中級、実技シリーズ <エピソード6 ~傷の掟~>

いきなりジン・シャリ作りのデモンストレーションいっちゃいます。

【ジンづくり】

ジンはあまり長く作らないようですが、最初から短くしなくてもよいので、まずは余分な枝葉を落としてからジンを作ります。▽

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ジンを作るときには、残しておきたい樹皮まで傷つけないよう、予め枝の周りにぐるりと切り込みを入れておきます。小学校の理科でやった、ビニル絶縁電線の絶縁部分を切り取る要領です。(って、そっちの方が分かりにくい?)▽ 切り込みを入れているところ

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その次に「やっとこ(盆栽用のペンチ)」や彫刻刀で樹皮を剥がしていきます。▽

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11月頃までは樹皮がツルっと剥けるようなので、ジン・シャリ作りもやりやすいとのこと。不思議なのは、枝先や幹の一部が枯れても樹全体は生きているということです。先人たちの知識と技術の受け継ぎです。▽ジン出来上がり

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【ジンを曲げるのは今でしょ】

ジンを作るということは、その部分は枯れてしまうということです。盆栽ではその枯れた部分も鑑賞するため、意図的に曲げることもします。この作業は枯れてからではできないので、樹皮を剥いだばかりでまだ枝が柔らかいうちに針金を掛けて曲げます。▽

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枯れ枝は簡単にポキッと折れるけれど、生木はなかなか折れないなーという経験を思いだしました。

【シャリの法則】

大雑把にジンは枝先、シャリは幹の枯れた部分という分け方ですが、幹のどこにシャリを作るのかというのは少しコツがあるようです。まず、枝を根元から切ったり、ジンを作ったりした部分の周りから将来樹皮が枯れていくので、それらの周りをシャリにするという考え方があるようです。そして、盆栽を正面から見たときに水吸いという樹皮が生きている部分が鑑賞できるように残しておくことも大切です。根元が枯れているのに上だけ生きているという姿は不自然に見えてしまうからです。▽見本のシャリは、枝を切り取った周りがシャリになるよう作られています。

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そして、削る部分の境目をチョークなどで印をつけて分かりやすくします。うーん、自宅でチョークって持っていないのですが、目印程度なので自分が分かれば良さそうです。f:id:katsuo_24:20181017174530j:plain

目印をつけたら、彫刻刀ややっとこを用いて樹皮を剥がします。このとき、彫刻刀でめくった部分をやっとこで持ち上げるように引っ張ると、繊維に沿ってゴボウの皮のように樹皮が自然に剥がれます。これが無理なく自然な形でシャリをつくる方法なので、少しずつ剥いて行くのが良いようです。

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原師匠によると、一度にシャリを作らなくても、毎年少しずつシャリを広げて行く作業を行うと、のっぺりしたシャリではなく皺のように筋が入ったシャリができるので古木感が出るようです。焦らずゆっくり作り上げるのも楽しみという大人なアドバイスですねー。さっさとやりたくなってしまう忍耐力がない素人がここにおりました。

【素材と向き合う】

素材と向き合うなんてちょっと高尚なアーティスト風ですが、いやはや実際悩みます。

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写真だと分かりづらいのですが、ワタクシがお世話することになったこの子、足元の立ち上がりが良いなあと思っていましたが、しっかりした枝が上の枝に乗り上げてガッチリ交差しちゃっています。インストラクターの先生に相談しながら、このやっかいな枝はジンにすることにしました。しっかりした枝だったのでもったいないと思ったのですが、全体構想としては不要な枝になってしまうのです。

【スケッチに芸術性は不要】

さて、作業に夢中ですっかり忘れていましたが、この時点で、以前宿題でスケッチしたものと全く違っています。そこが所詮素人です。▽当時のスケッチ 

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しかし、将来の姿を想像するという作業をスケッチすることで具体的にイメージする練習になるということが分かりました。講義中、スライドで盆栽師さんが構想を練ったときのスケッチを紹介してくださったものを拝見し、スケッチの意味をようやく理解したように思います。実践で学ぶということは、こういうことかと納得しました。

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次回からは模写ではなく、どこを活かしてどこを切るのかという描き方に気をつけようっと。そういう点で、スケッチというより構想図という方が私の中ではしっくりくるような気がしました。

【中途半端ですが】

実技の時間は、ジン・シャリ作りが初めての初心者には到底足りませんが、インストラクターの先生方のお力を借りてどうにかここまでできました。まず、下の枝が上の枝に乗っかって不自然にクロスしていた枝をジンにしてから力技で引き離し、針金を掛けて曲げました。枝がバキッと折れかかってしまいましたが、致し方ないようです。真柏ちゃんには山から大岩が落ちてきたと思って耐えてもらいたいところです。

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【ステップバイステップ】

盆栽の基本の手入れを学ぶのが初級コースだとすると、中級コースでは「新しい見どころを作る」というのが次の段階となるようです。私もこれまでは単に水やりと肥料、枯れた葉っぱと徒長枝の手入れくらいしか出来ていませんが、針金掛けやジン・シャリ作りをやりだすとちょっと盆栽やってるぜ!的な自己満足のレベルが上がります。皆さんはいかがでしょうか? 

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【おまけ】

少し前ですが、我が家のツリバナも実が綺麗に色づき、割れて風情が出たので玄関に飾ってみました。真柏のジン・シャリ作りはまだまだですが、飾って楽しむことは気軽にできますね。

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今では、もうすっかり実が開ききっています。ちょうど良いタイミングで飾っておいてよかったー。