木医さんのお話しとても興味があったので、期待感でいっぱいです。

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樋口さんは会社の社長さんなのですが、学者という方がなんだかしっくりくるアカデミックなイメージのお方です。

【病気でも喜ばれるものもある?】

学者っぽいイメージ通り、「病気」の定義から講義が始まりました。こういうところがきちんと公的機関の盆栽アカデミーらしくてとても好きです。根拠がきちんとあるところが。まあ、個人の好みは置いといて、、簡単に言えば、健康な状態でないものは病気ということになります。さらには、「傷害」や「病害」という言葉もありますが、ここは割愛。病気っていうと皆悪いイメージなのですが、マコモダケは病原菌により肥大するもので、肥大部分を食べるのです。超高級な貴腐ワインは、樹になった状態で枯れるブドウから作られますが、この貴腐菌は、若いときに付くと、炭色なんとか病という病気のブドウになっちゃうらしいです。へー。この知識を飲みながら話すとちょっとした雑学王っぽくなりそうです。

【生物学の授業】

続いて細胞や細菌、ウイルスの話に移っていきますが、このあたりはまるで高校の生物の授業のようです。私はこの辺の話もとても好きなので、目に見えないミクロの世界に自分が入り込んだように楽しくお話し聞きました。わかりやすくて面白いのは、ウイルスは動植物の中でしか生きていけないという話です。濡れたスポンジでは最近は生きているのですが、ウイルスは生きていけないんですって。

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【病気になるのは条件次第】

誰しも病気は避けたいものですが、樹木も病気になる条件というものがあります。まず、直接的な要因の「病原」、かかりやすいかどうかという「植物の性質」、そして、「気象や土壌」などの間接的な要因の3つが挙げられます。逆に言えば、この3つが揃わなければ病気の発生にならないということです。樹木の病気についてはとくに「環境条件」が重要になるようです。盆栽でいうと、鉢植えによる水ストレスが病気にかかりやすい誘因となるようです。台風の後や大胆に樹形を剪定した後の傷口からの病原体の侵入も要注意とのこと。

【病原体を持ち込むのはヒト!】

ううー、悪気はないのですが、、そうなんですねー。人類が世界を旅することが、その地域の植生に影響を与えてしまうのです。現代では「植物貿易法」によって検疫されていますが、昔は知らずに持ち込んだ植物によって、現地の樹木に甚大な被害を与えるという恐ろしい影響があったと教えていただきました。

日本は島国なので日本独自の植生があります。大陸続きのヨーロッパやアメリカへの盆栽輸出が難しいのはこのような背景があるからなのでしょうね。

 【病気アラカルトと調べ方】

病原体は細菌(バクテリア)、ウイルス、菌類が主要なもので、さらに病気の種類はとても多いので、ここには書ききれませんが、自分の盆栽が病気かな?と思ったら、「日本植物大辞典」というサイトで写真や情報を確認してみましょう。

樹木医さんは身近にそうそういないので、自分でまずは検索してみて盆栽園が近くにあったら聞いてみるのが良さそうですね。

【対処法】

病気の処置としては薬剤散布がメジャーな対処方法となります。用法、用量はきちんとラベルで確認して使用してください。なんとなくではなく、規定量を量って散布してください。濃度が濃すぎると枯れてしまうそうです。また、薬剤は作ったら劣化してしまうので、使い切ってくださいと樹木医さんからのご指導。劣化するとは知りませんでした。食品同様、消費期限があるんですね。(私はズボラ派なので、オールマイティーに使えるスプレー式しか使っていません)

【WANTED!!】

樋口さんから重要な注意事項がありました。「ウメ輪紋病」という病気が関東に発生しているそうです。これは、写真のように花弁が斑入りの症状になります。

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白い梅には筋状にピンクの斑が、紅梅種は白く色抜けする症状が出ます。これらは珍品ではなく病気なので、植物防疫所に連絡をしていただきたいそうです。

この病気が発生すると、桃に伝染し、成熟前の実が落下してしまうそうです。これは大変!桃が食べられなくなってしまうなんて、ピーンチ!梅の斑入りを発見したら通報を!

 

【おまけ】

ただいま、上野にて「国風盆栽展」開催中!後期は2/14~17です。やっぱり国風展に展示される盆栽はどれもお見事!!見逃すのはもったいない作品ばかりです。

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中級、実技シリーズ <エピソード7 ~試される頭脳プレー~>

あけましておめでとうございます。年初の写真は大宮盆栽美術館でお庭に展示されていた五葉松の「輝」です。青い空に映えるこちらの盆栽、推定樹齢は350年でございます。若干ブログ更新が遅れても気にしない泰然としたお姿です。

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さて、年初恒例の格付け番組での盆栽問題、多くの方が引っかかったようですね。もう一方がお菓子とあらば、意地でも盆栽アカデミー受講生として外すわけには参りませぬ!真柏(しんぱく)という樹種(じゅしゅ)同士の比較でしたね。多分アカデミー受講生たちなら当てられたんじゃないでしょうか。この問題だけの一流芸人ですが。兎にも角にも、あのような立派な盆栽を仕立てられるようになるには、当然長年積み重ねた経験が必要です。そこまで到達できなくても、少しずつチャレンジしていると楽しみ方の幅はぐんと広がります。お菓子も見事でしたね。もったいなくて食べられないな。。

ささ、今年も生きたアートの世界を愉しみましょう!

【黒松くん、お久しぶり!】

今回は、5月頃に針金掛けの練習をした黒松くんも各自のテーブルに用意されていました。久しぶり~!元気だった~?こんな姿だっけ?なんて、1回会っただけでは分からないよねぇ。でも、盆栽ちゃんたちは、切り花と違って季節を超え、年を経てのお付き合いになるので、ゆっくり少しずつ育てていく楽しみでしょうか。この日(11月3日)は「芽かき」という作業をやりました。 

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備忘録的に黒松くんのお手入れ歳時記を残しておくと、3月~4月のはじめ、桜の咲く頃に植え替えます。素焼きの鉢が良いようです。どうも、私はすぐ鑑賞用の鉢に植えたくなっちゃうのですが、苗ちゃんには水はけや通気性が良い素焼きの鉢がベビーベッドのようで気持ち良いのでしょうね。

今回大きく残っていた枝は、来年の6月20日~6月末に切るのが良いとのことでした。大きな枝は、小さな木の栄養を奪ってしまうそうです。そっかー、植物なのに同じ鉢の中で、弱肉強食の戦いがあるのかー!

 【二又っていっても浮気じゃないから】

盆栽の基本で、新芽は2つずつ残していきます。「芽かき」という作業は、2つ以上同じところから芽が出た場合に、不要な目を切り取って、2つに残すという作業をすることです。そのまま残しておくと、芽の付け根が太ってしまうため、美しくないのです。私は手抜きしがちなのですが、アカデミーのおかげで「この時期に何をやるのか」というのが自然と身に着くようになってきます。短期集中講座もいいけど、やはりゆっくり何度も反復する方が忘れにくいですね。

【ジン・シャリ作りも二度目なら】

前回のジン・シャリはおっかなびっくりの作業でしたが、二度目になると度胸もつくものです。前回作ったシャリは、まだ削り方が甘く、自然治癒力が勝っていました。こうして徐々に力加減も覚えて行くように思います。やりすぎたら戻らないし、やらなさすぎは効かないので、ちょうどよい加減というところは、自分でやってみて初めて納得するものです。

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【葉透かしは風通し】

今回は、ジン・シャリ作りだけでなく、「葉透かし(葉すぐり)」という作業も新たに行いました。これは、針金を掛ける直前に行い、葉を先の方だけに残し、交互に小さな枝を残して余分な小枝や古葉を取り除いて針金を掛けやすくする作業です。まあ、これがまた、素人にはどの小枝を残すのか迷っちゃったりしますが、インストラクターの先生からは「真柏は強いから大丈夫」と度々言われるので、ちょっと大胆にやっても大丈夫かもしれません。

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【樹形作りに欠かせない針金】

つくづく、盆栽って色んな作業があるんだなぁと思いますが、それを愉しむゆとりのある大人になりたいものです。。さて、次は針金掛けです。種類も枝の太さに合わせてこんなにご用意いただいております。(自宅でやるならまあ2,3種類からスタートでいいかもですね)

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【針金掛けは頭脳プレー】

針金掛けは、将来の姿を想像しながら、そして二手、三手先を読んで掛けていく頭脳プレーなのです。まず、幹や太い枝から順に掛けていきます。45度の躾、覚えていますよー。そして針金と針金を交差させない。針金による躾を「効かせる」ための相手方の枝の選び方。針金の太さ、、文字で書くと嫌になりそうですが、実物でチャレンジすればすぐ納得。このハードルは盆栽の手入れの中でかなり大きいと私は感じました。しかし、これこそが醍醐味とも言えそうです。数年後の理想の形を思い描き、その形に近づけるよう盆栽を躾ていく。。なかなか思うようにいかないところも愉しみのうちなのです。 

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【個性だらけ】

針金掛けの具合は、その樹によって異なります。それゆえ、アカデミーのようにテーブルごとにインストラクターの方がついてくださり、マンツーマンで教えていただけるのは個人レッスンのようなものです。ネットや本で調べて自分流でやっても限度があります。そこは、盆栽教室なり、盆栽園なりでプロに指導してもらうことをお勧めします。何度かやればきっと分かってきます。何事も基本をマスターすることが上達への早道だと確信しています。

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ビフォーアフター

実技の回は1回2時間ですが、その中で盛りだくさんの作業となります。てなわけで、かなり端折ってしまいましたが、今回の成果はこんなところです。あとは自宅で自主練となります。 

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これ、同じ樹ですよ。ま、植替えを意識してAfterの写真は鉢を傾けていますが、こんなに曲げても大丈夫とは、びっくりですねー。

 

【おまけ】

正月飾りは、アカデミーの教材だった五葉松君と、昨年盆栽美術館で参加したワークショップで作成した長寿梅、秋雅展の販売所で購入した笹の苗と、、ほぼ原価松竹梅セットです。苔や飾り砂があればもう少しオシャレになったんだけどなー。

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買ったばかりでも嬉しいけれど、自分が育てて花が咲いたり姿が整ってきた子たちは、喜びもひとしおです。本年もよろしくお願いいたします。

 

日本庭園史からの~

盆栽アカデミーでは、盆栽の知識だけでなく、関連する分野の知識も講義で学ぶことができます。今回は日本庭園史を東京農業大学の服部教授が登壇して我々に講義してくださいました。

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ひゃー!大学教授の講義をダイレクトに聞ける機会は貴重です。プロはその道に関して様々な文献や調査から研究を長年続けていらっしゃるのです。本来なら何十時間もかけて行う講義をギュッと圧縮して美味しいところいただきます! 

【造園は国家資格】

造園施工管理技士という立派な国家資格があり、この試験を受ける方々が日本庭園史を学ばれるそうです。日本庭園って松があって、池があって、灯篭とか置いてあって~と漠然と思い浮かべるだけでしたが、きちんとそれぞれに意味があって形式美が詰め込まれているのでしょうね。堅苦しいなぁと思うこともあるかもしれないけれど、基本を知った上での遊びというのはどの業界でも通じる手法だと思います。なかなかそこまでたどりつけないかもしれないけれど、エッセンスくらい身に着けたいですねー。

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テキストは載せられませんので、受講風景でイメージを。 

飛鳥時代から現代までめくるめく庭めぐり】

飛鳥時代の庭園は現存しているものは無いそうですが、発掘した地層や花粉から想像して再現された庭園が平城京左京三条二坊宮跡庭園とのこと。花粉からって…再現させたエネルギーがスゴイです!

飛鳥・奈良時代平安時代鎌倉時代室町時代→安土・桃山時代→江戸時代→明治時代と今回の講義では駆け足で各時代の特徴を教えて頂きましたが、各時代の政治的・文化的背景が造園方法にも色濃く影響しているというのが非常に面白い点です。アカデミーの初級コースから様々な座学を踏まえての庭園史全体の講義なので、徐々に知識の層も厚くなってきているんじゃない?と自分に幾ばくかの期待をしていますが、忘れっぽいので、復習しないとね。昭和・平成時代の造園史は、今まさに作られている途中なので、きっと未来の子供たちに「昔はこんなスタイルが人気だったんだってさー」と語られることでしょう。

【最初の造園教科書!】

平安時代は日本最古の造園に関する文献「作庭記(さくていき)」がフォーカスされるポイントのようです。なぜかって?それは、造園の教科書的存在の作庭記に書かれている内容が、現代の造園でも盆栽づくりでもそのまま通用する教えとなっているからです。メモメモ。その教えとは、、

1.まず全体を考えなさい。地形を見て、自然のあり方を参考にすること。

2.良いもの、上手なものをよく見ること。

3.相手の意見を聞いて、自分の良さを出していくこと。

ふむふむ、確かにこれらは実技の場面でもいつもインストラクターの先生方が仰っております。普遍的な教えって、色褪せないものですね。

実際の庭園では、この時代に京都御所に見られる「寝殿造」から宇治平等院浄瑠璃寺の「仏教観」、さらに大仙院の「枯山水」という流れで変遷したようです。これらの庭園を造った庭師さんたちも、作庭記でお勉強したのでしょうか。

【各時代の代表的な庭園】

ひとつずつ細かくご紹介はできませんが、それぞれの時代の特徴を表している庭園を服部教授から紹介されました。それぞれの時代の特徴を知ってから見たら、単に「きれいー」だけでなく、深読みが出来て面白く見学できそうです!

飛鳥・奈良時代平城宮東院庭園平城京左京三条二坊宮跡庭園

平安時代神泉苑嵯峨院庭園平等院庭園毛越寺庭園浄瑠璃寺庭園

鎌倉時代西芳寺庭園天龍寺庭園

室町時代竜安寺方丈庭園大徳寺大仙院庭園慈照寺(銀閣寺)庭園

安土・桃山時代後醍寺三宝院庭園西本願寺対面所庭園二条城二の丸庭園

江戸時代:桂離宮庭園修学院離宮庭園小石川後楽園

明治時代:無鄰庵庭園日比谷公園

時代順に巡っていったら庭園史を肌で感じられそうですが、ちょっと時間かかりそうです。 

 

【おまけ】

正に今!これだけは足を運んで見るべし!

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今は、盆栽美術館であのレジェンド、木村正彦氏の展示が行われています。こんな貴重な機会はそうそうありません!盆美の展示スペースで間接照明で浮かび上がる木村先生の作品群を間近に見るチャンスなので、わざわざ足を運ぶ価値大いにありです。

 

【おまけ その2】

もう終わってしまいましたが、刃物で有名な新潟の燕三条から盆栽道具の展示即売会が盆美の駐車場エリアで、先月行われていました▽

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不要になった鋏で作ったという大きな松の造形作品がいぶし銀の重厚感溢れる姿で展示されていたのが印象的でした。役目を終えた道具もアートになるっていい話ですなー!

中級、実技シリーズ <エピソード6 ~傷の掟~>

いきなりジン・シャリ作りのデモンストレーションいっちゃいます。

【ジンづくり】

ジンはあまり長く作らないようですが、最初から短くしなくてもよいので、まずは余分な枝葉を落としてからジンを作ります。▽

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ジンを作るときには、残しておきたい樹皮まで傷つけないよう、予め枝の周りにぐるりと切り込みを入れておきます。小学校の理科でやった、ビニル絶縁電線の絶縁部分を切り取る要領です。(って、そっちの方が分かりにくい?)▽ 切り込みを入れているところ

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その次に「やっとこ(盆栽用のペンチ)」や彫刻刀で樹皮を剥がしていきます。▽

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11月頃までは樹皮がツルっと剥けるようなので、ジン・シャリ作りもやりやすいとのこと。不思議なのは、枝先や幹の一部が枯れても樹全体は生きているということです。先人たちの知識と技術の受け継ぎです。▽ジン出来上がり

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【ジンを曲げるのは今でしょ】

ジンを作るということは、その部分は枯れてしまうということです。盆栽ではその枯れた部分も鑑賞するため、意図的に曲げることもします。この作業は枯れてからではできないので、樹皮を剥いだばかりでまだ枝が柔らかいうちに針金を掛けて曲げます。▽

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枯れ枝は簡単にポキッと折れるけれど、生木はなかなか折れないなーという経験を思いだしました。

【シャリの法則】

大雑把にジンは枝先、シャリは幹の枯れた部分という分け方ですが、幹のどこにシャリを作るのかというのは少しコツがあるようです。まず、枝を根元から切ったり、ジンを作ったりした部分の周りから将来樹皮が枯れていくので、それらの周りをシャリにするという考え方があるようです。そして、盆栽を正面から見たときに水吸いという樹皮が生きている部分が鑑賞できるように残しておくことも大切です。根元が枯れているのに上だけ生きているという姿は不自然に見えてしまうからです。▽見本のシャリは、枝を切り取った周りがシャリになるよう作られています。

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そして、削る部分の境目をチョークなどで印をつけて分かりやすくします。うーん、自宅でチョークって持っていないのですが、目印程度なので自分が分かれば良さそうです。f:id:katsuo_24:20181017174530j:plain

目印をつけたら、彫刻刀ややっとこを用いて樹皮を剥がします。このとき、彫刻刀でめくった部分をやっとこで持ち上げるように引っ張ると、繊維に沿ってゴボウの皮のように樹皮が自然に剥がれます。これが無理なく自然な形でシャリをつくる方法なので、少しずつ剥いて行くのが良いようです。

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原師匠によると、一度にシャリを作らなくても、毎年少しずつシャリを広げて行く作業を行うと、のっぺりしたシャリではなく皺のように筋が入ったシャリができるので古木感が出るようです。焦らずゆっくり作り上げるのも楽しみという大人なアドバイスですねー。さっさとやりたくなってしまう忍耐力がない素人がここにおりました。

【素材と向き合う】

素材と向き合うなんてちょっと高尚なアーティスト風ですが、いやはや実際悩みます。

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写真だと分かりづらいのですが、ワタクシがお世話することになったこの子、足元の立ち上がりが良いなあと思っていましたが、しっかりした枝が上の枝に乗り上げてガッチリ交差しちゃっています。インストラクターの先生に相談しながら、このやっかいな枝はジンにすることにしました。しっかりした枝だったのでもったいないと思ったのですが、全体構想としては不要な枝になってしまうのです。

【スケッチに芸術性は不要】

さて、作業に夢中ですっかり忘れていましたが、この時点で、以前宿題でスケッチしたものと全く違っています。そこが所詮素人です。▽当時のスケッチ 

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しかし、将来の姿を想像するという作業をスケッチすることで具体的にイメージする練習になるということが分かりました。講義中、スライドで盆栽師さんが構想を練ったときのスケッチを紹介してくださったものを拝見し、スケッチの意味をようやく理解したように思います。実践で学ぶということは、こういうことかと納得しました。

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次回からは模写ではなく、どこを活かしてどこを切るのかという描き方に気をつけようっと。そういう点で、スケッチというより構想図という方が私の中ではしっくりくるような気がしました。

【中途半端ですが】

実技の時間は、ジン・シャリ作りが初めての初心者には到底足りませんが、インストラクターの先生方のお力を借りてどうにかここまでできました。まず、下の枝が上の枝に乗っかって不自然にクロスしていた枝をジンにしてから力技で引き離し、針金を掛けて曲げました。枝がバキッと折れかかってしまいましたが、致し方ないようです。真柏ちゃんには山から大岩が落ちてきたと思って耐えてもらいたいところです。

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【ステップバイステップ】

盆栽の基本の手入れを学ぶのが初級コースだとすると、中級コースでは「新しい見どころを作る」というのが次の段階となるようです。私もこれまでは単に水やりと肥料、枯れた葉っぱと徒長枝の手入れくらいしか出来ていませんが、針金掛けやジン・シャリ作りをやりだすとちょっと盆栽やってるぜ!的な自己満足のレベルが上がります。皆さんはいかがでしょうか? 

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【おまけ】

少し前ですが、我が家のツリバナも実が綺麗に色づき、割れて風情が出たので玄関に飾ってみました。真柏のジン・シャリ作りはまだまだですが、飾って楽しむことは気軽にできますね。

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今では、もうすっかり実が開ききっています。ちょうど良いタイミングで飾っておいてよかったー。

中級、実技シリーズ <エピソード5 ~ジン・シャリ~>

今回はいよいよジン・シャリ作りです。たまたま写真撮影可スペースに「武甲(ぶこう)」という銘がついた私が好きな盆栽が展示してあったので、僭越ながら解説に使用させていただきます。こんな立派な盆栽にはとても手が出せないので見るだけ~f:id:katsuo_24:20181012182424j:plain

【ジン・シャリとは】

まずは言葉のおさらいから。ジンとは神とも書かれる盆栽の枝先の枯れて白骨化した部分、シャリは舎利と書かれ幹が枯れて白骨化した部分を指します。盆栽に神や仏を連想させるなんざ、先人たちは洒落たことを考えますね。

ジン・シャリは主に松柏(しょうはく)盆栽に見られ、中でも真柏(しんぱく)という樹種(じゅしゅ)で枯れた部分の白さと生きている部分の幹(水吸いと呼ばれる)の茶色、葉の緑といった色の対比が美しく表現されています。 

盆栽は自然の風景を盆器の上で表現しようと試みるものです。自然界では風雪で折れたり枯れて白骨化したりしますが、盆栽では人為的にそれらを作ります。その作業は痛そうに見えますが、樹全体が枯れないように注意しながら作業します。

 【準備オッケー】

前置きが長くなりましたが、アカデミーの講義に移りましょう。本日の教室には数か月前に各人の素材を大まかに手入れしたもの、将来の姿を想像してスケッチしたものも用意されています。しばらく見ていなかったので忘れていましたが、そうそう確かにこの子です。

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テーブルにはいつも上記のようなセットをご用意いただいております。自宅で手入れするときにも少しずつ道具が増えているので道具箱が欲しくなってきました。大工さんみたいな工具箱欲しいな。

さて、本日も原師匠の講義から入ります。

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【なぜジン・シャリを作るのか?】

もみじや花梨、欅といった雑木(ぞうき)盆栽では(幹の)肌の美しさを見せたいのでキズが無い方が美しいとされます。一部例外は梅やズミ、寒グミくらいだそうです。一方、真柏や松などの松柏(しょうはく)盆栽は幹肌が荒れて古木に見えることにより風格が出るので良いとされます。

特に真柏の「水吸い」と呼ばれる樹皮の茶色い部分(生きている部分)とジン・シャリの白骨化した部分(枯れている部分)、葉の緑色の色のコントラストが美しく出ている盆栽はもうアートそのものです。世の中でお高い盆栽さんたちは、皆これらが見事に表現されています。下世話な話ですが、何年もかけて1点ずつ作成するアートなので、価値も高くなるのもうなずけます。

【お手本には程遠く】

自分の素材を目の前にしてどうしたものかと悩んでいると、インストラクターの先生が見本をテーブルに持ってきてくださいました。

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幹の太さからすると、私たちの素材もここまでとは言わなくてもかなり小さくしても大丈夫なようです。そもそも、仕上がりをどのくらいの大きさにしたいのかも自分たちで考えるのです。難しいよぉ~!とヘタレそうになりますが、まあまあ、20㎝程度までの大きさくらいが私にはちょうどいいかな。

【おおまかな手順】

高級盆栽に少しでも近づくために我々も頑張ってみましょー!ということで、お手本のデモンストレーションです。先に全体のおおまかな手順を記すと、以下のとおり。

①正面を確認する

②余計な枝葉を落とす

③ジンにする枝を決め、樹皮を剥ぐ

④ジンから繋がるようにシャリを入れる場所を決める

⑤シャリにする部分の樹皮を剥ぐ

この作業を一つずつ原師匠が解説しながら実演してくださいます。

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皆熱心にメモを取りながら原師匠のデモに見入ります。私は写真を撮りながらなので注意散漫ですが、学生時代より熱心なのは間違いありません。

さて、このまま続けるとちょっとボリュームが多くなりそうなので、今日はここまで。

to be continued !