日本庭園史からの~

盆栽アカデミーでは、盆栽の知識だけでなく、関連する分野の知識も講義で学ぶことができます。今回は日本庭園史を東京農業大学の服部教授が登壇して我々に講義してくださいました。

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ひゃー!大学教授の講義をダイレクトに聞ける機会は貴重です。プロはその道に関して様々な文献や調査から研究を長年続けていらっしゃるのです。本来なら何十時間もかけて行う講義をギュッと圧縮して美味しいところいただきます! 

【造園は国家資格】

造園施工管理技士という立派な国家資格があり、この試験を受ける方々が日本庭園史を学ばれるそうです。日本庭園って松があって、池があって、灯篭とか置いてあって~と漠然と思い浮かべるだけでしたが、きちんとそれぞれに意味があって形式美が詰め込まれているのでしょうね。堅苦しいなぁと思うこともあるかもしれないけれど、基本を知った上での遊びというのはどの業界でも通じる手法だと思います。なかなかそこまでたどりつけないかもしれないけれど、エッセンスくらい身に着けたいですねー。

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テキストは載せられませんので、受講風景でイメージを。 

飛鳥時代から現代までめくるめく庭めぐり】

飛鳥時代の庭園は現存しているものは無いそうですが、発掘した地層や花粉から想像して再現された庭園が平城京左京三条二坊宮跡庭園とのこと。花粉からって…再現させたエネルギーがスゴイです!

飛鳥・奈良時代平安時代鎌倉時代室町時代→安土・桃山時代→江戸時代→明治時代と今回の講義では駆け足で各時代の特徴を教えて頂きましたが、各時代の政治的・文化的背景が造園方法にも色濃く影響しているというのが非常に面白い点です。アカデミーの初級コースから様々な座学を踏まえての庭園史全体の講義なので、徐々に知識の層も厚くなってきているんじゃない?と自分に幾ばくかの期待をしていますが、忘れっぽいので、復習しないとね。昭和・平成時代の造園史は、今まさに作られている途中なので、きっと未来の子供たちに「昔はこんなスタイルが人気だったんだってさー」と語られることでしょう。

【最初の造園教科書!】

平安時代は日本最古の造園に関する文献「作庭記(さくていき)」がフォーカスされるポイントのようです。なぜかって?それは、造園の教科書的存在の作庭記に書かれている内容が、現代の造園でも盆栽づくりでもそのまま通用する教えとなっているからです。メモメモ。その教えとは、、

1.まず全体を考えなさい。地形を見て、自然のあり方を参考にすること。

2.良いもの、上手なものをよく見ること。

3.相手の意見を聞いて、自分の良さを出していくこと。

ふむふむ、確かにこれらは実技の場面でもいつもインストラクターの先生方が仰っております。普遍的な教えって、色褪せないものですね。

実際の庭園では、この時代に京都御所に見られる「寝殿造」から宇治平等院浄瑠璃寺の「仏教観」、さらに大仙院の「枯山水」という流れで変遷したようです。これらの庭園を造った庭師さんたちも、作庭記でお勉強したのでしょうか。

【各時代の代表的な庭園】

ひとつずつ細かくご紹介はできませんが、それぞれの時代の特徴を表している庭園を服部教授から紹介されました。それぞれの時代の特徴を知ってから見たら、単に「きれいー」だけでなく、深読みが出来て面白く見学できそうです!

飛鳥・奈良時代平城宮東院庭園平城京左京三条二坊宮跡庭園

平安時代神泉苑嵯峨院庭園平等院庭園毛越寺庭園浄瑠璃寺庭園

鎌倉時代西芳寺庭園天龍寺庭園

室町時代竜安寺方丈庭園大徳寺大仙院庭園慈照寺(銀閣寺)庭園

安土・桃山時代後醍寺三宝院庭園西本願寺対面所庭園二条城二の丸庭園

江戸時代:桂離宮庭園修学院離宮庭園小石川後楽園

明治時代:無鄰庵庭園日比谷公園

時代順に巡っていったら庭園史を肌で感じられそうですが、ちょっと時間かかりそうです。 

 

【おまけ】

正に今!これだけは足を運んで見るべし!

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今は、盆栽美術館であのレジェンド、木村正彦氏の展示が行われています。こんな貴重な機会はそうそうありません!盆美の展示スペースで間接照明で浮かび上がる木村先生の作品群を間近に見るチャンスなので、わざわざ足を運ぶ価値大いにありです。

 

【おまけ その2】

もう終わってしまいましたが、刃物で有名な新潟の燕三条から盆栽道具の展示即売会が盆美の駐車場エリアで、先月行われていました▽

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不要になった鋏で作ったという大きな松の造形作品がいぶし銀の重厚感溢れる姿で展示されていたのが印象的でした。役目を終えた道具もアートになるっていい話ですなー!