引継ぎ、成長するアートのはじまり

盆栽は生きています。その寿命は、樹種(じゅしゅ:樹木の種類)にも寄りますが、草もの盆栽の1年のものから、何百年と生き続けている盆栽もあります。限られた時間の間に最高の美しい姿を楽しむ切り花との一番の違いといってもいいでしょう。鑑賞するだけでなく、育てることで愛着が深まる、これが魅力なんですよねー。

 【いらっしゃい真柏ちゃん】

我が家に初めてミニ真柏ちゃんが来たのは、静岡の苔聖園(たいしょうえん)さんから持ち帰った今年9月上旬のことです。(▽ミニ真柏ちゃんの針金外しをしてくれている大雅さん)

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この小さな真柏ちゃんは、苔聖園さんが愛好家の方から引き取った時から針金が幹に食い込んでいたようです。たくさんあると手入れも追い付かないのでしょう。針金が食い込んだ樹は、見る方も痛々しいですね。食い込んでしまった針金を樹を傷めないよう外すことが私にはできないことを見越して、二代目の漆畑大雅さんがサービスで針金を外してくださいました。ありがとうございました!

その後、埼玉の我が家に来たミニ真柏ちゃんは、肥料を置いた後、水を毎日あげるだけで放置、いや見守っておりました。

 

 【いざ!改作チャレンジ】

盆栽の面白さというのは、美しく整えられた盆栽を愛でるのも良いのですが、制作過程も大変面白いものです。ペットの子犬にお手やお座りを教えていくようなイメージです。その成長が楽しみなのです。盆栽の場合、樹の将来の姿を想像しながら美を求め、樹形を整えていくことに醍醐味があります。(なんて偉そうに言っていますが、一人ではまだできません。)

そこで、今回体験レッスンで藤樹園(とうじゅえん)にお邪魔して、周りの方たちに教えていただきながらチャレンジしてみました。(▼7月にお邪魔した時の写真)

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【正面と頭】

盆栽は正面をまず決めます。幹が一番美しく見える方向で、枝の位置や角度、全体のバランスを見ながら頭もどこにするかも決めます。初心者の場合、自分で思う向きと先生の見立てとは違うことも結構あります。(ええ、もちろん私は初心者です)

そして、イメージが出来上がったら、不要な枝は切って整えていきます。またしても「ええー!ここ切っちゃっていいんですかー!?」っていうところを切るようご指導いただきました。チョキッ!

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(▲手入れする前の真柏。どこを正面にしてどこを頭にするか決めておきます。)

 

【初めてのジン】

ジンってお酒ではなく、盆栽用語で枯れた枝のことをいいます。(寒いダジャレすみません。シャリは幹の枯れた部分のことです。)生きている部分と枯れた部分が共存し、その対比の妙を美しいと感じる、なんとも樹にとっては迷惑な人間の勝手な美意識ですが、確かに美しいのです。ここがアートになっていく過程です。鑑賞用として育てる意志をもっての手入れなので、ご容赦ください。またペットの例で恐縮ですが、美容院に行って美しくカットしていただくようなものです。

真柏(しんぱく)という樹種は、ジンシャリが見どころになります。ジンは樹皮を剥いて作るのですが、残したい樹皮まで剥けないように先に切り込みをぐるりと一周入れてから剥くようにします。

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ペリペリ、ツルリと、ライチの皮を剥くような感覚です。なんとも楽しい!

 

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(▲ジンを作ってから2週間後)

 

【針金掛け】

針金掛けも初めてチャレンジします。枝の太さに合わせて針金を選びます。アルミ線と銅線がありますが、初心者にはアルミ線が柔らかくて扱いやすいようです。銅線は硬いのですが、だからこそ枝の曲げが利きやすいということになります。予め、掛けたい枝の長さの1.5倍くらいの長さに針金を切っておきます。

針金の掛けはじめは自分では分からないので、教えていただき、後は45度の角度でくるくる巻いていきます。この時、枝と針金の間に空間ができないようにするのがポイントだそうです。そして、元々の針金が食い込んだ部分は避けて巻きます。

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本で見るのと実際にやってみるのは大違いです。最初はやはり知っている人に教えていただくのがいいですね。

 【お手当て】

今回の作業も加わり、元々の針金の食い込み部分が少し痛んでしまっていることを、大先輩の方が発見し、その部分に補修材を塗ってお手当てしてくださいました。素人には気づきにくいので、こうしたところから枯れてしまうのかもしれません。盆栽だけでなく、植物育てていらっしゃる方は、皆枯らしたくて枯らすのではなく、何らかのきっかけで枯れてしまう場合があるので、できるだけ防ぎたいと思う心は一緒でしょう。

 【ビフォーアフター

こちらがミニ真柏ちゃんのビフォーアフターです。今後、何年かかけてこの針金が取れる頃には美しい姿になってくれるであろうことを期待しています。

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 ▲Before               ▲After

ちなみに、ビフォーと同じ向きから撮影したものを並べますが、これは今回の作業で裏側になりました。

正面の姿はこちら▼一番上の小さなジンが可愛らしくアクセントになってくれました。頭はジンの右側のちょこんとした立ち上がりの枝部分です。

(幹を大きく曲げる部分は、針金が食い込まないようゴムのチューブで保護してあります)

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静岡のとある盆栽愛好家から苔聖園、そして我が家にやってきたミニ真柏ちゃん、こうして盆栽は引き継がれて次の持ち主に可愛がってもらっていくのですね。

 

【花ものの変化】

盆栽ワークショップで寄せ植えした長寿梅が咲いたので、こちらも成長記録を載せてみます。

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 ▲寄せ植え直後             ▲約1か月後

育てていると、このように変化がある花もの盆栽や実もの盆栽は成長具合が一目で分かるので楽しくなります。

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まだまだ初心者ですが、育てる喜びを少しでもお伝えしたいと思います。