中級、実技シリーズ <エピソード4 ~三手先を読む~>

久しぶりの盆栽アカデミー中級コースの実技です。ワタクシ、この日はカメラの設定で、うっかり「曇天」モードにしてしまっており、写真のホワイトバランスというものが崩れておりました。。御見苦しくて申し訳ございませんが、内容物には異常がございませんので、このまま読み進めていただけますと幸いです。

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今回は、初級コースで剪定、植え替えを行った皆にとって初めての盆栽ともいえる五葉松君が素材です。各自1年間自分で水やりして管理したものを持ち寄って、それに針金掛けを行うという実習なので、1年間のお世話の成果次第では教材が無いという事態にもなりかねないため、皆ドキドキしながらこの日を迎えたことでしょう。

インストラクターの先生方から「いやぁ~、どうかなと思っていましたが、皆さんの五葉松がどれも想定以上に元気で素晴らしいです」とお褒めの言葉をいただき、教室全体がホッとした空気に包まれました。今年は台風や強風が多く、そうした時には盆栽棚から一時的に地面に下ろしたり、盆栽棚に紐で固定するなど、風で倒れないようにする対策が必要です。きっと波平さんも台風の時には気をつけたことでしょう。

 【前回のおさらい】

針金掛けは、「躾(しつけ)」と考えて行います。初心者の私は昨年までは痛々しいと思っていましたが、躾によって、見栄えが変わることが理解できると、鑑賞用として樹が痛まない程度で姿を整えるのは、アリだと思うようになりました。ボサボサのままでは身だしなみを整えずにパジャマで出勤するようなものという感じでしょうか。

針金も、強すぎず、曲げが効く強さで45度の角度で巻いていき、ピッチ(巻いたときの針金と針金の感覚)を等間隔にします。原師匠がレジュメで様々なタイプの枝への針金かけを説明してくださいました。針金の太さや針金をかける順番、二又に掛けるときの針金の渡し方、全体の形の整え方など、順序や将来の姿を考えながら行うのです。

【針金の種類】

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針金には銅線とアルミ線があります。盆栽用の銅線は火入れをしてあるのですが、これはなかなかホームセンターでは見かけません。盆栽園かネット通販なら買えます。さらに、銅線は硬いので、扱うのが難しいのです。一方、アルミ線は入手もしやすく柔らかいので扱いやすいです。これは一長一短で、硬い=曲げが効く、柔らかい=効きにくい、ということになるのですが、紅葉や花物などの雑木は樹皮が薄く柔らかいので、傷まないためにはアルミ線の方が向いていそうです。

今回は皆初心者なので、扱いやすいアルミ線をご用意いただいております。太さも1.5㎜から4㎜まで各種取り揃えてくださっています。いつもながらの痒い所に手が届く盆美の気配り、感謝でございます。

【師匠のお手本】

レジュメでの解説の後、原師匠のデモンストレーションです。太い幹に3㎜のアルミ線を掛けていきます。しっかりと一方の手で幹と針金を押さえながらもう一方の手で巻いていきますが、このとき、既に幹や枝についてしまっている針金の跡は、これ以上深くならないよう、古傷を避けて針金をかけるようにします。

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【プロの技!】

原師匠が太い幹に3㎜という太い針金を巻いても、アルミ線だとなかなか思うように枝が下がってくれません。ここで、プロの技が出ました!すでに巻いた針金に細い針金を通そうとしても、幹との隙間に細い針金が入らないとみるや、鉢底用のネットを幹に巻き付け(←針金が幹に食い込まないよう養生するため)、鉢全体に針金を掛けて一の枝をグッと下ろすという技です。

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上の写真と見比べると、下の写真では枝がぐっと下がったことが分かります。松はこんなに曲げても折れないんですねー。折れやすいワタシの心と大違いです。

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これは素人にはなかなか思いつかない技ですが、さすが原師匠!いつか私もこんな風にパパっと思い浮かぶのだろうか。。まあ、諦めなければ私たちもいつかきっとね。

【実践で分かる先読み力】

さあ、原師匠の技に感心しているだけではいけません。我々も各自の五葉松君に「躾」を行うのじゃー!と皆それぞれ真剣に五葉松に向かいます。ボーっと眺めているのと、いざ針金を掛けるのとでは雲泥の差です。なぜか?それは、最初の針金は掛けられても、2本目、3本目、この枝とあの枝、、と考えながら針金を掛けることになるため、二手、三手、先を読んで針金を掛けていかねばならぬのです。マジか!針金掛けでこんなに頭を使うとは!まるで詰将棋です。まさかの集中力が必要な作業で頭に汗をかきます。

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皆様、真剣にぐるぐるです。インストラクターの先生方が各テーブルに1人ずつついて指導してくださるので、迷ったり分からなかったらすぐに聞けるのが有難いですね。実際に手を動かしてみると、「あれ?この枝はどっちに持って行った方がいいのかな?」「この枝とこの枝に針金掛けたいけど、巻きはじめはどこから?」といった細かな疑問が次々出てきます。一人自宅で黙々とやっていたらなかなか分からないことも、インストラクターの先生方が傍にいてくれると安心です。

【ぐるぐる後】

集中して針金をかけていると、あっという間に時間が過ぎます。全ての枝に針金をかけることはできませんでしたが、本日はここまで。かなりぐるぐるです。針金が見えないようにかけるのが良いとされていますが、アップで見るとバレバレです。

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とりあえず、ビフォーアフターを写真に収めて本日の作業を確認します。

▽なかなか、躾した感が出来てきたじゃありませんか。(インストラクターの先生方にいちいち聞きながらでしたが)えへへ。

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植え付け角度を変えた方が良いと指摘されました。なるほど、、After(右の写真)の方が、流れがはっきりして足元の出っ張りが気になりません。うーむ、今春植え替えたばかりだから、3年後まではこのままで致し方ないか。。

【自分の身だしなみ用に強い味方】

松の作業の時には、松脂(まつやに)が出ちゃうものです。手に着くとしぶとく、なかなか取れないのですが、さすが盆栽アカデミーさん、アフターフォローもお見事です。松脂が着いた手に直接シュッシュとスプレーして手をこすり、その後水洗いすれば、あーら不思議、あんなに頑固な松脂が見事に落ちるではありませんか!

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つい自宅にも欲しくて写真で記録です。香りも良くてこれは一家に1本ですな。(残念ながら本日現在、ワタクシ御用達の密林では販売していないようです)

 

【おまけ】

写真を失敗して落ち込んでいましたが、屋外では曇天モードでもまともに写っていました。さて、こちらは冬の姿が素敵な花梨ちゃん。鉢映りもいいですねー。こんなに薄い鉢にこれだけの大木。見事としか言いようがございません。猛暑で水やりも大変だったことでしょう。

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既に大きな実がいくつかなっています。先の季節の姿を想像する楽しみがあるのが盆栽の魅力ですね。